「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」(2018)
- 監督:グザヴィエ・ドラン
- 脚本:グザヴィエ・ドラン、ジェイコブ・ティアニー
- 原案:グザヴィエ・ドラン
- 製作:グザヴィエ・ドラン、リズ・ラフォンティーヌ、ナンシー・グラン、ミヒェル・メルクト、ジョー・ヤーコノ
- 音楽:ガブリエル・ヤレド
- 撮影:アンドレ・タービン
- 編集:グザヴィエ・ドラン、マシュー・デニス
- 出演:キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、ジェイコブ・トレンブレイ、ベン・シュネッツァー、タンディ・ニュートン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツ、マイケル・ガンボン 他
「Mommy/マミー」や「たかが世界の終わり」のグザヴィエ・ドランによる最新作。
若くして亡くなった大スターと、彼と文通していた少年を通して彼らの裏にあった真実を語っていく作品。
スター、ドノヴァンにはキット・ハリントン、そして文通相手である少年をジェイコブ・トレンブレイが演じ、少年の母親役にはナタリー・ポートマンが出演しています。
今作は編集にかなり時間をかけており、カンヌでのプレミアをやめてトロント国際映画祭でのプレミアとなりました。
作品評としては辛辣なものが多く、かなり厳しい状態での公開になりましたが、私としてはドラン新作ということでまあ観に行こうとは思っていました。
公開週ではないですが、それでも昨今の状況を踏まえても結構人が入っていましたね。
特にドランは若い女性に人気?なのかその層が多めに見えました。
2006年。大ヒットTVシリーズにて栄光のスターとなっていたジョン・F・ドノヴァン。
しかし、彼が死んだとのニュースが衝撃を走らせた。
そして2017年、若手新鋭俳優のインタビューが行われることになったが、彼が語るのは、少年の頃ドノヴァンと文通をしていたことであった。
実の母にも隠し5年もの間続いていた文通には、一度も会ったことの無い大スターと少年の不思議な友情がこもっている。
そしてそれ以上に、それらを通し、ドノヴァンの輝きの裏にあった孤独や秘密が明らかになっていくのだった。
ハッキリ言ってつまらない。
退屈にもほどがある、自己陶酔と自己憐憫に満ち溢れた、心の底からどうでもいい葛藤ともがきをそのまま直接映画にした作品でした。
酷いことを言うようですが、グザヴィエ・ドラン監督の「Mommy/マミー」で本当にその孤独や切なさを感じ涙した身としては、あまりに失望してしまったのです。
ドラン監督にとってはお得意のテーマであろう、セクシュアリティや理解のない世界、突き抜ける孤独、母など家族の関係をここでもまた舞台に選びました。
しかし、監督自身の想いが強いということは分かるのですが、共感にいたることができません。
今作はどこまでも監督が自分自身のことを語りたいだけで、そのために非常に都合のいい形で人物が存在し、若干ウザいほどにしみったれた空気でその悩みを代弁してくるだけなんです。
今やドラン監督はカンヌでの上映や世界的な注目含めてジョン・F・ドノヴァン彼自身です。
そしてまた、映画やスターたちによって人生を影響され生きる糧をもらい、自己形成をしたというルパートもまた、ドラン監督自身に思えます。
つまり結局自分語り。
私にはどうにもその語り方がしつこいくらいに幻想的。
ふわついて酔っぱらっているのでしょうか。
映像から語られることが少なく感じましたし、演者もそれぞれ設定上はおいしい(困難を分かりやすく抱えている)ので彼らの表現を存分に発揮できますが、やはり繋がりを持てません。
インタビューを受けている大人になったルパートが「これは不寛容の話。世界が認めない個人や考えの話。」とハッキリ言ってしまう。
説明的すぎます。
そしてマイケル・ガンボンの演じるおじいさんなんて、急に出てきてドノヴァンに非常に重要なことを言うなんて都合が良すぎないでしょうか?
ある大スターと少年の友情、少年を形成した関係というには、ドノヴァンとルパートにそこまで共通点が見えません。
正直言って、ファンがセレブリティに勝手に共感し、不気味にも私たちは繋がっているという妄想や幻想にしか思えないんですよね。
極めて個人的に感じる作品は多くあれど、ここまで周囲を置いてきぼりにする作品は珍しい。
人物造型も脚本も画も、どこか自分への慰めにしかなっていない気がします。
もはや巨匠認定され注目を集める今と、かつての新星、だれもまだ知らなかった頃の自分とに挟まれて苦しんでいるのでしょうか?
だとしても甘えに考えてしまう。
もう、厳しいこといわれそうなカンヌを避けて、ある種のホームであるカナダのTIFFでプレミアしたのも逃げに思えるほどに。
どこまでも繋がることができなかった。
置いてけぼりをくらった映画でしたね。
今回はかなり酷評となってしまいましたが、ドラン監督の次に期待していきます。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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