「ペイン・アンド・グローリー」(2019)

  • 監督:ペドロ・アルモドバル
  • 脚本:ペドロ・アルモドバル
  • 製作:アグスティン・アルモドバル
  • 音楽:アルベルト・イグレシアス
  • 撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
  • 編集:テレサ・フォント
  • 衣装:パオラ・トレス
  • 出演:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、セシリア・ロス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラグリア 他

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「ボルベール<帰郷>」などのイタリアのペドロ・アルモドバル監督が贈る、映画製作や脚本執筆を止めた監督が過去と現在をめぐっていく自伝的な映画。

主演は監督ともよく組むことで知られるアントニオ・バンデラス。彼は今作の演技でカンヌ主演男優賞を受賞しています。

その他、ペネロペ・クルス、レオナルド・スバラグリアなども出演しています。

作品はアカデミー賞でも外国語映画賞、主演男優賞にノミネート、受賞には至りませんでした。

日本公開もカンヌからすれば1年後くらいですが、コロナ感染症もあるなかで無事公開。

公開週末に観に行ってきました。小さい映画館でやっていたのですが、人の入りはそこそこです。若い人はいませんでした(そもそも今は映画好きくらいしかあえて映画館に行っていないのかも)

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世界的な映画監督のサルバドールは、自身の脊椎疾患の慢性的な痛みなどから、しばし映画撮影や脚本の執筆から離れている。

ほとんど引退生活の中で彼は昔のことを振り返ることが多くなった。

そんなあるとき、彼の元に過去の監督作がレストアされ映画祭で再上映されるとニュースが届く。

さらに、その映画祭のQ&Aセッションに、かつての主演俳優と一緒に登壇してほしいと依頼されるのだ。

当映画の制作時から主演俳優とは仲たがいしていたサルバドールだったが、意を決して彼と再会するのだった。

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アルモドバル監督作って、「ボルベール<帰郷>」を観たくらいだったかと思います。あまり詳しくないです。

ただ純粋にこの作品は好きです。とても個人的なんでしょうけれど、愛しい作品です。

全体に渡る色彩のカラフルさ、衣装、小物や家具などのセットもとても気に入りました。小さなことではありますが、彩はどこにでも転がっているような気がします。

自分の人生はなんだか無気力になっても、実はすぐそばに鮮やかさはあるんだなと。

サルバドールの家の家具は多くがアルモドバル監督自身のものをそのまま使ったり、彼が持っていたものを参考にそろえたらしいです。

色彩の構成的にも淡いわけではない美しさと華やかさがあって、すごく画の良さが感じられる作品です。

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そして何と言っても主演のアントニオ・バンデラス。

自分にはダンディなスペインの男「レッスン!」や「デスペラード」での勝手なイメージがあるんですが、今作はとにかく彼が脆くて弱々しいんです。

こんなにふにゃっとしたおじいちゃん感あるバンデラス観たことないですね。

独特な独白で構成される彼の身体の痛みの歴史、それはもう結構な疾患抱えで、飲んでいる錠剤の数も多い。

また椅子に掛けるときや車からの乗り降りなど、脊椎の動かせないサルバドールの、生きることが痛いという感じがひしひしと伝わってきます。

本当にサルバドールという人間が繊細で弱っていることを演じながらも、輝きに再び自触れた際にまた生き生きとするところも見事にみせるバンデラスの演技が最高です。

枕での演出とか、ヘロインシーンとか含めて、どこかユーモアあふれる演出が効いているのもとてもサルバドールはじめ人物造形として素敵でした。

また、ペネロペ・クルスが演じるお母さんもとても素敵な人です。サルバドールの回想での姿というのもあるでしょうけれど、自立していて息子を愛する強き母です。

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この作品は人生という川の流れを追うものです。

そこには二つの流れが用意されていて、今と過去。どちらも絶えず流れていくものです。

少年期の想い出や、映像こそ出ないものの、俳優アルベルトとの確執やズレマとの長い付き合いなど、サルバドールがここまでに抱えてきたもの。

そして今、再び映画祭や過去の作品の古典登録を機に動き出す人生。

流れの中では時に岩にぶつかり大きな痛みを抱え、何かと途中で離れてしまうこともあるものです。

オープニングでサルバドールはプールの中に浮かんでいます。まるで母の用水のようなその中では、外界からの圧力は加わらず、脊柱の痛みも感じない。

しかしその母の庇護下から外へ出て、流れ=人生を歩むとき、様々な痛みに襲われていく。

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正直、人生って痛みばっかりだと思うんです。何かで傷ついて、失って。

そしてサルバドールは痛みの重なりから、歩みを止めてしまった。それでも、自分の過去を観直していくとき、そこには痛みばかりではなかったことに気づくんですね。

逃避に象徴されていると思えるヘロインを流して、サルバドールは歩み始める。

ここで、過去であるフレドリックへ戻るのではないのが好き。過去の良かったころに固執するわけではないんです。

心温まる交流であり、甘酸っぱい初恋?であり。でもそれが時を超えてサルバドールを励ますところは涙が出ます。

スクリーンの中のスクリーン、観客がみる観客、それに最後の仕掛けなどメタフィクションとしての楽しさもあり。

かなりアルモドバル監督個人的な作品でありながら、それでも自分の人生を生きてきた人みんなに愛をくれるとてもいい作品でした。

上半期、あまり映画館で観れていない中で気に入った作品の一つです。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた次の作品レビューで。

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