「犯罪王リコ」(1930)
- 監督:マーヴィン・ルロイ
- 原作:ウィリアム・R・バーネット
- 脚本:フランシス・エドワード・ファラゴー
- 脚色:ロバート・N・リー
- 撮影:トニー・ゴーディオ
- 編集:レイ・カーティス
- セットデザイン:レイ・モイヤー
- 衣装デザイン:アール・ルック
- 出演:エドワード・G・ロビンソン、ダグラス・フェアバンクスJr、グレンダ・ファレル 他
クラシックなギャング映画、暴力的なものや非倫理的題材がまだ刺激的な頃。この映画もそのころの流れを作り出した、古典的な作品になり、無視してはギャング映画を語れないですね。
主役は風貌から印象の強いエドワード・G・ロビンソン。監督には「オズの魔法使い」(39)や史劇「クォ・ヴァディス」(51)を撮るマーヴィン・ルロイ。
「民衆の敵」(31)や「暗黒街の顔役」(32)とならんで私の好きなクラシックギャング映画です。
田舎町で悪さをしていたチンピラのリコと、その親友でダンサー志望であるジョーは、大都会に夢を見てやってくる。そこでギャング組織へと入り成功することを目的に。
2人は組織の下層に子分として入るが、のし上がることを欲するリコとは反対に、ジョーは組織のキャバレーでダンサーとして働く。そこで出会うオルガとの恋、そして暗黒街からの脱却。
そんなジョーの思いと正反対に、リコは持ち前の切れ味と度胸で暗黒街をのし上がっていく。
今としてみれば残虐な描写はほとんどないと感じられるでしょうが、それでもすぐに胸元へ手をのばすエドワード演じるリコの迫力と、キレる獣感は迫力十分でしょう。
汚い言葉や拳を使わずにうまくギャングたちの恐ろしい力を表現しています。
ピシッと決めたスーツ、きらびやかな部屋やパーティ。
虚栄を感じる物質的な豪華さです。なにせ、暗黒街から足を洗おうともがくジョーとオルガの二人の描写は、見た目は地味でも愛がありとても人間らしいのです。
リコの暴れっぷりにある種カタルシスを感じますが、やはり空っぽにも思えます。
この映画でのポイントとしては、リコという男の甘さが残っている点でしょう。
このころの他のギャング映画においては、やや直情的な主役が見られ、それで突っ走ることから破滅しますが、リコの場合、感情に任せて突っ走れなかったことが大きな要因です。
怒り、そして報復という鉄則。冷酷に、ハードになりきれず、ジョーを撃てなかったのがリコです。中身のもろさを最後までにじませるエドワードは本当に素晴らしい味を出してくれています。
泣いているように、画面はにじみ、ジョーから遠のいていく。
派手に撃ちあって散ることもなく、ホームレスになってまで逃げ延びる姿に犯罪王の正体が見て取れました。
そして最後は、光の世界へ進んだジョーとオルガの二人ときっぱりと断ち切られるように、機関銃の弾で横線を引かれてリコは死ぬ。
光を浴びる二人の看板の裏、影のなか犯罪王はみじめな最期を迎えました。
最後まで猛進するのと違い、少し哀れな表情も見せる、エドワードの強いリードが唸るギャング映画です。
それではこの辺りで終わりに。また~
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