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「NOCEBO/ノセボ」”Nocebo”(2022)

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映画レビュー
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「NOCEBO/ノセボ」(2022)

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作品概要

  • 監督:ローキャン・フィネガン
  • 製作:ブルネッラ・コッキーリャ、エミリー・レオ
  • 製作総指揮:ロルカン・フィネガン、アラム・ターツァキアン、マキシム・コットレイ、ネイト・ボロティン、ニック・スパイサー、セリーヌ・ハダド、チャールズ・ドーフマン、デビッド・ギルベリー、バスティアン・シロド
  • 脚本:ギャレット・シャンリー
  • 撮影:ラデック・ラドチュック、ジャクブ・キヨフスキ
  • 美術:ルーシー・バン・ロンクハウゼン
  • 衣装:レオニー・プレンダーガスト
  • 編集:トニー・クランストゥーン
  • 音楽:ホセ・ブエンカミーノ
  • 出演:エヴァ・グリーン、マーク・ストロング、チャイ・フォナシエル、ビリー・ガズドン 他

「ビバリウム」のローキャン・フィネガン監督が、病に苦しむ妻のいるある家族と、そこに訪れた乳母の不思議な治療から始まる怪奇現象を描くスリラー映画。

主演は「約束の宇宙」などのエヴァ・グリーン、また夫役には「シャザム!」「TAR ター」などのマーク・ストロング。

カギとなる謎の乳母ダイアナをフィリピン出身のシンガーソングライター、チャイ・フォナシエルが演じています。

ローキャン・フィネガン監督の新作ということで、何松駆け込み公開でしたが早速公開週末に観てきた作品です。

感想は年をまたぎましたが、さくっと書いていきます。

ちなみに作品タイトルのノセボは聞きなれない言葉でしたが、あのプラシーボ効果の逆みたいですね。

医学的に効果のある薬であっても、患者本人が効果がないとか副作用があると強く信じ込むことで、本当に効果が低下したり副作用が出たりするような現象をさす言葉。

「NOCEBO/ノセボ」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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ファッションデザイナーのクリスティーンは、夫と娘と共にダブリンで平穏な暮らしを送っていた。

しかしクリスティーンは仕事中に奇妙な犬の幻影に襲われ、その後体調不良に苦しみ仕事を休んでいる。

そんな彼女の前に、ダイアナという乳母が現れる。

ダイアナを呼んだ記憶すら曖昧であるクリスティーンは最初は疑念を抱くものの、ダイアナの民間療法が症状を奇跡のように和らげてくれる。

しかしその治療に頼るうちに、一家を襲う恐ろしい出来事が始まる。

感想/レビュー

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ローキャン・フィネガン監督の作品は理不尽育児映画「ビバリウム」もすごく独特な空気を持っていました。

心底恐ろしいというわけではないものの、きっと観た人にはぬぐえない気味の悪さを残すものです。

実際今作も私はすごく怖いという感じはしませんでした。

じわじわタイプなのでジャンプスケアもほぼないですし、惨たらしいわけでもないです。

ものすごく驚くべき仕掛けがあるというわけでもなくて、実は真相は途中から見えてはきますが、それをだらだらせずに締めくくったのでコンパクトさは良いです。

サイコスリラーと社会批判

今作が扱っているのは、一つにサイコスリラーだと思います。

そこには罪悪感に対する処理ができずに、精神的に弱ってしまった女性がいて、不可思議な外部からの訪問者により状態が良くなっていく。

ただその者の目的には何か謎があり、手放しでは喜べない。

ミステリーにもなっているそのサイコスリラーの裏に、もう一つテーマがあります。

それが搾取というか、植民地支配というか

豊かな国または者が、貧しい国や人を搾取する構造。

背景にはこの社会的というか政治的なメッセージや批判も込められていました。

全体に観て私はこの2つの要素に加え、母親という要素だったりフィリピンの文化も交ざっていて、素晴らしいバランスで融合されているとは言えなくても十分楽しめました。

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外から急に現れた人間に、家庭が侵略されていき分裂が生じる。それは「ビバリウム」でもそうでしたね。

ダイアナの展開のされ方は彼女の目的を少しづつ明かしていくために、不快さと彼女への哀れみも混在します。

プライベートゾーンへの侵入

寝室に朝食を運んでくるシーンが印象的でした。

いわゆる最もプライベートで侵入を許したくない領域ですから、ここに突っ込んでくるというのは非常に不快です。

あのシーンでダイアナが寝室の見回すのも細かいですがすごく嫌。

しかも運んできたオレンジジュースをクリスティーンにだけ手渡しで飲ませていて、フェリックスには渡さない。

小鳥という要素が共通していて、一方が死に、なり替わるように一方が中へと入っていくなど、暴力的ではないいやらしさがあります。

レオーネの「夕陽のガンマン」などを思い起こさせる、前後に対象を配しながら両方にピントの合っているショットが、クリスティーンとダイアナの二人にあります。

前半と後半で互いの位置が入れ替わっていて、ここで完全に上下関係や支配構造の逆転が示されていました。

エンドクレジットには「ケンテックス労働者全員に対する正義」というメッセージが出てきます。

これは2015年5月13日、フィリピンのマニラにあるケンテックス(スリッパ)製造工場で火災が発生し、74人が亡くなったという事件のことです。

根底にはこの件を発端にして、それを少し超常的な要素を持つスリラーへと落とし込んだのでしょう。

完全に機能していないところもありますし、並走するプロットがやや一貫性に乏しい気もしますが、サクッと楽しめるしっかり気味の悪い作品でした。

感想はここまで。ではまた。

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