「21ブリッジ」(2019)
- 監督:ブライアン・カーク
- 脚本:アダム・マーヴィス、マシュー・マイケル・カーナハン
- 原案:アダム・マーヴィス
- 製作:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ、チャドウィック・ボーズマン、ローガン・コールズ、ジジ・プリッツカー、ロバート・シモンズ
- 製作総指揮 マーク・カミネ、マイク・ラロッカ、エイドリアン・アルペロヴィッチ、レイチェル・シェーン
- 音楽:ヘンリー・ジャックマン、アレックス・ベルチャー
- 撮影:ポール・キャメロン
- 編集:ティム・マレル
- 出演:チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、J・K・シモンズ、テイラー・キッチュ、ステファン・ジェームズ 他
これまで「ゲーム・オブ・スローンズ」や「刑事ジョン・ルーサー」などTVシリーズを手掛けてきたブライアン・カーク監督の初の長編映画作品。
警官が射殺された強盗事件から、マンハッタン島を封鎖しての大捜査線が敷かれ、その裏に潜む陰謀を追っていくアクションクライム。
主演は「ブラックパンサー」などのチャドウィック・ボーズマン。今作は彼の主演作品としての最後の作品になります。
また「アメリカン・スナイパー」などのシエナ・ミラーが麻薬取締局の捜査官を、NYPD分署長を「セッション」などのJ・K・シモンズが演じています。
もともとアナ雪2とかのころの作品なのですが、日本での公開がかなり遅くなってしまいましたね。
2020年のチャドウィック・ボーズマンの訃報もあり個人的にははじめは観る気はなかったのですが、彼の主演姿をスクリーンで観れるなら行くしかないと思っての鑑賞になります。
公開週末でしたが入りはそこそこな感じでした。ただ比較的年齢層は若かった気がします。
ニューヨークのマンハッタン。深夜のあるレストランに2人組の強盗が入り込む。
抗争中のギャングの依頼で麻薬を強奪しに来た男たちだったが、依頼の話とは麻薬量が異なり、さらになぜか警官のグループが店にやってきた。
様子のおかしい店の状況から警官たちが突入、激しい銃撃戦となり、応援に駆け付けた警官も巻き込んで7名が死亡し、犯人は逃走した。
この事件を担当することになったのはアンドレ刑事。彼は前線で犯人と戦い発砲する件数が多いことで有名だ。
アンドレは直ちにマンハッタンの封鎖を命じ、市長の協力で5時までの封鎖を取り付ける。
しかし、犯人たちを追うほどに、事態の中で不明な点が多く見つかり始め、アンドレは犯人たちから真実を聞き出そうと生け捕りにするため奔走する。
陰謀の渦巻く中で一人の刑事が真相を追ってタイムリミットのある中マンハッタンを奔走する。
プロットのベースとしては非常に使い古されていて型どおりのお話になっている今作は、その既視感から目をそらすように良い演者をそろえていますが、全体としては成功しているとは言えませんでした。
各要素は非常にポテンシャルが高く、造形は良いはずですが、作品を通してのキャラクターの発展や深さは感じられません。
むしろ、そうしたドラマを臭わせながらも、メインになるアクションとチェイスをエンタメとして楽しませてくれる作品だと思います。
決して退屈してしまうシーンがあるわけでもなく、無駄にだらだらとすることなく展開はテンポが良いと感じます。
また1時間と40分ほどというタイトな時間でコンパクトにまとめられているのは、週末にアクション映画を楽しもうという層にはうってつけです。
なのでその点ではおすすめの1本。
ただ、自分としてはチャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、J・K・シモンズなど深さを与えてもそれらを表現しうる役者がいるということで、どうしてもその活かせなさを感じてしまう作品でした。
ダーティ・ハリーのような信念をもって犯罪者と対峙することを、そして必要であれば射殺することを決意する主人公アンドレ。
彼を演じるチャドウィック・ボーズマンのその毅然たる態度と覚悟のうかがえる姿勢はカッコいい。シビれます。
ただし彼の背負う犯罪者への容赦のなさや引き金を引く覚悟を持つ兵士という役回りは、ドラマチックな展開は見せません。
その他のキャラクターにおいても、その設定レベルの描写しかなく、深みも展開もなかったのは残念です。
この事件を一つのプロットとすると、それ以前のセットアップから解決までにおける変化がないんですよね。
そうなると成長もないわけです。その余地がありそうなだけに、そしてそれに応えられる俳優がそろっているだけにここは惜しいです。
テイラー・キッチュの戦闘員としてのいで立ちカッコいいしね。(どこかジョン・ウィック的)
いろいろ物足りたいとは言いましたけれど、エンタメとしては十分かと思います。
繰り返されていく神の視点たる俯瞰ショットで映し出される網の目のNYC。場所の狭さや限定をしっかりと意識され、確実に包囲網を小さくしていくなどの整理がされていますし、だから現状を把握しやすい。
東西南北から的を絞ったり、散らからないような配慮は素敵です。
また終盤近くにあるストリートから地下鉄にかけてのチェイスシーンはまさに見どころといっていい出来栄えでした。
「フレンチコネクション」というと言い過ぎかもしれないですが、あそこは逃走するマイケルを他の警官よりも先に捕まえるという目的も加わりつつのチェイスのため、緊張感が増していました。
マイケル抹殺を狙う他の警官たちを止めながらもマイケルに確実に近づいていく。地下鉄の扉での下りとかは「カリートの道」なんかも連想しました。
アクションスリラーな点はしっかり押さえられていますね。
チャドウィック・ボーズマンの魅力はもう彼の風格というものが証明している作品で、凡庸な話に平坦な人物であったことこそ残念ですが、エンタメとして楽しめますので興味があれば見てみることをお勧めします。
今回の感想はこのくらいになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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