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「ブラックパンサー」”Black Panther”(2018)

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映画レビュー
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「ブラックパンサー」(2018)

作品概要

  • 監督:ライアン・クーグラー
  • 脚本:ライアン・クーグラー、ジョー・ロバート・コール
  • 原作:スタン・リー、ジャック・カービー
  • 製作:ケヴィン・ファイギ
  • 音楽:ルドウィグ・ヨーランソン
  • 撮影:レイチェル・モリソン
  • 編集:クラウディア・カスティージョ、マイケル・P・シャウバー
  • 出演:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、ダニエル・カルーヤ、フォレスト・ウィテカー、レティーシャ・ライト、アンジェラ・バセット、ウィンストン・デューク、マーティン・フリーマン、アンディ・サーキス 他

マーベルコミックのヒーローを実写映画化するMCU第18作品目にあたる今作。

監督は「フルートベール駅で」(2013)「クリード チャンプを継ぐ男」(2015)のライアン・クーグラーが担当し、主演はキャラクターとしては初のお披露目であった「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)から続いてチャドウィック・ボーズマンが務めます。

また、今作にはメインの悪役として監督とはおなじみのコンビであるマイケル・B・ジョーダンが出演。その他、映画界をけん引する黒人俳優たちがこれでもかと豪華にそろっております。

音楽や撮影でもクーグラー監督が組んできた人が入っていて、私としては監督やキャスト、スタッフが決まったあたりから、絶対に歴史を変える作品になると思い楽しみにしていた作品です。

公開日に六本木で2D字幕、そのあとIMAX3D、そしてもう一度2Dを観ました。どの回も混んでいましたよ。

~あらすじ~

圧倒的な文明を誇りながら、その正体を各し続けているアフリカのワカンダ王国。

ソコヴィア協定をめぐる国連会議で、国王であるティ・チャカ王が亡くなった。

王位を継承するのは、長男であるティ・チャラ王子である。ワカンダの守護者”ブラックパンサー”としての役目も負う彼は、故郷へと戻り王位継承の儀式を行うのだった。

一方、唯一ワカンダの真の姿を知るユリシーズ・クロウは、謎の男と共にワカンダの技術の源である鉱石ヴィブラニウムを盗みだし、売りにかけようとしていた。

先代からワカンダの敵であるクロウを捕らえるため、ティ・チャラは親衛隊のオコエ、潜入スパイであるナキアを連れ任務につくのだった。

感想/レビュー

「クリード チャンプを継ぐ男」(2015)からの抜擢で、まさにその本質を、才能を、自分のレガシーを創れるか試されたライアン・クーグラー監督ですが、全く見事に、正直期待以上にその手腕を見せつけてくれました。まだ長編3作目とか・・・信じられませんね。

今作で素晴らしいところは、まあたくさんあるのですが、

ワカンダという理想郷の素晴らしい完成度

まずは、ワカンダという架空の超文明国家の実在感です。未知の国、技術、世界に入り込む楽しさが良かったです。

各衣装の色合いによる区別と、超テクノロジーのガジェットの楽しさ。

私たちの現実よりもずっと進歩していながらも、古いものを切り捨てずに、まさに先祖を称えて伝統を守り続けてきた、新旧の融合した世界。

ワカンダを観ているだけで、ワクワクしてすごく楽しいのです。

その没入間を強めているのが、「クリード」でも素晴らしいスコアを残した、ルドウィグ・ヨーランソンです。

楽曲はアフリカの音楽を織り混ぜつつも、ヒーローらしいファンファーレに、ヒップホップのビートを底に横たえています。

美しくありながらクール。そして、劇中でのアクションの音が実は音楽の一部だったりするシンクロ感もとても良かったと思います。

また、レイチェル・モリソンによる撮影面に関しても、戦士の滝の上へと抜ける空間の捉え方や、ちょい「スカイフォール」(2012)のマカオっぽい、釜山のカジノでの擬似ワンカットなど素晴らしかったです。

あの夜のチェイスの艶と色気のある感じとか素敵だなぁ。

あと、キルモンガーの王座へのシーン。あのスコアと180度まさに国家転覆、ワカンダの完全なる方針転換な回転ショット、たまりません。

自然によるステージや民族衣装などの、人間のルーツを残しながらも、随所にヴィブラニウムを散りばめSF的ですらあるワカンダでは、飢餓も貧困も、奴隷制も圧政者も戦争もなく、まさに秘境であり人間の楽園のようなのです。

そんなワカンダの綺麗で美しい世界を堪能させつつも、今作は中盤から、序盤に撒いた種をうまく機能させ、桃源郷の裏側、影の部分を強めていきます。

アメリカに生きるアフリカ系アメリカ人の苦痛

そこでワカンダの闇を体現し、ティ・チャラに対してある意味で対にあたる者として登場するのが、今作最大の魅力であるヴィラン、エリック・キルモンガーです。

彼は、ワカンダがずっと目を背けてきた、世界の痛みと怒りを体現するキャラだと思います。

救えたはずの命を体に刻んだ亡霊であり、行われなかった正義に対する激しい怒りを抱えた男。

その影は序盤に上手く配置されていたのです。

ウンジョブ王子とズリが、貧困層の暮らすアパートで準備する中見えるTVの画面。

1992年という事はLA暴動の様子だと思いますから、黒人への圧政を入れています。

またナキアが潜入していた任務では、女性の奴隷や少年兵と言う問題が透けています。

しかも、ここで重要に感じたのは、ティ・チャラたちはあくまでナキアを迎えに行くことが目的であり、奴隷解放など人助けが目的ではなかったこと。

すでに、ワカンダが力を持ちながらも、秘密を守るために善きこと、すべきことを放棄しているのが描かれていたんですね。

虐げられる同胞に何もしない者への怒りを体現するキルモンガー

一見夢のような国で、人も教養があり豊かだと思っていたワカンダに、疑念が生まれます。

そして個人的には、このキルモンガーに対して同情し、ワカンダに怒りすら覚えました。

王座でのシーン。虐げられている者がいること、手段をもちつつ何もしないことを話すキルモンガーに、ティ・チャラは答えます。

「私はワカンダの王であって、世界の王ではない。」

これってつまり、自分が良ければそれでいいってことですよね。そして現実の私たちの世界でもよく聞くからこそ痛いのです。

あのシーンで、ティ・チャラの話を聞きながら「おお、そうかよ。」みたいな感じで唸ってるキルモンガーですが、私もあそこでかなりイライラしました。本当にふざけんなよと。

そうして怒りを覚えたところで、ふと、私たち先進国、もしくは力のあるものに対して、第三国や助けを必要とする人は、こんな風に感じていたのかと気付かされました。

映画ではワカンダが先進国、そしてアメリカやら日本が第三国です。しかし、現実では、私たちこそワカンダなのですね。

だからキルモンガーのような怒りを私たちにむけて抱えているものたちもいるのだと思います。

そうした現実世界の残酷な部分を持ちながら、同時にキルモンガーはティ・チャラにとって個人的な相手にもなっていますね。

ワカンダをよく知っていることもありますが、彼は父、ひいては先祖代々の負の遺産であるのです。

今までは避けて通っていた相手がついに目の前に現れたとき、王としての選択を迫られることになったのです。

キルモンガーは王としての覚悟を持っています。丸投げしてきた問題を、武力を持って解決しワカンダの真価を知らしめる。

確固たる意思を持つキルモンガーに対して、どんな王になれば良いのか迷うティ・チャラでは勝てません。

輝かしいヴィラン、マイケル・B・ジョーダン

マイケル・B・ジョーダンの演技、ハマりっぷり含めて、エリック・キルモンガーはMCU史上最高の悪役といって良いでしょう。

ちょっと好青年な感じが良い感じに彼に深みを与えていましてね。

環境によってそうなるしかなかった彼は、ふと涙すら流します。

冒頭のワカンダの起源は、父子の会話ですが、誰が誰に語っていたのかに気づく瞬間、私も涙しました。迎えに来てくれない切なさ。

今作で一番エモーショナルなのも、キルモンガーであり、マイケル・B・ジョーダンにある繊細さ、優等生さがとても重要だったのだと感じました。

メインヴィランとヒーローが鏡写しのようなのも巧いですね。

お互い父の亡きがらを抱きしめ涙するシーンがありますし、ティ・チャラも環境が違えば、キルモンガーのようになりえたのです。

逆に、キルモンガーだってワカンダに迎えられていれば、いとこのティ・チャラと共に、国を守るヒーローになっていたかもしれません。

今作はワカンダという国だけでなく、そういった人間たちのドラマ部分も非常に丁寧だったと思います。

両親を殺され、上に期待したのに裏切られ続けてきたウカビ。個をなげうってでも忠誠を誓った国のため戦うオコエに、愛のために戦うナキア。そして超自国主義だったロスが他者のために命をかける。

どの人物も素晴らしくドラマチックで、最終決戦においてどれだけ画面が派手になっても、誰しもに寄り添える。

手を差し伸べる。すべての同胞へ

ティ・チャラはついに決心します。

父が不在であると不安であった自分。父の行為に疑念を持った自分。

父の跡、つまり偉大なブラックパンサーでありながら世界に背を向けたという負の遺産まで継がなくていい。自分自身の遺産を築き上げていくんだ。

自分の伝説を創る。

今作で繰り返される、”Who are you?”「お前は何者だ?」という問い。

最後に、まるで幼いころのエリックのような少年に問われたティ・チャラには清々しい表情が残っていましたね。

あのタイミングで流れ出す”All the Star”は素晴らしい。「星々に近づいた。」って内容ですけど、つまり夢でしかなかったと思っていた理想に、一歩近づいたってことですね。

世界の闇に飲まれてしまったキルモンガーの意志も継ぎながら、ティ・チャラは世界を善くする方向へ進んだわけです。

私は今作で、ワカンダとティ・チャラを通して、私たちの世界とそれぞれ個人のあるべき姿を観ました。

ライアン・クーグラー監督、どこまでスゴいんだ。超傑作だと思います。

MCUというだけでなく、単作として、いやひとつの映画として本当に素晴らしかったです。

アフリカンアメリカンのトップクラスの演者が揃い、女性撮影監督がいて、黒人監督が大躍進して。歴史的な作品でもありますし、是非映画館で観てほしいです。

今回ちょっと長くなってしまいましたが正直まだまだ語りたい。 しかしこのくらいでレビューはおしまいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは。

“Wakanda Forever!!!”

「ワカンダよ永遠に‼」

コメント

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