「ロボコップ」(1987)
- 監督:ポール・バーホーベン
- 脚本:エドワード・ニューマイヤー、マイケル・マイヤー
- 製作:アーン・L・シュミット
- 製作総指揮:ジョン・デイビソン
- 音楽:ベイジル・ポールドゥリス
- 撮影:ヨスト・ヴァカーノ、ソル・ネグリン
- 編集:フランク・J・ユリオステ
- プロダクションデザイン:ウィリアム・サンデル
- 美術:ジョン・マーシャル、ゲイル・サイモン
- 衣装:エリカ・エデル・フィリップス
- 出演:ピーター・ウェラー、ナンシー・アレン、ロニー・コックス、カーウッド・スミス 他
子供のころ、2大ロボットキャラとして私がカッコいいと思っていたロボがいます。一人は「ターミネーター」(1984)のT-800。そしてもう一人はこちらのロボコップ。
子供のころはとにかく、銃が効かないというだけで無条件にカッコいいと思っていたので、両者は最高にクールだったのです。対外弾の当たらないアクションヒーローでも、たまに当たれば傷ついてましたからね。
監督にはオランダ人監督のポール・バーホーベン。
それまではどちらかといえばアートハウス系で、アカデミーの外国語映画賞にノミネートしたりしていたインテリ。彼がアメリカに渡ってからの2作目。大衆向けのヒット作を手掛けていく最初の作品になりますね。
多くの人が昔見た覚えがあるものの、改めて観るとその内容のブラックさとエグさに引いてしまう作品でもあります。
近未来のアメリカ、デトロイト。荒廃しすさんだ街には犯罪が溢れていた。
大企業のオムニ社は多角的な事業展開を行い、警察までも自社の中に組みこんでいた。同社はこの腐った都市を再興するための計画を進行しており、警官に代わり街を守るロボットの開発に乗り出す。
ひとつは全自動の警備ロボット、そしてもうひとつは人間の組織を使ったロボット警官である。
そんな頃、街に転属してきた警官マーフィー。初日から有名な大悪党クラレンス一味との追走劇になり、隠れ家まで踏み込むものの、一味に捕まり惨殺されてしまうのだった。
ロボコップ、なんてばかばかしいネーミングだと思いますよね。バーホーベン監督はじめ多くの監督がそう感じていたのでご安心を。
しかし、監督の奥さんの慧眼は素晴らしく、この作品に込められた深い味わいに賭けたのです。
カッコよさは後々言及するとして、今作は完全に大人向けのシュールなブラック映画。
現実のデトロイトの荒廃っぷりにはまあ寛容に優しい目を向けてあげるとして、殺伐として悪趣味な部分はもはや芸術的です。
バーホーベン監督の持つ世界への不信が露わになっており、そしてそれは皮肉な現実世界に通じています。
誇張されまくりのゴア表現はすさまじく、マーフィーの惨殺場面やクラレンス一味の末路など血のりのテンコ盛り。
そんな暴力描写の背景として、この世界における人間のいわゆる倫理観や正しさの欠如と崩壊も描かれます。CMでは幼稚な遊びの中で、家族で原水爆を落とし合うゲームの宣伝が流れますね。
その人間性がおかしな商業主義というのは、そもそも今作のロボコップ誕生の要因でもあるわけですし。
街を良くしようという背景こそあれど、結局のところは民営化された警察という舞台におけるR&D競争。企業の儲けや派閥争いに、命を懸けた警官が道具として使われてしまう。
かくして動く死体としてコンピュータにつながれ、”資産/Asset”として働かされるロボコップことマーフィー。
悲しい運命に会社側の胸糞悪さも相まってやりきれないのですが、一度活動しだせばカッコいいのです。
ロボットらしいぎこちない動きに加え、淡々とした動作。何より台詞が良いですね。
極悪な犯罪者どもに対して容赦のない言葉を浴びせかけます。なにせ虐げられまくりでしたわけで、ここにきて一方的に犯罪者をやっつけることができるのはカタルシスに溢れますよ。
ベイジル・ポールドゥリスのカッコいい音楽も最高にテンションを上げてくれます。
ロボコップにおいて、あくまで子供のころに一番好きだった要素は、前述通りの防弾性。工場でのシュートアウトでは、銃弾を弾くエフェクとがロボコップに、そして犯罪者どもには過剰血糊エフェクトの応酬でした。
なんででしょうね。ギャングとの対決含め子供には見せられないようなゴア表現が多いのですが、子供のころは全然気持ち悪いとか怖いとか思わずに見てました。
つるべ打ちによりある種の快感を持たせ、陰惨に陥る暇を与えていないからでしょうか?
街が腐るのも無理はない、上層部の倫理欠如。
まあバーホーベン監督が観ていた、もしくは恐れていた未来の人間性というものなのかもしれません。商業主義が進み、サイバー化が進み、人間が入る余地なんてないんです。
人らしさなんてあっても、邪魔でしょ?迷いは出るし、限界はあるし、第一市場の原理に反してますから。
それでも人間讃歌のように思えたのは、最後にマーフィーが人間に、少なくとも心は戻れたからなのかもしれないです。
もはや体は機械化され、脳は常にサイバーへと接続された状態。それは現代人まんまにも思える状態ですが、マーフィーはそこから思い出や仲間の呼びかけを通して心を再発見したのです。
最後の最後、名前を聞かれた時、製造番号でもロボコップでもなく「マーフィー」と答える彼の姿に、壊滅した人間性も必ず回帰できるという希望が観て取れました。
バーホーベン節の炸裂する本作。独特な世界観、やりすぎブラック表現、血しぶきゴア満載の痛快アクション。
皮肉的でありつつも温かみを持って観終われるような映画。なによりこのカッコいいロボコップの活躍は最高です。
しかし監督はIT系の大企業が大嫌いなのか?wまあ行き過ぎたらだめってことでしょうけど。
そんな感じでレビューは終わります。ロボコップのフィギュアーツとか、レゴミニフィグとか欲しい・・・
それでは、また~
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