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「遊星よりの物体X」”The Thing from another world”(1951)

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映画レビュー
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「遊星よりの物体X」(1951)

  • 監督:クリスチャン・ナイビイ、ハワード・ホークス
  • 脚本:チャールズ・レデラー
  • 原作:ジョン・W・キャンベル 「影が行く」
  • 制作:ハワード・ホークス
  • 音楽:ディミトリ・ティオムキン
  • 撮影:ラッセル・ハーラン
  • 編集:ローランド・グロス
  • 美術:アルバート・S・ダゴスチノ、ジョン・J・ヒュージ
  • メイクアップ:リー・グリーンウェイ
  • 特殊撮影効果:リンウッド・ダン
  • 特殊効果:ドナルド・スチュワード
  • 出演:ケネス・トビー、マーガレット・シェリダン、ロバート・コーンスウェイト、ジェームズ・アーネス 他

リメイクであるカーペンター監督の「遊星からの物体X」(1982)がかなり有名ですが、本作はそのもととなる作品で、原作の初映像化でもあります。

今は2011年の「遊星からの物体Xファーストコンタクト」を含め3つの映画があるんですが、それぞれ原作から取った部分が違います。

経緯や仲間たち、物体の最期など。この作品では基礎設定はそのままに、物体の描写や倒し方がかなり変えられています。

アラスカにある科学研究所の近くに、謎の飛行物体が墜落し電波障害を引き起こしていた。原因究明のため基地へと向かったヘンドリー大尉は、氷に埋もれた円盤を発見する。

円盤を確保しようと氷を爆破するのだったが、円盤まで粉々になってしまう。

するとその跡に、人のような形をした物体が埋まっているのを発見する。氷に包まれたそれを研究所に持ち帰ることになった。

しかし、その見張りをしていた兵士が、謎の影に襲われる。

軍、科学研究所などの人間サイドの設定は原作よりながら、物体がモロに人間型です。姿が無いのが原作での設定ですが、ここでは大男(フランケンシュタインの怪物)の姿です。

このモンスターに関しては、カーペンター監督版の無形、正体不明さが好きではあります。あちらはモンスターデザインが秀逸ですからね。

まあこちらの怪人っぽさも好きではありますが。今作では科学者VS軍の構造が濃厚で、原作でもその構造のまま。化学発展と人類危機どちらとしてこの「物体」に接するのかガ争われています。

構造的には年代が関係していると思われるので、一概に原作よりが良いとかリメイク版が良いとかは言えないのですが、今作の設定も十分楽しめるようになっていると思います。ノイズにはならないかな。

物体がそこまで出てこないのであれば、どうだろう?

しかし、演出や見せ方で十分こわいつくりになっていると思いました。密室空間であることはしっかり生かしてあり、内部の構造、部屋割などが序盤のやり取りの中で見えてくるのです。

そこから物体が徘徊すると、行動範囲がどんどんと狭くなっていきます。人間側はなんとか襲撃をやり過ごしますが、確実に被害者が出ていく上に逃げ回れる空間が狭くなっていくんです。

そのかわりに、物体は様々な場所に出始め、直接見せなくとも十分にその存在が感じられます。

どこかにいる、確実に追い詰められている。本作にはその獲物になったような、捕食される側のような感覚が強く感じられて楽しめます。

もう一つ楽しいのは、人間側(特に軍)の人間たちのチーム感。ハワード・ホークス監督はガンアクションでの連携とか人間キャラの協力が良い感じ。

軍のみんなの結束とか畳みかける物体との戦いなどなんだか気持ちいい。

「物体」は氷では死なず、炎に巻かれても生き延びました。とどめは電気。原始的でなく人類の進化で得た力です。

しかしここで人類は新たな力に遭遇しました。映画では物体に、現実では原子力です。

冷戦を迎えてから、人は直接の接触は少なくとも、確実に相手とその力を意識し恐れています。どれだけの脅威かは未知でありながら、確実に迫る新たな力。

この映画での人間と物体の関係はそれをメタファーとしているように感じました。

ですからより高度な技術である電気で相手を倒す、より強力なテクノロジーで持って敵を排除するのです。

最後の通信では、「空に気をつけろ。」といいますね。まさにこの後に広がる核ミサイルとそれを備えた人工衛星。宇宙開発にまで発展していく冷戦を示唆しているような発言です。

「キングコング」が異人種の台頭を示しているならば、「物体」は見えざる新破壊技術、他国の軍事力を象徴しているのかもしれません。

原作から少し変えた上に、時代性も盛り込まれているように感じた本作。存在意識という避けられない怖さが堪能できるものです。もちろん、リメイク版のほうもおススメ。セットでどうぞ。

こんなところで感想おしまいです。それでは、また~

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