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「ドント・ブリーズ」”Don’t Breathe”(2016)

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映画レビュー
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「ドント・ブリーズ」(2016)

  • 監督:フェデ・アルバレス
  • 脚本:フェデ・アルバレス、ロド・サヤギス
  • 製作:サム・ライミ、ジョセフ・ドレイク、ネイサン・カハネ、ロバート・タパート、J・R・ヤング
  • 製作総指揮:ネイサン・カヘイン
  • 音楽:ロケ・バニョス
  • 撮影:ペドロ・ルクエ
  • 編集:エリック・L・ビーソン、ルイーズ・フォード、ガードナー・グールド
  • 出演:ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、ダニエル・ソヴァット、スティーヴン・ラング 他

「悪魔のいけにえ」(2013)を監督したフェデ・アルバレス監督が、同作で主演を務めたジェーン・レヴィと再び組んだホラー映画。

SXSWで上映され、高評価を得てから全米公開していたようですが、どうやら初めは日本公開予定はなかったようですね。公開されてなにより。

ちょうど今年のアメリカの夏は良い感じのホラーが多かった印象です。私はあまりホラーを観てないですが、今回はおもしろそうなので観てきました。

若い観客が多く、まあ公開規模のせいもありますが、かなり混んでいましたね。

廃墟だらけとなり、荒れている街デトロイト。

ロッキー、アレックス、マニーの3人は、小さな空き巣を繰り返しては生活費を稼いでいた。

ある時マニーは、一人暮らしの盲目の老人宅を襲う話を持ってくる。彼の家には少なくとも30万ドルの現金があるという。

大きな話に戸惑うものの、ロッキーとアレックスは今の生活から抜け出したい一心で強盗を決断。

しかし、彼らはこの盲目の老人の恐ろしさを知ることになる。

設定が好きで観たのですが、それ以上に設定を最大限に生かす仕組み、構成が楽しめましたね。

今作は映像的に楽しませようという気概がとても強く感じられました。アイディア一発ではなく、それをしっかり料理し、適切な描写で伝えていく。

メインステージである老人宅までさくっと行くのもナイスですが、最初の侵入時に後に使うものや場所を全て紹介し終えてしまうのも見事なものです。家探し中の長いカットでは、家の中を練り歩きその間取りを見せるとともに、各小道具や天窓などをグッと印象付けておきます。

そういえば「10クローバーフィールドレーン」も、一軒家でスリラーですが、両者ともに小道具やセットが生き生きしていましたね。

老人が彼だけのマーキングを駆使して歩き回るのも良い演出です。主人公たちがアウェイなら、彼にとっては言葉のままホーム。梁やチェーンなどを触り、現在地を正確に知りつつ迫る老人は見事な部分。

そして感情動線もうまく惹かれていたように感じます。今作は後出しじゃんけん的な卑怯さ、陳腐さを感じさせず、観客は主人公たちと同じペースでこのスリラーにハマっていきます。

厳重に施錠された地下へのドア。開けられて動揺する老人ですが、金庫は別の場所に。今作最大のお宝であるはずの現金よりも、老人が隠そうとするものがある・・・

で、スリラーやホラーときたら、怖くないとダメですね。

その点でどうだったかと言えば、一番怖いというのは音楽だったかもしれません。ロケ・バニョスによる音楽が、鼓動や吐息のような、また不気味な音で響き渡りドキドキします。

もちろんジイさんも怖いのですが、ドキッとするとか音でびっくりさせるような手法は皆無です。その点は私個人としてはすごく好きですが、キャーキャー言いたい感じなら違いますね。

キモとしては盲目である点を良く活かしているところ。こっちをみているのに、見えてない・・・いや見えてる!というよう曖昧さからくる緊張も見事ですね。寝ているところにガスをまくシーン、扉を開けて鉢合わせするシーン。急にそこにいてこっちを向いている。あの怖さは楽しい。

闇の演出。普通ならあり得ないであろう世界を見せられる楽しさあり、そして自ら敵に近づいて行ってしまうその危うさを観客のみが観ているという巧い構成が好きでした。

不意打ち系のびっくりと怖さの混同に甘えず、しっかりと設定の特性を生かしたいろいろな見せ方で勝負している印象です。ビックリ系が苦手だったりしても今作はしっかりドキドキできます。

老人のある秘密がありまして、そこは気味の悪さはありますけど、個人的にはかなり驚くものではない感じでした。

逆さの写真による暗示や、殺さずに拘束している点などでしっかり説明されているのと、犯罪心理的に理解できるので狂気ではあるもののインパクトは薄かったかも。まあ個人的にですけど。

もともとホラーを最近見ていないのですけど、私としてはかなりの傑作。

荒廃したデトロイト。何もかも行き詰ってしまった若者たちが向かう一軒家。あの真昼間なのに中が闇に包まれていてなんにも見えない感じ。

盲目老人にしっかりとついている闇ですよ。

彼の観る世界。彼が処理する際のあの黒い液体。彼が最後に倒れ、光が遮断された世界。

闇の中の住人ながら、彼は観ているんですよね。ロッキーが扉をしめ真っ暗になっても、彼の見えないはずの眼だけは何かを反射してギラギラしている。

最後の最後のニュース映像ですら、こっちを見ているんですね~ 意地悪だw

フェデ・アルバレス監督によるスリラー・ホラーは、劇場を文字通り息を殺すような静けさに包み、闇の住人から逃げ光へ進もうとする若者を応援したくなる良作でした。撮影、音に物。映画という器を巧く使っているのも好きなところです。

驚かすものではないので、間口が広い気もしますので、是非試しに観てみてほしいですね。

そんなところで感想はおしまいです。それでは、また~

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