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「クレオの夏休み」”Ama Gloria”(2023)

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「クレオの夏休み」(2023)

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作品解説

  • 監督:マリー・アマシュケリ
  • 製作:ベネディクト・クーブルール
  • 脚本:マリー・アマシュケリ、ポーリーヌ・ゲナ
  • 撮影:イネス・タバラン
  • 編集:スザナ・ペドロ
  • 音楽:ファニー・マルタン
  • アニメーション:アリー・アマシュケリ、ピエール=エマニュエル・リエ
  • 出演:ルイーズ・モーロワ=パンザニ、イルサ・モレノ・ゼーゴ、アルノー・ルボチーニ、アブナラ・ゴメス・バレーラ、フレディ・ゴメス・タバレス 他

6歳の少女と乳母の血のつながりを超えた愛の絆を、少女の視点から鮮やかに描いたフランスのヒューマンドラマ。

主人公クレオ役には、当時5歳半で演技未経験のルイーズ・モーロワ=パンザニが抜擢。監督は、前作「Party Girl」でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を共同で受賞し、本作で長編単独監督デビューを果たした新鋭マリー・アマシュケリ。

2023年の第76回カンヌ国際映画祭「批評家週間」のオープニング作品に選ばれています。

また、この作品は今年の横浜フランス映画際でも上映されていたので、映画際からは大体4か月後には一般公開されたことになりますね。

前情報自体はあまり仕入れていなかった作品なのですが、予告編を観てから気になっていて、楽しみにしていた作品です。公開週末に早速観に行ってきました。

都内の映画館に行ったのですが、昼の回だったからかあまり人は入っていなかったですね。

「クレオの夏休み」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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パリで父親と暮らす6歳のクレオは、いつもそばにいてくれる乳母のグロリアが大好きだった。

しかし、ある日グロリアが遠く離れた故郷のアフリカへ帰ることになってしまう。突然の別れに戸惑うクレオに、グロリアは自身の子どもたちと住むアフリカの家に招待すると伝える。

そして夏休み、クレオはグロリアと再会するため、ひとりで海を渡ってアフリカへ向かう旅に出た。

そこではグロリアの娘や息子と過ごすことになり、クレオは初めてグロリアが自分以外に愛情をそそぐところを見ることになるのだった。

感想レビュー/考察

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ひと夏の出来事映画では今年は「コット、はじまりの夏」があってそれに並ぶ作品はないと思っていました。しかしあったね。

なので上半期は「コット、はじまりの夏」、下半期は「クレオの夏休み」で行きたいと思います。ありがとうございました。

83分のかなり短い上映時間。そのなかに自分が幼少期に感じたようなものが詰まっていて、しかもクレオの個人的なドラマに仕上がっていて、感情をすごく揺さぶられました。

何もかもの、楽しさも幸せも悲しさも悔しさも、全部を大きく広げた腕で包み込んでくれるような、とびっきりのハグみたいな作品です。

これは自分の美しい思い出

OPを見たらすぐに、この作品が大好きになりました。目の検査をしているシーン。お医者さんに視力検査をしてもらっているクレオ。

世界がよりちゃんと見えるように。その準備の助けをしているという意味でも象徴的なシーンなんですが、そばにいるナニーであるグロリアとの関係性がここですでにうまく描かれている。

クレオに答えを教えちゃう。

そのあとで一緒に帰り、お風呂に入って遊んで一緒に寝る。

何気ないシーンの集まりです。子どもの世話をするというシーン。でも、なぜか自分自身の幼少期の、親とか親しい人と過ごした夜を思い出しました。

逃げ回ってそれを追いかけてくれるのが嬉しくて。お風呂も楽しくて。安心と暖かさの中で眠る気持ち。

こんな気持ちを今の大人になった自分に、肌で感じるように思い起こしてくれるだけで、宝物みたいな映画です。

監督の実体験から、子どもの頃には見えなかった事情を知る

この作品は実際にマリー監督の体験をもとにして作られたそうです。監督自身が6歳までの間、ポルトガル国籍のナニーがいて世話をしてくれたとか。

しかしちゃんとお別れも言えないまま離れ離れになり、20年以上たって本人と話し、子どもだったころには理解できなかったことを知っていったそうです。その時の体験や、ナニーの方の事情というモノを描きこみたかったとのこと。

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心奪われる主演のルイーズ・モーロワ=パンザニ

さて、この作品ですごく重要なのは主演のルイーズ・モーロワ=パンザニです。撮影時には5歳ってことが信じがたい名演。演技なんですよね。不思議に思ってしまうくらいに自然で。

とにかく可愛くて。キャッキャとしている様子がキラキラしています。

なによりすごいのが、子どもの頃の複雑な感情、特に初めて感じるものに対してのリアクションとか子供らしい難しさを、自分の体験に重ねられるほどに卓越した演技で再体験させてくれるのです。

彼女は純真で、だからこそ、後半で赤ちゃんにつらく当たってしまうシーンも真正面から理解できる。分かるんです。

涙の演じ分けすらも、しっかりと違う。

ママを亡くしたことを思い出しているときの鳴いている姿と、赤ちゃんの件で叱られてしまい、大好きなグロリアに嫌われてしまう悲しさ、罪悪感で泣いている姿がちゃんと違う。信じがたい才能です。

彼女の演技に引き込まれる素晴らしい83分でした。

クレオの記憶や回想には、時に暖かく、時に恐ろしげなアニメーションが使われています。

厳しすぎる記憶なのであれば、生々しさのないまたどこか曖昧なアニメーションという手法を使ったことはすごく効果的に思いました。

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フランスの歴史と現代にもある負の側面

きっと裏側には、フランスと植民地の関係性だったり、貧富の差なども込められているのだと思います。

フランス側はシングルファーザーとは言えども、ナニーを雇っていく余裕がある。それに対して、グロリアは自分の子どもの世話をなげうってでも島を出てフランスで乳母をしているわけです。

これは出稼ぎなのです。実際のところグロリアは彼女自身の子どもとの時間や家庭を犠牲にしながら、クレオの世話をしている。

フランスでは実際にナニーの文化があり、多くは出稼ぎに来て富裕層の子どもを世話している状態だそうです。監督がインタビューで語っていました。

こうした歪みはクレオの目線として描かれる作品としては強調はされませんが、しっかりとグロリアの息子であるセザールが表現しています。

クレオに理由が分かることはないように思いますが、彼にとってはクレオは憎い相手です。外国人の子どもで、自分の母親を奪った存在なのですから。だから彼の冷たい態度、やり場のない怒りには、また観客側として共感できるところがあるのです。

あとグロリアの娘さんであるナンダについては、彼女も出産を控えているのに、子どもの父親が出てこないところも気になりますね。

苦しい状況に置かれているのは、実際にはグロリアとその家族であり、言ってしまえばクレオの方は贅沢でわがままなのかもしれないですね。

監督はもちろんそれを前面に押し出すことはなく、成長のひと夏の物語にまとめ上げています。クレオの感じる世界に、誰しもが自分を見つけることのできる素晴らしいつながりをくれる作品です。

非常におすすめ。素晴らしかった。今回の感想はここまで。ではまた。

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