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「JOIKA 美と狂気のバレリーナ」”Joika” aka “The American”(2023)

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「JOIKA 美と狂気のバレリーナ」(2023)

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作品解説

  • 監督:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
  • 製作:ベリンダリー・ホープ、クラウディア・シュミエヤ=ロストボロフスカ、トム・ハーン
  • 製作総指揮:ポール・グリーン、アンドレア・スカルソ、ピーター・タッチ、ジョン・ロバートソン、ステファニー・ネイピア、ヒューゴ・グランバー、ティム・ハスラム、ローリー・ロス、マイケル・セルニー、フィリップ・ローズ、シャーロッテ・ウベン、ジェームス・ネイピア・ロバートソン
  • 脚本:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
  • 撮影:トマシュ・ナウミュク
  • 美術:ヨアンナ・カチンスカ
  • 衣装:カタジナ・レビンスカ
  • 編集:クリス・プラマー、マーティン・ブリンクラー
  • 音楽:ダナ・ランド
  • 振付:ジョイ・ウォーマック
  • 出演:タリア・ライダー、ダイアン・クルーガー、オレグ・イベンコ、ナターシャ・アルダースラード 他

ロシアの名門ボリショイ・バレエ団を舞台に、完璧なプリマバレリーナを目指すアメリカ人女性の狂気と執念を描いたサイコサスペンス。

2012年にアメリカ人女性として初めてボリショイ・バレエ団とソリスト契約を結んだジョイ・ウーマックの実話をもとに、華麗な舞台の裏側に潜む厳しい現実と、ダンサーたちが直面していた過酷な環境に迫ります。

主演を務めるのは、「17歳の瞳に映る世界」で注目され、今年日本では「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」も公開されたタリア・ライダー。

名優ダイアン・クルーガーが主人公の指導者ヴォルコワ役を演じ、「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」で知られるダンサーのオレグ・イベンコが、ジョイのパートナーであるニコライを演じます。

さらに、世界的プリマバレリーナであるナタリア・オシポワが本人役で特別出演しています。

もともと存在も知らなかった作品なのですが、タリア・ライダーの主演作品が年内にまた来るということで予告を見て興味を持った作品。公開初週末に観に行ってきました。人の入りはそこそこ。

「JOIKA 美と狂気のバレリーナ」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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アメリカ人の若きバレリーナ、ジョイは、ボリショイ・バレエ団からのスカウトを受けて単身ロシアへ渡り、希望に満ちた気持ちで名門アカデミーへの入学を果たす。

しかし、彼女を待ち受けていたのは、常軌を逸した完璧さを求める指導者ヴォルコワによる、厳しさを通り越した脅迫的なレッスンの数々。

過激な減量と過酷なトレーニング、日常的に浴びせられる罵倒の言葉、さらにはライバルたちからの陰湿ないじめ。

そうした過酷な日々のなかで、ジョイの心は徐々に追い詰められていく。

感想レビュー/考察

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バレエの裏側の深い闇、、、は食傷気味

華々しいバレエの世界、その裏側。

「ブラック・スワン」が大きな切り口になってからも、同じようなテーマは結構あり、アマプラで「バーズ・オブ・パラダイス」なんかも観たなと思います。

なので、バレエの裏世界が衝撃的なことになっていると言った暴露的な話では、今はそこまでの衝撃はないものです。

私としては今作は、裏側を覗いていくというよりもそもそもボリショイ・バレエの本質とそれに挑戦した女性のドラマであり、そしてバレエがいかに過酷なゴリゴリのスポーツなのかを示していると思いました。

命題はアメリカ人であっても実力さえあれば、ロシアのボリショイの中で活躍できるのかということ。努力次第で夢を掴めると考えて15歳でロシアにわたった少女が、大きな壁にぶつかる物語です。

孤独や焦燥、混乱からくる不安を映す撮影

OPではアメリカ時代のジョイの記録が流れます。家族との動画や、国内でインタビューを受けているもので、希望に満ちているようなものです。

しかし一方で、その映像はスクエアライクで正方形のアスペクト比になっていて、狭苦しい。そして色彩も決して豊かなものではなく、この先のジョイの苦難を示すかのようです。

寒色が多く、華やかさのない画面のなかで、態度まで冷たいロシアのスクール。友好的な会話のないままに、あまり全体像も見えないカメラワーク。

ジョイにぐっと寄ったりしますが、孤独さとか周囲がはっきり見えない混乱とかを表示する、いい感じの撮影だと感じました。

そんな過酷な環境を映す撮影ですが、フォーカスとなるジョイ・ウーマックとはどんなバレエダンサーなのか、公式サイトを参照してみました。

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ジョイ・ウーマックについて

ワシントンD.Cの名門キーロフ・アカデミーでロシア・バレエを学んだウーマックは、15歳でボリショイ・アカデミーに入学し、2012年に卒業した時には5+という最優秀の成績を得た。

アメリカ人女性として初めてボリショイ・バレエ団に入団し、クレムリン・バレエ団でプリンシパルを2018年まで務めた。

2016年には世界三大バレエコンクールの一つ、ヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞に輝いた。その後韓国のユニバーサル・バレエ団、そしてボストン・バレエ団でも活躍した。

現在はパリ・オペラ座で契約団員として踊るなど世界の舞台に立ちながら、自らの経験を活かし若いダンサーを支援するための組織Project Primaを創設し、後進の指導にも携わっている。

2021年には彼女のロシアでの活躍を追ったドキュメンタリー映画『The White Swan』が公開された。2025年2月開催のローザンヌ国際バレエコンクールでは審査員を務めた。

ウーマックさんは今作で振付師も担当していて、一部足元のショットなどではタリア・ライダーのボディダブルとしてダンスもしているそうです。

ダンスの素養があり、修練を積んだ演者によるリアリティ

しかし、ウーマックさんの尽力に応えているのが、主演のタリア・ライダーです。
彼女自身がクラシックダンスの経験者だそうですが、アメリカでの踊りをロシアの伝統的なダンスに調整してまた習いなおす必要があったそうです。
タリアは役のために1年間のトレーニングを積んで、今作では先述の通りの一部のボディダブルはあるものの、ジョイとしてカットを割らずに踊るシーンを演じています。
そして今回厳しいバレエ教師ヴォルコワを演じているダイアン・クルーガー。
ロイヤルバレエスクールに在籍していたこともあるという彼女は、さすが当事者だからこそその現場の空気感や緊張、そして教師の厳しさを見事に演じています。普通に怖い。
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自分の居場所はここ、バレエの舞台上しかない

私は撮影による力のほかにも、こうしたバレエというプロ領域での役者たちの努力が、かなり説得力を増す素材になっていると感じました。
ジョイが追い詰められ、彼女自身が言うように別人のように変貌していく。スリラーのような緊張感すらあります。
ロシア国内で裏切り者とされてしまったジョイの運命は見ていて残酷です。しかし、トイレの清掃員になってもなお、地元のジムの片隅でバレエの練習をし続ける姿に、やはり彼女の居場所がバレエ舞台であることが感じ取れます。
ロシアの中で登るために、ロシア人になるジョイ。Joy から Joikaと2つの人格を内包して、痛みにも耐えて前に進み挑戦した彼女のドラマ。
ジョイの選択を示す演出が個人的にはすごく好きですね。最後のバレエの舞台に立つか否か。立たなかったことで送ることになる人生をモンタージュして、現実に引き戻す演出。
あと小さいところですが、テキストメッセージを用意したけど送れないとか、彼女の心情を観客には伝えながらも、人物関係では切なさをみせたりいいなと思います。

どこかのセクションに尖ることはできない作品

ただ最終的にまとめると、ちょっと立場的に弱いところもある。
少女たちによる売春と思われる、キャリアを上るための闇とかも含まれていますけれど、やっぱり突っ込みは足りない気もします。あまり描きこめないっていうのもあるのでしょうけれど。
やはりバレエの世界をすべて否定的に描くのはいやでしょうし、これは全世界にいるバレエを志す子どもたちにとって怖いだけのモノであってはいけないのだと思います。
ジョイ・ウーマックさんはまだ30歳くらいで、この作品で描かれる彼女の体験は決して過去のことではない。バレエの世界をこれほどまでに個人を、精神も身体も犠牲にしなくても、羽ばたいていける、そんな世界にしていかなくてはいけないですね。
撮影感とか、やはり主演のタリア・ライダーの輝きが素敵な作品でした。
今回の感想はここまで。ではまた。

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