「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」(2021)
- 監督:ジェームズ・ガン
- 脚本:ジェームズ・ガン
- 原作:ジョン・オストランダー『スーサイド・スクワッド』
- 製作:チャールズ・ローヴェン、ピーター・サフラン、サイモン・ハット
- 音楽:ジョン・マーフィー
- 撮影:ヘンリー・ブラハム
- 編集:フレッド・ラスキン
- 出演:マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、イドリス・エルバ、ダニエラ・メルシオール、ジョン・シナ、デヴィッド・ダストマルチャン、シルベスター・スタローン 他
作品概要
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン監督が、DCコミックスの悪役たちが集結した集団スーサイド・スクワッドを描くアクション映画。
同じ題材として2016年にもデヴィッド・エアー監督による「スーサイド・スクワッド」がありますが、あちらの再起動というか続編というかなんかよく分からない位置にある作品です。
DCEUとしては10作品目になるもので、これまでの「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」などからマーゴット・ロビーが同役で続投し、ジョエル・キナマンやヴィオラ・デイヴィスも出演。
新キャラとしては「マイティ・ソー」シリーズや「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」などのイドリス・エルバ、「バンブルビー」などのジョン・シナ、「スパイダーマン:スパイダーバース」のダニエラ・メルシオール、そして「アントマン」シリーズのデヴィッド・ダストマルチャンらが出ています。
デヴィッド・エアーの件としても勝手にスタジオにいじられたから自分の作品じゃないと言っていたスースク。
今作もディズニーに追い出されて一度GOTGvol.3を離れたジェームズ・ガンに回ってきたりと、なんだかスタジオと監督の関係にいわくがある感じですね。
自分はスーサイド・スクワッドのコミックは詳しくないので、正直言ってDCEU新作ってだけで観てきました。
公開週末はいけなかったために翌週に持ち込みましたが、結構混んでましたね。一応今作はR15指定。
~あらすじ~
政府組織のアマンダ・ウォラーは、囚人となって刑に服す超人的な能力を持つ悪人たちを、減刑や脅迫などあらゆる手を駆使して合衆国のための任務につかせていた。
どうせ死んでもかまわない存在の決死隊ということで、彼らはスーサイド・スクワッドと呼ばれ、多くの悪人が連れ込まれては無残な死を迎えている。
ウォラーはかつてのナチスが残した「スターフィッシュ計画」が南国の島国で続いているとし、チームを結成し部隊を送り込む。
これまでもスクワッドに参加しているフラッグ大佐、ハーレイ・クインに加え、ブラッドスポートやピースメイカー、キングシャークらは島の奥にある研究施設を目指していく。
研究施設の管理は超人的頭脳をもつシンカーという男が握っており、チームはまずシンカーを拉致すべく動き出す。
感想/レビュー
デヴィッド・エアー版からの大幅改善と反省
前作のデヴィッド・エアー版がもはやいじくりまわしているので監督自身の作風だとかを議論できないものなのかもしれませんが、作品としては今作はかなりの改善を見せていると感じました。
ヴィランたちを集めるという試みはユニバース型で劇場映画を展開するMCUに先がけての試みになっていますが、そのヴィランであることの特色を生かしきれなかった気がする前作。
それに比べて、ここではジェームズ・ガン監督によるスプラッタ、ゴア、軽すぎる人死にに不謹慎ギャグ含めて大盤振る舞いになっています。
痛々しいというか豪快で笑ってしまうよう人体欠損、脳みそぶちまけ。
反政府勢力である民兵たちを皆殺しにしつつ、実は味方でしたのオチなど含めてまあ不謹慎ですね。
間違いなくハーレイやブラッドスポートらでなくては展開できない脚本です。
暴力的で無秩序、コメディに振り切った表現も多くて全体のテンポもいい作品に仕上がっています。
また自己認識もしっかりした制作なのではないでしょうか。
前作においてはハーレイ・クインが非常に好評でしたが(それがスピンオフに繋がりました)、その他について深く掘って続編にするよりも、むしろ新しいキャラクターを登場させて組織名を受け継いだ別のチャプターにしています。
観たいものを意識して語っていくという選択は、上手く機能していると感じます。
演者の布陣としても、GOTGで馴染みのマイケル・ルーカ―を起用していたり(あっさり殺しますが)、イドリス・エルバ、タイカ・ワイティティ、ジョン・シナ含めて、あまりにも惨たらしい悪人ではなく、悪役としてうまくどこかしらに共感を見つけられるようになっています。
正面からぶつかる悪役としてもつそれぞれの流儀
OPにてマイケル・ルーカ―演じるサヴァンはボールをなげて小鳥をぶち殺します。
これが開幕としてこの作品の倫理観を決定づけ、その後休む間もない上陸作戦からの大量殺戮が命の軽さも定義する。
個性豊かすぎるキャラができていない意思疎通をしつつ目的へ。
不道徳的な部分ではGOTGで十分手腕を見せていたので安心のクオリティだったと思います。
で、今作の根幹にはそれぞれの主義というものが置かれていると思います。
悪人というかまあ悪役として描かれるキャラクター達には自分の主義があり、それが炸裂するシーンはどういった意味を持っていてもその覚悟がかっこよく見えました。
ハーレイは新大統領の前で自分を道具にするなという(女性をモノとして扱う点ではやはり彼女にはフェミニズムが託されていると感じます)点と、女子供を犠牲にするのは許せないということが示され、かなりかっこいいシーンです。ヒーローとはまた違った面で。
ブラッドスポートとラットキャッチャーの2人には、社会という枠組みではなくて家族にてつながりがありました。
それぞれ父親に関しては過去を抱えています。ブラッドスポートはそれこそ自分自身を悪役にした張本人が父親なのです。
そしてラットキャッチャーの場合には、能力を与えた点で似ていますがそこに愛情がありました。
ここはさらにポルカドットマンに繋がります。彼の母はスーパーヒーローを作ろうと勝手な人体実験を繰り返し、結果としてその副作用から彼はヴィラン、危険人物になってしまったのです。
そしてハーレイの主義とぶつかるのがピースメーカー。彼は絶対的な、社会やアメリカ、世界の正義を追求する男です。そのためならば女子供も殺す。仲間でも殺す。
ある意味で正義のためなら何でもする真の覚悟を持った男ということです。
悪役なら悪役なりの流儀があり、誰もそれらを譲らない。
表層に終始した暴力とギャグ
ある目的のためになら一線超えちゃうのはこのヴィランだからこそのテーマですね。
社会的には優等生ではなくても美学がある点で、それは爽快にも感じます。自分は何にしても本当にスーパーヒーローになったポルカドットマンが好きでした。
しかし、作品全体としては楽しい映画ではあるものの、あまりハマった気はしません。
理由はギャグからくる深さがなかったからです。
不謹慎なネタやゴア描写、性的な描写。確かにスーサイド・スクワッドというコミックのチームを描く上では逃げてはいけない点で、そこをジェームズ・ガン監督は持ち前のノリで描きます。
ですが、そのコメディ部分はただ笑って終わりなのです。グロイね。エグイネね。あっさり死ぬね。
そうした映像的表現と脚本は確かに見ている間には勇気があり大胆に見えたりもしますが、何かのドラマを描くために必要なものには見えませんでした。
暴力表現を控えないからといって、それすなわち作品の質が上がるわけではありません。
逃げない表現で表層を確保しても、上滑りしていてなんとなくファンが喜んでいる程度にしか思えなかったのが正直なところです。
最後のほうに関してちょっとチームプレイを入れてみたりしつつも、シナジーが生まれていないと自分は感じます。
全体に豪快に楽しくなった作品ではありますし、一部輝かしい新キャラや相変わらず素敵なハーレイ・クインも堪能できます。
気になる方は映画館での鑑賞を。
今回の感想は以上です。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
ではまた。
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