「デッドプール&ウルヴァリン」(2024)
作品解説
- 監督:ショーン・レヴィ
- 脚本:レット・リース、ポール・ワーニック、ライアン・レイノルズ
- 原作:ファビアン・ニシーザ、ロブ・ライフェルド『デッドプール』
- 製作:ケヴィン・ファイギ、ライアン・レイノルズ、ショーン・レヴィ
- 音楽:ロブ・シモンセン
- 撮影:ジョージ・リッチモンド
- 美術:レイモンド・チャン
- 衣装:グレアム・チャーチヤード、マイェス・C・ルベオ
- 編集:ディーン・ジマーマン、シェーン・リード
- 出演:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン、エマ・コリン、マシュー・マクファディン 他
マーベルコミック原作の異色ヒーローアクション「デッドプール」のシリーズ第3弾。ライアン・レイノルズが演じる型破りで無責任なヒーロー、デッドプールが再び登場します。
さらに、マーベルコミック原作の「X-MEN」シリーズで活躍したヒュー・ジャックマン扮するウルヴァリンもスクリーンにカムバックし、2大ヒーローの共演が実現。デッドプールをライアン・レイノルズが演じ、ヒュー・ジャックマンは2017年の「LOGAN ローガン」以来のウルヴァリン役に復帰します。
監督は、「ナイト ミュージアム」シリーズやライアン・レイノルズとタッグを組んだ「フリー・ガイ」などで知られるショーン・レヴィ。
かなり前に予告編というか作品のリリース告知が行われた際には、ライアンが座って喋っているとき「ヒュー、またウルヴァリンを演じたい?」「もちろん。」の掛け合いから、デッドプールの3作目と同時に、ヒュー・ジャックマンのウルヴァリン復帰が告知されました。
そのあとでティーザーが出たり撮影風景のリーク画像が出ると、コミック版に近いイエローのスーツに身を包んだヒューが確認され、大きな話題になりました。
最近の日本では珍しく、おそらく世界最速公開?になりまして、水曜日の公開。平日から観に行っている人が多く話題でした。私は日曜日に行ってきたのですが、やはり結構混んでいました。
~あらすじ~
X-menの見習いとしてヒーロー活動をするも、その自己中心さやふざけた態度などで活躍ができずにいたデッドプールことウェイド・ウィルソン。
今はスーツを脱ぎ捨て、車のセールスマンとして平凡な日々を送っていた。挑戦をやめてしまったことで恋人であったヴァネッサとは別れ距離を置き、ウェイドは生きる意味をも見失っている。
ウェイドの誕生日パーティを自宅で開いていた時、TVAという時空警察がってきて彼を拉致。以前彼がタイムトラベルを繰り返し、自身のために運命を操作したことが問題だった。
しかしTVAではさらに重大な事実を告げられる。責任者であるパラドックス曰く、ウェイドの時間軸は重要なコアとなる人物の死によって崩壊を始めているのだという。
それはX-menの重要なミュータントであり、自己犠牲により英雄として死んだウルヴァリンことローガンだった。
デッドプールはローガンを別時空から連れてきて、自分の時間軸の崩壊を防ごうと動き出すが、事はそう簡単ではなかった。
感想レビュー/考察
スタジオのあれこれで本当の意味で浮いた異物になったデッドプール
もともとはX-menシリーズの中でスピンオフ的な立ち回りで始まっていた「デッドプール」。
ディズニーによる買収から権利的にはどんどんと複雑になっていく上に、本シリーズであるX-menはいろいろと展開した挙句に「X-men ダーク・フェニックス」でしれっと終わってしまいました。
X-menにかかわるヒーロー映画についてはMCU内で仕切りなおしてまた始めていくという流れになり、ある意味デッドプールは取り残されてしまった異物になったのです。
現実での作品とキャラクターの位置が、まさかキャラクターの特性とここまで合致してしまうとは。皮肉なものです。
過去にうやむやになったり失敗扱いだったヒーローたちのカムバック
そこで今作はMCUにデッドプールが本格合流するとともに、こうした忘れられてしまったキャラクターや宙づりでどこかへ行ってしまった作品たちの、いわゆる失敗作たちのカムバック映画になっています。
ヒーロー映画史を知っている人ならばよりいろいろなネタを楽しみながら、過去を清算していくような映画になっていました。
MCUに入るうえで、ここまでに引きずっているものを整理する作品なので、メタ的なネタを楽しむにはMCUのあれこれはあまり関係ないです。
むしろ、90年代の後半から2000年代をけん引してきた懐かしのヒーローたちや、FOXのもとで走ってきた企画などを知っていないと、何をみせられてるのかよく分からないというのも正直なところでしょう。
英雄じゃない最低のウルヴァリンが、自分の贖罪をかける
そんなデッドプールの旅路のお供になるのは、言わずと知れた過去のヒーロー映画の超人気キャラウルヴァリンです。
X-menシリーズでは2000年の初登場から3作品、自身のスピンオフが3作品、そしてカメオ的な位置でもいわゆる「X-men ファースト・ジェネレーション」から始まったシリーズでも出てきているため3作。
かなり多くのシリーズで、いずれもヒュー・ジャックマンが演じてきたキャラクター。
ジェームズ・マンゴールド監督の「LOGAN ローガン」でなんとも美しい最期を迎え、アカデミー賞ではアメコミ映画初の脚色賞のノミネートも果たすという快挙を成し遂げた傑作です。
今はやりのマルチバースを活用し、あの伝説のローガンとは別のローガンという設定にて、再びヒュー・ジャックマンが体を作り上げて挑むウルヴァリンですが、作品内では彼も失敗作扱いされています。
「最低のローガン」と。
このように「LOGAN ローガン」の想い出は大事に取っておきつつ、ウルヴァリンを再登場させる以外、まあ道はないでしょう。
このウルヴァリンはまあ「オールドマン・ローガン」ほどの大惨事を引き起こしていたわけではないのですが、ヒーローとしては逃げた上に復讐のために一般人を皆殺しにしてミュータント全体を人間の敵にしてしまったというとんでもない出来損ないです。
だからこそ、デッドプールとの共闘から本当に”X-MEN”になろうとしていくドラマが展開されるのです。
このように、過去にやらかしてしまったキャラクターを導入し、全体を”失敗作たちの最後のチャンス”にまとめています。
まあ実際にはカメオで出てくる全てが失敗作ってわけではないんですけれども。
MCUよりもずっと前、試行錯誤していたヒーロー映画の面々
【ここからかなりネタバレ】
ネタバレしてお話しすると、まずはデッドプールとウルヴァリンは”用なし”の廃棄場所である空間へと捨てられてしまったところ。
クリス・エヴァンスがさっそうと現れてキャップのサプライズを期待すると、実はジョニー・ストーム、つまり懐かしの2005年の映画「ファンタスティック・フォー 超能力ユニット」で登場したヒューマン・トーチであることが分かります。
シリーズ化して2も作られましたが、その後続編もなく、ちょうどMCUが独自にファンタスティック・フォーを製作することが発表されたタイミングだったので、手向けみたいなカメオですね。
またデッドプールがウルヴァリンと喧嘩して疲れ切り、ホンダのオデッセイで爆睡していると、あの「LOGAN ローガン」のローラ(ダフネ・キーン)によって、廃棄から免れたヒーローたちの隠れ家に連れて行ってくれます。
そこには2005年「エレクトラ」(これはそもそもベン・アフレック主演の「デアデビル」のスピンオフ)からエレクトラ、1998年の「ブレイド」からウェズリー・スナイプス兄貴が演じるブレイド。
そして、一時はFOXの中で勧められていたのに、企画が急になかったことになってしまった、チャニング・テイタム版ガンビットが登場する。
MCUが好きな若い人ってよりも、今の30代とか、90代後半~ゼロ年代にいろいろなヒーローを観てきた人には、感慨深いものがあります。
特にガンビットはテイタムが散々確約されて準備してきたとに、あっさり白紙にされたことが彼自身もすごく可哀そうだったので、このようにして消えたはずのキャラがスクリーンに現れるチャンスをもらったのは嬉しいところでした。
クリス・エヴァンスやチャニング・テイタムが、今回の実現に尽力したライアン・レイノルズに感謝を伝えていますね。
無かったことにするのはおかしい
いまでこそ、ヒーロー映画はかなりの人権?を得ていて、MCUなんてファッション的に好きだと公言する人もいたり、映画業界でのキャッシュカウとしても存在感があります。
しかし、「ブレイド」がヒットしなければ2000年代を無事に迎えられるかも怪しかったマーベルエンターテインメントのことを考えるのも大切です。
そのあとでサム・ライミがスパイダーマンを作り、ブライアン・シンガーはX-MEN、そしてその間にはデアデビルにエレクトラ、全部がうまく行ったわけでなくても、一生懸命のヒーロー映画つくりに、私だって子どもの頃に楽しませてもらったのです。
「ターミネーター」とかもそうですけど、確かにヘンテコな出来で興行的にも失敗して人気がなくても、だからって存在しなかったかのように語られるのって結構傷つきます。自分の思い出自体を消される気分になっちゃうんです。
その意味で、今回もカメオだオタク向けだと言われるのは承知ですが、価値あるカメオ出演だと思いました。
ただみんなが好きなものを並べ立てるような安さではなくて、プロットに即していますからね。
亜流が主流に
もう一度の輝きをもって活躍するデッドプールチーム、そしてローガンは今度こそ誇りをもってそのX-MENのスーツにふさわしい行動をする。
そうしてローガンは最高のローガンになり、デッドプールは一つのユニバースの異物とか添え物ではなくて、自分のためだけに戦うのではない世界を救うヒーローになる。
自分に都合よく、都合の悪いものは存在ごと消し去ろうというザ・ビジネスマンなパラドックスがヴィランであったり、葬り去られた創造物が、神であるスタジオに歯向かう感じも良いと思います。
かなりカメオカメオになっていて、一時的にストーリーから離れてしまうような気もする点が否めないのですが、それでもデッドプールだからできることとしておもしろい作品でした。
EDのクレジット、Green DayのGood Riddanceに載せて過去のX-MENシリーズの撮影の裏側が流れてくると事、とてもノスタルジーです。これで本当にお別れですね。
コミック映画の歴史にどっぷりで、オタクファンサあふれる作品であって、映画的なところでは微妙な気もあるのですが、世代にハマっている人ならグッときちゃうんじゃないかな。
今回の感想はここまで。ではまた。
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