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「狼たちの午後」”Dog Day Afternoon”(1975)

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映画レビュー
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「狼たちの午後」(1975)

  • 監督:シドニー・ルメット
  • 脚本:フランク・ピアソン
  • 製作:マーティン・ブレグマン、マーティン・エルファンド
  • 撮影:ヴィクター・J・ケンパー
  • 編集:デデ・アレン
  • 出演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、クリス・サランドン 他

シドニー・ルメット監督とアル・パチーノが組んだ、実話に基づく社会派ドラマ映画。そういう点で私の大好きな「セルピコ」(1973)を思い出します。

ルメット監督らしい硬派な作り、そして演技の光。アカデミー賞においては作品賞や主演などのノミネート、脚本賞を受賞しました。

元となるのは1972年に起きたブルックリンの銀行強盗事件で、そちらをフランク・ピアソンによる脚本で映画化したものになりますね。事件から映画製作までが早いですね。

ちなみに”Dog Day”というのは「真夏」とか「猛暑」的な意味だそうで、「狼」というのは関係ないですよ。

1972年8月。ニューヨーク市のブルックリンはうだるような暑さだった。

街にある銀行に3人の男が入ってくる。一人の男が銃を取り出し、銀行員を制圧。しかし、この3人組はプロでもなく、計画もしっかり持っていなかった。

内一人がすぐに怖気づき、やむなく銀行から出す。とりあえず金を奪って逃げようとするが、取引後で金庫にはほとんど金が残っていなかった。

残った二人であるソニーとサルは、もたついている間に警官に囲まれ、職員たちを人質に立てこもる他なくなってしまった。

真夏の汗ばむ熱の中、二人と職員たち、そして警官隊の長い緊張が続く。

オープニングでの町の様子。匂いを感じそうな撮影に、流れ着くのが本作のメイン舞台である銀行。この先ほとんど町の様子やら空や海などでなくなり、全体の窮屈さが増しますね。また、スコア的な音楽が排除されているのも素晴らしく実録感が感じられ、ルメット監督らしい感じがするかと。

ある種密室的舞台での籠城。

そしてあまりに哀れな銀行強盗に、職員たちは同情したのか、寄り添い一緒に頑張るような形を撮っていきます。たしか人質が犯人グループと懐柔して組織に加わった話もありました。今作ではソニーたちに職員が協力していきます。

外に出て交渉する際に、とっさに盾にしようかと思ったのか、アッティカ刑務所での事件を叫びます。観衆のヒーロー的位置にソニーが立った瞬間です。

当時としては生々しくまた警察権力への信頼が疑念にあふれていたこともあり、この言葉で一気に警察が卑怯、ソニーが英雄の構図をとります。

しかしまぁ急に持ち上げられたゆえののぼせ具合、アル・パチーノが素晴らしい演技をしていますね。信念とか規律とかそういうものを抱えているわけではないんです。

またジョン・カザールの演技も特筆して素晴らしいと思いました。

ソニーはまだ無血でなんとか逃げ切れると信じていますが、サルの方はもう戻れない一線を越えたと思い、殺しも止む無いと覚悟して狂い始めている。その自身でも怖い狂気を感じました。

この映画で出てくるのは、とにかく実在(まあ実話ですが)感のあるキャラクター。

ソニーは決して卑劣な人間でなく、母を思い妻子を思いそして弱い同性愛者の彼氏を助けたい。ただどうすればいいかわからないんです。彼の素性が明かされればされるほど、観客としても彼のそばに寄り添う心情になってきます。

犯人、人質そして観客まで一体になって逃げ出そうという気にさせてくる。

そこまで感情移入させておいて、この映画はプッツリと一発の銃声で緊張を切ってしまいます。

音楽のないゆえの緊張が、ここでは音楽がないゆえに余韻すらないのです。聞こえる人声や機械音、サイレン。一時的な英雄、観衆の熱。そのままにふっと消えてしまうのでした。

これだけドラマがあって、これだけ一緒にいて、あっさり切り離すとは。醒めたときに汗が残っていて、確かにあったんだと存在を認知する程度。この感覚が素晴らしいです。

そんな感じでさらっと感想を書きました。暑い夏の日に見るといい映画の1本ですね。それではまた~

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