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「MEN 同じ顔の男たち」”MEN”(2022)

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「MEN 同じ顔の男たち」(2022)

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作品概要

  • 監督:アレックス・ガーランド
  • 脚本:アレックス・ガーランド
  • 製作:アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ
  • 音楽:ベン・ソーリズブリー、ジェフ・バーロウ
  • 撮影:ロブ・ハーディ
  • 編集:ジェイク・ロバーツ
  • 出演:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ 他

「エクス・マキナ」「アナイアレイション 絶滅領域」のアレックス・ガーランド監督が、夫の死のトラウマから逃げ田舎の邸宅へやってきた女性と、その町で彼女が出会う、同じ顔をした男たちによる恐怖を描くホラー映画。

主演は「もう終わりにしよう。」などのジェシー・バックリー。

町にいる男たちを演じているのは「007スカイフォール」などのロリー・キニア。

製作は様々なジャンルを手掛け個性的でアートハウスかつ最近は工業的にも成功を収める作品を送り出しているA24。

何にしてもアレックス・ガーランド監督の長編3作品目として楽しみだったのですが、私としては偉大なジェシー・バックリー主演というのもなにより楽しみにしていた作品。

ということで公開週末に早速観に行ってきました。しかしA24は最近若い層に人気だったと思ったのですが、あまり人が入っていませんでした。

〜あらすじ〜

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ハーパーは夫の死を目撃した。

強烈なイメージからの逃避と癒やしを求め、彼女は田舎町にある邸宅での休養を始める。

大家のジェフリーは変わった男だったが、喧騒から離れたハーパーはなんとか落ち着きを取り戻そうとしていた。

しかし、ある日森の中を散歩していたところ、廃墟となったトンネルで何かと出会う。

奇声をあげて迫ってくるそれに怖くなったハーパーは走って逃げ出すのだった。

森から来たのは全裸の男だったが、邸宅へ侵入したところでハーパーが通報し呼んだ警官に捕らえられる。

しかし、不穏な恐怖は夫の死の幻影とともにハーパーを苛み続ける。

感想/レビュー

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アレックス・ガーランド監督といえば、ビジュアルセンス。

非常にカラーリングたライティングが美しくもありながら、どこか不穏で不安を掻き立てるような画作りが特徴と思います。

悪夢の中へ

その意味では過去作のそれぞれのエッセンスを集合したような悪夢的視覚世界を楽しむことができます。

今回の撮影はガーランド監督といつも組んでいるロブ・ハーディ。

もちろん「エクス・マキナ」的なレッドに支配される刺激的空間を捉えたり、また「アナイアレイション」でみせていた自然(植物)と生き物の美しいようなおぞましいような融合も。

正直あんなに自然に囲まれたグリーンの森の中で、別に暗いわけでも天気が悪いわけでもないのに、なぜだか不穏なのはすごすぎると思います。

どこか、ハーパーをつけ狙うように距離を置いて彼女の動きを追う視点、カメラワークなど序盤から居心地悪くて最高でした。

おとぎ話

今作は明確に現実なのか超常現象ものなのか、はたまたファンタジーなのか明言しません。

おそらくそれは、その必要性がないからかと思います。概念としてとらえるべきおとぎ話のように感じました。

この作品をどう受け取ってもいい気がします。

根底にあるテーマは決して曖昧でもなく難解でもありません。

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まず1つはハーパーの夫の死からの逃避とトラウマ、罪の意識による恐怖。

そしてもう1つはこの世に何気なく溢れている男性によるあらゆるハラスメント。

男性は根底的に同じ顔をしている

男性の無意識の、そして女性が確実に感じ取るハラスメント。

今回はそれを機能の一つである同じ顔の男たちを使って演出しています。

宣伝文句では同じ顔の男たちがいる不気味さ、というのが謳われていますが、映画の中でハーパーはそれを言及しないし指摘もしません。

その部分に関して謎を解こうということもない。

あえて議題にならないのです。

それはハーパーにとって結局のところ、どの男たちも根底には同じ傾向を持っているからです。彼女の見ている世界としては個人はあっても男性は似ている。

だから彼女には少しの差はあれド男性はみな同じ顔に見えているということです。

今回この男たちをロリー・キニアが素晴らしい演技で見せてくれます。

ジェフリーに関しても少年も神父も警察官も。それぞれ別の人間として見れるのですが、しっかりと一つの属性である。彼の演技のおかげでしょう。

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股間で考える男たち

男たちの描写は行き過ぎずリアルで頭を抱えます。

何かしらでマウントをとる。取り方はいろいろありますが、共通の目的はひとつ。

支配してヤル。

言葉も態度も変容しますが、結局それ。

誘いを丁寧に断れば汚い言葉を吐き散らす。(断る権利はあるだろうが)

奢るとか言って何かと上手を取ろうとする。(恩着せがましいんだよ)

寄り添うのに膝に手を置く。(触んな)

クソ野郎どもが。」とハーパーが吐き捨てる気持ちもわかります。でもそうやって怒ると今度はヒステリックな女とか言い出すんです。(警官ですら)

ハーパーを囲う恐怖にはこの股間で考えて寄ってくる男たちがいます。

クライマックスの少年のお面。こすれる音を立てますが、完全にされている女性の形になっていました。

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教会のシンボル

表は男の顔であり、その裏にはヴァギナを広げ精子を受け入れる女性の姿があります。

あれこそが男性なのです。

実際のところ、女性の方はシーラ・ナ・ギグというアイルランドの厄除けの像?らしいですね。男性の顔はグリーン・マンというこれまた妖精的なものだとか。

今作での合わせ方は不穏ですが。

ガーランド監督はとくにグリーン・マンのコンセプトにはかなり前からはまっていて、いつか映画にしたいと考えていたようです。

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偉大なるジェシー・バックリー

今作でホラーの中でも素晴らしい偉大なるジェシー・バックリーが見れました。ショートヘアカッコいい。

周囲のモンスターに怖がりつつも、自分自身の中に抱えるモンスターと対峙する。

一人でいることが多いハーパーなのでセリフが少ないですが、所作や表情からただおびえるだけでなく、自分でトラウマを引き出すこと、つまり自分自身を恐れる様がすごかったです。

ちなみに彼女の歌はないのですが、その声が効果的に使われてて良かったです。

教会のシーンでは叫びが音楽とシンクロし、そしてトンネルで発した声がそのまま音楽になる。

斬新なボディホラーと男から生まれるもの

全裸で人に付きまとい家に侵入しようという男を”無害”という世界で、ハーパーは生きる。

彼女にとっての悪夢はこの男性たちと夫の亡霊。

あまりに身勝手なモラハラにDVも入ったくせに、死んでも付きまとって。回想でのケンカシーン、夫の身勝手さに吐き気がしました。

2人が全く同じ画面に映らずに言い合いしている隔絶も巧い。

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脳裏に焼き付く夫の死体にシンクロして変容する男たち。

タンポポの綿毛が重要なモチーフですね。

ひとつとしてはタンポポが単為生殖できること。つまり自分自身で繰り返し子孫を残し続ける(すべては最初のオリジナルのクローンのようなもの)

だから男からは同じ男が生み出される。そこには有害な男性性も継承されていて、結局変わることはない。

もう一つは綿毛が精子を思わせること。

その綿毛をハーパーに吹き付けるシーンは、そのままそういう意図が見えました。

個人的なトラウマと有害な男性性には直接的なつながりが薄くも感じます。

しかし、外のモンスターと内のモンスターいずれとも対峙せねばらならない女性の、サバイバルの物語として昇華されました。

やはり甘美な地獄としてのビジュアルに、ジェシー・バックリーという絶対的力、そして今作で欠かせない輝きを見せるロリー・キニアが合わさり、すごく楽しめるホラーになっています。

最近は女性の生きにくさというテーマがいろいろなジャンルで展開しますが、また一つおもしろい作品に出合いました。

というところで今回はちょっとあれこれと長くなりましたが以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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