「トランスフォーマー/ONE」(2024)
作品解説
- 監督:ジョシュ・クーリー
- 製作:ドン・マーフィ、トム・デサント、ロレンツォ・ディ・ボナベンチュラ、マイケル・ベイ、マーク・バーラディアン、アーロン・デム
- 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、ゼブ・フォアマン、オリバー・デュモント、ブラッドリー・J・フィッシャー、B・J・ファーマー、マット・クイッグ
- 原案:アンドリュー・バレル、ガブリエル・フェラーリ
- 脚本:エリック・ピアソン、アンドリュー・バレル、ガブリエル・フェラーリ
- 編集:リン・ホブソン
- 音楽:ブライアン・タイラー
- 出演:クリス・ヘムズワース、ブライアン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・ハム、スティーヴ・ブシェミ、キーガン=マイケル・キー、ローレンス・フィッシュバーン 他
大ヒットシリーズ「トランスフォーマー」の始まりを3DCGで描いたアクションアドベンチャー。
トランスフォーマーたちの故郷であるサイバトロン星を舞台に、若き日のトランスフォーマーたちの友情や、彼らの持つトランスフォーム能力の起源に焦点を当て、サイバトロン星で繰り広げられる激しい戦いを描きます。
オプティマスプライムの若き頃の声をクリス・ヘムズワースが担当し、メガトロンの声をブライアン・タイリー・ヘンリー、エリータ-1の声をスカーレット・ヨハンソンが担当。
監督は「トイ・ストーリー4」を手掛けたジョシュ・クーリー。
以前北米予告が出てきた際に話題になりましたが、今作は完全フルCGアニメでの長編画トランスフォーマー映画で、これって1986年の劇場版のトランスフォーマー以来のことらしいです。
個人的にはデザイン面とか見ているとG1意識も入っていながらなんかゲーム作品とからのラインも感じていた作品。でも、オライオンとD-16という、サイバトロン星の反映していたころの親友だった二人の話って、すごく重要なピースだと思うので楽しみにしていました。
公開週末に早速行ってきたのですが、感想は遅れてしまった。ちなみに都内で観ましたけど結構混んでいました。TFファンの人も結構いたと思います。
~あらすじ~
サイバトロン星でエネルゴン採掘労働ロボットとして働くオライオン・パックスとD-16。トランスフォームコグを持たず変形ができない彼らのようなロボットは、トランスフォームできるロボットたちからは蔑まれていた。
悔しさをバネに周囲を見返そうと問題を起こすオライオンを、D-16はたびたびかばっており、二人は大親友として夢を語り合っている。
ある時オライオンは救難信号を発見。それはサイバトロン星のエネルゴン枯渇問題の引き金になったクインテッサとの戦争にかかわる映像であり、勇敢なプライムからのメッセージ。
オライオンはそのデータを持っていたB-127、D-16、そしてオライオンのせいで採掘現場をクビになったエリータ1を巻き込み、救難信号の発信源への冒険を始める。
しかしその先には、彼ら全員の運命を変える重大な事実が待っていたのだった。
感想レビュー/考察
大親友の運命の別れを描くとして納得の監督
すでに既知のことですし、予告やら何やらで触れ回っているので、ネタバレでもないのですが。今作はオリジンです。
これまで初代アニメ、「トランスフォーマー」(2007)から始まった実写映画、そしてTVシリーズの「トランスフォーマー プライム」などで、永遠の宿敵として描かれてきた、オプティマス・プライムとメガトロンの過去の話。
これまでにも、互いをかつての兄弟と呼んでいたり、たまに昔に戻って共闘してきたこの2人の有名なトランスフォーマーの、宿命が決定づいた話を描いています。
なので、執着地点としてはオライオンはオプティマスになりオートボットのリーダーでありマトリクスの所有者になる。そしてD-16は破壊大帝メガトロンとなりディセプティコンのリーダーに君臨する。
そこまでの過程を覗いていくので、結末が決まっているタイプの映画なのです。
ということで、二人が実は大親友であったのに、互いに違う道を選んで別れていく。このプロットに対して、ジョシュ・クーリー監督が抜擢されているのは、なかなか納得できるところです。
監督の初長編であり前に撮った作品は「トイ・ストーリー4」なのです。
あれは自由意志をもって人間の所有物をやめるオモチャたちと、人に愛されて生きることを選んだオモチャたちの、避けられない別れの物語でしたからね。
監督自身、「トイ・ストーリー4」でのオモチャたちに人間関係を投影した経験が、今作にも生かされていると語っています。
ではあまりに有名な宿敵の過去の話として、見事だったのかというと、これがもうすごく熱くて深くてせつない。特にここから見てもいいとは思うのですが、シリーズを追ってきた人ほど、好きになれると感じました。
私は、「トランスフォーマー プライム」で少しだけあった(記憶を失った設定とかで)オライオンとメガトロナスの話や、ユニクロンとの戦いのために見事なコンビネーションで共闘するこの二人に大興奮した人間。
実際に二人が兄弟のようにともに働き、会話し、信頼しあってともに進んでいく様を見ていてとても気持ちが良かったです。
今作は長編映画という意味では初めて?人間が介在することなく純粋にトランスフォーマーたちだけで進んでいく物語で、その分フレッシュにも感じますし、より深く複雑にトランスフォーマーの心の旅を描いています。
眺めていて楽しいトランスフォーマーたちの世界
描きこみという意味ではもちろんビジュアルも良いですね。
結構メカニカルではあるものの、いい具合のデフォルメやカラーリングがされているので見やすいです。
序盤はサイバトロン星の大都市の中でのチェイスとか、地上での列車での移動、廃墟となった洞窟からスタースクリームたちの隠れ家などステージにもカラーやテイストにかなり違いがあり変化が楽しかったです。
またそれぞれの造形面ではG1味を感じたり、最初の採掘ロボ状態に比べて、コグを手に入れてからは皆メタリックカラーになりますが、そこにハイライト加工みたいなものが細かくあることでより質感が高まります。
あと、メタリックカラーでフル塗装された実際のトランスフォーマーのおもちゃの質感みたいなものも感じました。
ところどころにオマージュ要素や小ネタがあるのも見ていて楽しい点です。「トランスフォーマー THE MOVIE」での有名な、スローモーションで飛び上がりながら射撃するオプティマスの絵が、ここでも再現されていたのは熱いです。
神話へ
オライオンとD-16はコグを持たず、阻害されてきた。それぞれに憧れがあるものの、この世界に居場所がなかったのです。
センチネルの嘘によって何もかもが崩れ去った時、それは信条を失いこれまでの全てが壊れたことでもあり、また同時に、無価値に生まれたものなんていないことが証明された希望であり。
複雑な状況で、二人の親友は離れて行ってしまう。長い旅路を共にしながら変化していく点や、過去の大戦が絡んでいるなど、とても神話的で叙事詩的。
さらに二人の、どちらの意見も理解できる複雑さ、善悪の曖昧さは「猿の惑星:新世紀」のシーザーとコバにも通じるようなところが見受けられます。
センチネルが実はプライムですらなく、彼の性で奴隷のような人生を送っていたことを知った時、オライオンは真実を告げることを第一に考えます。民衆を目覚めさせること。
彼は民衆の自由意志を尊重し希望にかけている。
一方でD-16は周囲のことではなくて、自身を縛ってきた嘘による枷を見つめている。そしてセンチネルへの復讐心だけを胸に抱くようになる。
オプティマス・プライムとメガトロンという宿命
オライオンは裏切者のセンチネルすらかばうことになり、そこで一瞬D-16は落下するオライオンを掴む。しかし、本当に彼は自分自身のことだけを考えるようになり、その手を放してしまう。
オライオンがオプティマス・プライムに覚醒するシーン、そして一方でD-16が破壊大帝メガトロンになる。最高にカッコいいし歴史的瞬間であり、後戻りできない悲しさと切なさがあります。
もうオライオンとD-16でいることはできない。オプティマス・プライムとメガトロンという宿命が彼らの目にあるのです。
これまで幾度となく描かれてきたオプティマスとメガトロンの過去。反映する美しいサイバトロン星の美術や人間が介在しないことによりまさにドラマを深く掘り下げることのできたトランスフォーマー映画。
ファンなんでひいき目に見てしまいますが、非常に重要な作品になっていると思いました。アニメーション表現として視覚的にも楽しめるのでおすすめ。
今回の感想はここまで。ではまた。
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