「トランスフォーマー/ビースト覚醒」(2023)
作品解説
- 監督: スティーブン・ケープル・Jr
- 脚本:ジョビー・ハロルド、ダニエル・メテイヤー、ジョシュ・ピータース、エリック・ホーバー、ジョン・ホーバー
- 音楽:ジョングニック・ボンタン
- 撮影:エンリケ・シャディアック
- 編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ、ジョエル・ネグロン
- 出演:アンソニー・ラモス、ドミニク・フィッシュバック、ロン・パールマン、ミシェル・ヨー、ピーター・カレン、ピート・デイヴィッドソン、ピーター・ディンクレイジ 他
タカラトミー、ハズブロの変形玩具トランスフォーマーの実写映画シリーズ最新作。
マイケル・ベイにより製作されたシリーズへの前日譚として作られた、トラヴィス・ナイト監督の「バンブルビー」。
今作はその続編という位置づけとなり、バンブルビー主人公であった前作から、全面的にトランスフォーマー主軸となり、またタイトルにもあるように「ビースト・ウォーズ」から動物に変形するトランスフォーマーたちが参戦します。
監督は「クリード 炎の宿敵」のスティーブン・ケープル・Jr。
声の出演には「ドライヴ」などのロン・パールマンがゴリラのロボットプライマルを、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のミシェル・ヨーがハヤブサのトランスフォーマーを演じ、そして強敵スカージにはピーター・ディンクレイジが声を当てています。
人間側の主人公は「イン・ザ・ハイツ」のアンソニー・ラモス、また「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」のドミニク・フィッシュバック。
前作の「バンブルビー」以降、続編があること自体は発表されていましたが、その後に「ビースト・ウォーズ」のキャラクターが登場すると報道されました。
「ビースト・ウォーズ」はすごく小さいころにTVでやっていたのは覚えています。ほとんど観たことはないんですが、チーターのおもちゃを買ってもらった記憶はありますね。
公開週末は体調を崩していたので次の週に。しかし他の作品に押されて箱が小さい・・・IMAXなんて夜の回1回だけになってましたし。
入り自体はお盆もあってそこそこですが、トランスフォーマーの位置づけもだいぶ落ち着いたのだと思いました。
~あらすじ~
太古の昔、遠い銀河系で。
暗黒の神ユニクロンはその巨体を維持するために、宇宙を移動しては星々を喰い尽くしていた。
ユニクロンはある惑星に侵攻し自身の最強の配下スカージを送り込み、時空間移動を可能にするワープ装置を手に入れようとする。
しかし星の守護者エイプリンクの犠牲と、彼の遺志を継いだオプティマス・プライマルによりその野望は阻まれた。
プライマルは仲間たちと地球に逃れ、それから時が流れた。
1994年。病気の弟のために仕事を探すノア、考古学者になるためにインターンをしているエレーナ。
2人は潜伏中のオートボットとの接触、そしてプライマルが持ち込んだワープ装置を発見したことで、壮大な戦いに巻き込まれていく。
感想レビュー/考察
予習不要
実写トランスフォーマー映画シリーズも現段階で結構複雑なことになっていますが、今作を見る上で私はまず予習は不要じゃないかなと思っています。
すくなくともマイケル・ベイによる「トランスフォーマー」(2007)~「トランスフォーマー 最後の騎士王」(2017)は観てなくても何も問題ないですし。
一応は前作となっている「バンブルビー」(2018)もまあ観ていなくても大丈夫なくらい新しいお話になっています。
まっさらな中で事の始まりからマクガフィンを示し、その後順当に人間側の2人の紹介に移っていく。
オートボットの登場については確かに唐突でしょうけれど、その辺はノアとエレーナへの説明が同時に観客への背景説明になっています。
総じて、一つの作品として話自体はまとまっていて、昨今の他作品からの引用や依存もなくてすっきりはしています。
そのうえで言いますが、「バンブルビー」よりは散らかっていて、しかしマイケル・ベイの作家性のような想像しさはない、そこそこなバランスの取れた作品かと思います。
ヒップホップ映画としての面
作品全体は、ヒップホップを出自にする監督らしく90sの楽曲がたくさん使われています。
歌詞の意味もシーンや人物説明に重なっていたりで構成はうまいですね。
ウータン・クランのC.R.E.A.Mでノアの金欠具合を重ねてたり。
やはりクライマックスバトルのLL・クール・ J のMama Said Knock You Outはアガります。
もっと詳しければいろいろと楽曲の編集方なんかも楽しめるんじゃないかと思いますね。
キャラクター数は程よい
やはり作品が重なると登場する人物、そしてトランスフォーマーたちは増えていきます。
もちろん、薄さというモノは感じますが、それでも程よい数とそれぞれへの印象的なシーンの提供によってバランスはとれています。
はじめのうちからユニクロンという敵は隠さず、スカージを強敵として結構ホラー演出で描きます。
個人的にはオプティマス・プライマルが推し。
ゴリラロボットのファーの感じとメカの融合デザインが秀逸な彼ですが、ロン・パールマンボイスの渋さも良い。
今作の中で非常にエモーショナルな旅をしています。
エイプリンクとの約束、その後のエアレイザーとの顛末。自分の種族を守るリーダーのはずだったが、人間を守るために行動した。
フィニッシュの仕方が、最愛の友人へのハグみたいにも思えて泣けました。
利他的な行動にこそ英雄が宿る
プライマルが他種族と共存する姿を示す中で、比重に差はあれど今作は各種族に対比する人物を置いた構造が目立ちます。
そこには人種差別の横行している1994年の設定も寄与していると思います。
人間としてはノア、エレーナは人種差別によりキャリアを阻まれている、ノアは自分の弟を最優先に行動しています。
この姿はオプティマスにも重なり、彼もオートボットのために行動し、そして長男であるノアが弟を気にかけるように、彼はバンブルビーを気にかけています。
それぞれがそれぞれの利益に対して向いてる。だからこそ対立と分散が生まれテラーコンに勝つことができないのです。
スカージもまた、自分の保身のためにユニクロンに協力し、他種族を滅ぼし続けています。
そんな中に先ほどのプライマルのような利他的な行動を見て、そして人間と協力して友人になることを選ぶミラージュを見て、ノアもオプティマスも変化していく。
はじめはグータッチをミラージュからやっていたのが、最終決戦ではノアの方からやるのも熱い演出。
1つになり、誰かになる
今作は特にクライマックスが盛り上がりますが、それはこれまでの映画シリーズ以上に”統一”が達成されているからかと。
ノアのために犠牲を払うミラージュ、そこからついにノアは、ただ比較背景のように存在する人間ではなくて実際に一緒に戦うことになる。
この時、誰しもが自分ではなく他者のために戦っているのです。
ナイトバードごとバンブルビーを撃ってるスカージには、この団結したチームには勝てないわけです。
何物でもなかった者たちがみな戦士になる。
”インターン”、”君みたいな者”、”プライマスの恥”。
それぞれがエレーナ、ノア・ディアス、そしてオプティマス・プライムなのです。その真価を見せて敵をねじ伏せる姿に痺れます。
最終幕、オプティマスをノア、プライマルが助けるところは各種族のリーダーの助け合いで熱く、ここぞとばかりにスティーブ・ジャブロンスキーによる往年のテーマがものすごくエモーショナル。
全体にはスムーズでない点とかご都合主義的な面、各人物の掘り込みが浅く感じることはあります。
しかし終幕の盛り上がり方は素晴らしく、なにより異なる種族同士が手を取ることで大きなものを乗り越えるドラマは根本として嫌いになれません。
なかなかのサプライズなんかもありますが、コンパクトになりつつ騒がしさもメカのかっこよさも忘れず。
またビーストたち、ノア、オートボットの闘いがみたいところ。今のG1デザインラインでのメガトロンもまだ登場していないので、今後観たいとも思います。
今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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