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「サンキュー、チャック」【ネタバレ感想】死を見つめ、それでも生を愛する映画

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「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想 映画レビュー
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作品解説

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

スティーブン・キングが2020年に発表した短編小説「チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ」を原作に、「ドクター・スリープ」マイク・フラナガン が監督・脚本を手がけたヒューマンミステリー。

世界の終末と、一人の男“チャック”の人生が交錯していく不思議な物語を、幻想性と温かな人間ドラマを交えながら描き出していきます。

主人公チャールズ・“チャック”・クランツを演じるのは、「アベンジャーズ」シリーズの トム・ヒドルストン

共演には、「それでも夜は明ける」キウェテル・イジョフォー「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの カレン・ギラン「ワンダー 君は太陽」ジェイコブ・トレンブレイ「スター・ウォーズ」シリーズの マーク・ハミル

また、「ラ・ラ・ランド」の振付師 マンディ・ムーアがダンスシーンの振り付けを担当。2024年・第49回 トロント国際映画祭 では最高賞にあたる観客賞を受賞しています。

スタッフ

  • 監督:マイク・フラナガン
  • 製作:トレバー・メイシー/マイク・フラナガン
  • 原作:スティーブン・キング
  • 脚本:マイク・フラナガン
  • 撮影:エベン・ボルター
  • 美術:スティーブ・アーノルド
  • 衣装:テリー・アンダーソン
  • 編集:マイク・フラナガン
  • 音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ

キャスト

  • チャールズ・“チャック”・クランツ:トム・ヒドルストン
  • マーティー・アンダーソン:キウェテル・イジョフォー
  • フェリシア・ゴードン:カレン・ギラン
  • アルビー・クランツ:マーク・ハミル
  • 若き日のチャック:ジェイコブ・トレンブレイ
  • 幼少期のチャック:ベンジャミン・パジャック

そこまでの注目作品ではないと思いましたが、ダンスシーンが非常に評判が良いことと、海外評で褒め意見を結構見ていたので、連休中に鑑賞してきました。

GW期間中ということもあったので結構激情も混んでいて、私の言った上映会もかなり席が埋まっていました。

~あらすじ~

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

未曾有の自然災害と人災が立て続けに発生し、世界は静かに終末へと向かっていた。

インターネットやSNSも機能を失い、人々が不安に包まれるなか、街頭広告やテレビ、ラジオに突如として「チャールズ・クランツに感謝を。素晴らしい39年間をありがとう」という不可解なメッセージがあふれ始める。

高校教師のマーティーは、疎遠になっていた元妻フェリシアに会うため崩壊寸前の街へ飛び出す。

しかし、人影の消えた街は“チャック”と呼ばれる謎の男への感謝広告で埋め尽くされていた。

再会を果たしたマーティーとフェリシアは、終わりゆく世界の夜空を見上げながら静かに手を重ねる。

物語は、“チャック”ことチャールズ・クランツの視点へと切り替わり、彼の人生をさかのぼっていく。

感想レビュー/考察

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

“ホラーの帝王”が描く、人間讃歌の物語

スティーブン・キングと言えば、「シャイニング」や「IT」などが有名。

ホラー界の帝王としても語られる彼ですが、今作は彼が温かな人間讃歌を描く作家であることを思い出させてくれます。

ホラー作品にばかり注目がいきがちですが、スティーブン・キングはあの「ショーシャンクの空に」や「スタンド・バイ・ミー」の原作者でもある。

映画史に残るそれらの作品は、人が生きることの苦しさと切なさと、それでも輝く強い光を描いています。

今作は真に恐ろしい恐怖も描かれます。怖いことというのは人生につきものだから。ただそれは悪霊にまつわるものではありません。

そしてその根底にはやはり、人の出会いであるとか、人生の素晴らしさ、人間讃歌に溢れているのです。

世界の終わりから始まる、“人生”の物語

今作はこのコンセプトが非常に重要でして、実際のナラティブは表層的な役割であると思います。

チャックとは何者なのかであるとか、なぜ広告が?人類は滅亡する?などの謎を解き明かすものではないですし、解決する課題があるわけでもないです。

私としてはだからこそ、チャックという媒介を通して観客全員が自分の人生に向き合い、世界と自分と周りの人間と、生きることに安らぎを見出すものだと思いました。

映画は3幕の構成ですが、時系列としては逆順になっています。

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

まず最初に観客が目の当たりにするのは、この世の終わりです。

キウェテル・イジョフォーが演じている学校教師が、クラスで授業を教えていると、全員に自信通知が来る。それはカリフォルニアでの大地震と大陸の一部の消失というとてつもない災害です。

しかし、初めてのことではないようで、生徒たち含めて大パニックではなく、どこかあきらめの混じったような反応も見せます。

異常気象とか言っていられないレベルの大災害が地球を襲っていて、インターネットは遮断。テレビでもニュースなどが断ち切られてしまい、古い映画の放映が映る。

このあたりは誇張はしているけれど、昨今の地球環境や各国での異常気象、日本での機構など見てもちょっと生々しい延長線上の姿が見えてしまい、結構怖かったです。

ミステリー的に、なぜかそこかしこに「ありがとう、チャック。39年間の素晴らしい人生」という広告がそこかしこに現れるのですが、誰もこの男が何者なのか分からない。

皆があきらめの中、人間は終わりの瞬間にこそ大切なものを見つめる、そんなストーリーが進んでいく。

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

マクロな宇宙と、一人の人生の一瞬

そして映画は第2幕になり、トム・ヒドルストン演じるチャックが登場します。

しかし、彼の人生を振り返ると言ってもそのすべてではない。第2幕に関しては彼の人生のほんの一瞬に過ぎない。それはまるで、この宇宙の誕生からすれば人類の歴史なんて数秒だという、あの話のようです。

大きな宇宙の中の一瞬の地球。地球の歴史の中の一瞬の人類史。そして人類史の中での数多のうちの一人であるチャック。チャックの39年の人生の中でのある一日。

今作は宇宙と世界の終末というとてつもないマクロから、個人の一生のうちのある瞬間という非常にミクロなスケールに移しこんでいく。そしてそこで個人と世界を繋いでいくのです。

チャックは会計士であり、特に面白味がある人間でもない。しかし、ストリートパフォーマーでドラムをたたく少女の音色で、脚を止め踊りだした。

彼の中で流れていた生きていた証、彼と世界がつながる瞬間があったのですね。

圧巻のダンスシーンが映し出す“生の輝き”

中盤のダンスシーンは見事なもので作品の白眉にあたります。この映画のためにダンスの訓練をしたということもあって、すごいクオリティで素敵なんです。

エネルギッシュで喜びにあふれていて、美しい。なんというか芸術としてのダンスを極めているんじゃなくて、感情の表現として、身体を通しての感情の発露としてのダンス。

失恋した女性と仕事帰りの会計士、駆け出しのパフォーマー。個人ではなく、この他人との間に生まれる一瞬のきらめきや感情に共感できます。

明るめでも傾き始めた日差しに、お別れと。そしてマジックアワーに染まる街角。特定の人物の人生ではあるのですが、なぜか自分が感じたことのある空気や肌に触る風をスクリーンを通して感じました。

「サンキュー、チャック」"The Life of Chuck"2024映画ネタバレ感想

“死”を知っているからこそ、人は生きていける

最終幕はチャックが子どもの頃になります。幼少期に両親を亡くし、総父母と暮らした彼は、祖母の影響でダンスを覚え、ダンスクラブに入る。

この少年期を演じているベンジャミン・パジャックくんがまた素晴らしいですね。これまで声優だったりショートフィルムに出演はしているようですが、今作が長編は初めてかな?

一見すると大人しく平凡に見えるチャックと、内に秘めているダンス、喜びのエネルギーを両方うまく表現していました。

脇にいるマーク・ハミルも良い味わいですし、屋根裏部屋をめぐるあたりはキングらしい不安と怖さがあります。

そして3幕目あたりで、これまでの人物がそこかしこに顔を出しながら、今作のコアの部分があらわになります。

世界はすべてあなたの中にある。観てきたものも観るものも、出会った人も出会う人も。全部自分の中にある。

あの屋根裏部屋の秘密は、そこに人の人生の最期が現れることでした。誰かの死、自分の死。

全人類全てが、死に向かっている。いつ生まれようとも、宇宙ですら、産まれたものは死に向かっているのです。今作は死んでいく人が多い。そこかしこに人の最終的に行きつく先が置かれています。

それが恐れていること。みんな生まれた瞬間から、自分の死を待っている。待っているのは最も恐ろしい。

でも、だから人生に意味がないってことはない。終わりを迎えるまでの輝きは必ずある。

世界の終末を通して、“人生肯定”を描く人間賛歌

大宇宙の消滅というマクロから、一人の男のほんの少しの時間というミクロに落とし込み、この世界と個人を見事につなぎながら、人生の全てを肯定する。

マイク・フラナガン監督がキングの人間賛歌を見事に映像化し、記憶に残る暖かで美しいダンスシーンをもって輝く作品でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

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