「アウトロー」(1976)
- 監督:クリント・イーストウッド
- 脚本:フィリップ・カウフマン、ソニア・シャーナス
- 原作:フォレスト・カーター
- 製作:ロバート・デイリー
- 製作総指揮:ジェームズ・ファーゴ、ジョン・G・ウィルソン
- 音楽:ジェリー・フィールディング
- 撮影:ブルース・サーティース
- 編集:フェリス・ウェブスター
- 出演:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、チーフ・ダン・ジョージ 他
西部劇スター出身で、自身でも監督をしているイーストウッド。しかしいつも昔ながらの西部劇要素を使いつつ、それを脱構築した西部劇を創り出しています。
今回は南北戦争を背景にした復讐劇ですが、やはり普通と違い様々な要素が絡む名作と思います。
ちなみにオープニングテーマ曲がアカデミー賞作曲賞にノミネートされました。軍歌のような牧歌のような軽快な音楽に、どこかノスタルジーを感じるもので、私もiPodに入れてます。
南北戦争下、北軍の名のもとに”レッド・レッグス”が各地で略奪を繰り返していた。農夫であったジョージ―・ウェールズは彼らに妻子を殺され、家も焼き払われる。
復讐を誓い、南軍ミズーリのゲリラ部隊に加わったジョージ―はその早撃ちで名を馳せていく。
戦争は終わり、ミズーリの部隊も北軍に投降を決意するが、ジョージ―だけは従わない。
そして北軍は約束を無視し、投降した南部民を皆殺しにしてしまう。
その場に駆けつけ、負傷した若者をなんとか助け出したジョージ―。そして北軍に追われながらも復讐を忘れない旅が始まる。
北軍から逃げながら、広大な大地を旅するので、すごくいい西部の景色が堪能できるのは魅力でしょう。
またイーストウッドのカッコよさも健在。早撃ちガンマンのキャラは持ち味なので、今まで演じたキャラの要素を出しつつ、ジョージ―らしさもあります。
基本的に態度は悪く、誰も好きにならない。だから逆に特定のやつをひいきしたり嫌うこともない。それがジョージ―・ウェールズです。
旅の中で元インディアンの首長やら犬やらインディアン女、南部の商人と廃れた街の人々など。様々な人がジョージ―と一緒になっていきます。疑似家族ができていくわけですね。
そんな人間模様な優しいおかしさもあり楽しめますし、ジョージ―の復讐鬼の心に響いていくわけです。
別に人助けがしたいわけではないジョージ―ですが、悪いことをしている奴が気に入らない。
苦しい記憶がそうさせるのか、人を虐げる無法者が憎いので撃ち殺す。結果として救われる人もいるので旅仲間が増えていきます。
自身も逃げている身、ほかの連中も行くあてのないものばかり。そんな人が集まって支え合っていきます。
そして偉大な原住民と衝突しかけるジョージ―達。しかしここで彼は戦わず、平和の生を誓います。殺し合えばそれまで、だが本物の生を知るものは同じ同志と生きる選択をする。
インディアンの首長は白人に騙され続けてきましたが、このジョージ―の心からの言葉を信じます。
いままで、特に昔であればあるほど、西部劇ではインディアン=悪役でした。
しかしイーストウッドは彼らを勇敢で尊厳ある存在として、そして白人の侵略と勝手な戦争の被害者として描きました。「ダンス・ウィズ・ウルヴス」(1990)より前に、インディアンとの平和的接触を見せているわけです。
タイトル、アウトロー。そう聞くとどうも無法者たちが暴れまわるのが想像できますが、この映画ではアウトローのまた違う意味を扱っています。
旅であった人すべて「アウトロー」、つまり法の下で保護を受けない者たちなのです。南部の人、インディアンなど戦争で苦しみ、弱くても何にも守られていない。
そんなとき、彼らを守ったのが同じアウトロージョージ―・ウェールズだったのです。
ジョージ―の台詞のように、南北戦争でアメリカ人は少し”死んだ”のでしょう。確実にこうした傷を残しています。
イーストウッドらしく弱いものに焦点をあて、暴力の結果を歴史を交えかつ得意の西部劇で仕上げた傑作と言えるでしょう。おススメの作品です。
そんな感じでおしまいです。この先もイーストウッド作品、まだまだレビューを書きたいです。
ではまた!
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