「チャーリーズ・エンジェル」(2019)
- 監督:エリザベス・バンクス
- 脚本:エリザベス・バンクス
- 原案:エヴァン・スピリオトポウロス、デヴィッド・オーバーン
- 原作:アイヴァン・ゴッフ、ベン・ロバーツ『チャーリーズ・エンジェル』
- 製作:エリザベス・バンクス、マックス・ハンデルマン、エリザベス・カンティロン、ダグ・ベルグラッド
- 製作総指揮:ドリュー・バリモア、レナード・ゴールドバーグ、マシュー・ハーシュ、ナンシー・ジュヴォネン
- 音楽:ブライアン・タイラー
- 撮影:ビル・ポープ
- 編集:メアリー・ジョー・マーキー
- 出演:クリステン・スチュワート、ナオミ・スコット、エラ・バリンスカ、パトリック・スチュワート、サム・クラフリン、エリザベス・バンクス、ジャイモン・フンスー、ジョナサン・タッカー 他
1970年代後半から80年代前半にかけて人気を博したTVシリーズ「チャーリーズ・エンジェル」の実写映画化作品。2000年にも実写映画化され、2003年にはその続編も製作されています。
監督は女優として活躍するエリザベス・バンクス。
またエンジェルズとしては最近は大作から離れていたクリステン・スチュワート、そしてまだまだ長編映画経験は少ないイギリス出身のエラ・バリンスカ。
そして彼女たちと行動を共にすることになる女性を「アラジン」でスターになったナオミ・スコットが演じています。
このタイミングでのエンジェルズ復活ということで、かなり社会的な意味合いを感じたこと、また久しぶりにですがこうしたビッグバジェット系でクリステン・スチュワートが観れること、そのあたりに興味があったので観てきました。
うーん、正直人の入りはいまいちでしたね。
秘密結社のエージェント、通称”エンジェル”として活躍するサビーナとジェーン。
あるとき、超ハイテクエネルギー生成装置「カリスト」を開発する女性から、企業の内部告発があった。
エンジェルたちをまとめるボスであるボスレーは告発者であるエレーナから、その装置は電子パルスにより兵器化できる欠陥があると知らされる。
まずはエレーナの身柄と彼女の持ちだした研究データを保護しようとするが、なぞの暗殺者に襲撃を受け、追走劇の末ボスレーが志望、エンジェルたちも一時隠れ家に身を寄せることになる。
カリストの闇市への出品と暗殺の黒幕を突き止めるために、エレーナを加えてサビーナとジェーンは新たな任務に就く。
チャーリーズ・エンジェルと聞くと、個人的には世代もあってか2000年代の映画が印象深いです。
キャメロン・ディアス、ルーシー・リュー、ドリュー・バリモアの3人に比べると今作のキャストはやや若くなっており、ちょっと大人のセクシーさはなくなった印象。
しかし、エンジェルたちがそれぞれ個性的で魅力があるという点では、しっかりアイドル映画というか、役者たちを光らせている点でとても良かったと思います。
クリステン・スチュワートがしょっぱなから大画面でこっち観てる大写し、ヒョウ柄セットアップになにしろ髪型がカッコよすぎる。
エラ・バリンスカは彼女のスタントをほとんど自分でやっているとのことで、アクションの完成度も高くしなやかでクール。
そしてナオミ・スコットはダメかわな感じで、今作では唯一の一般人視点でコメディも交えつつ、やるときはやる意地をみせてくれます。
様々なロケ地で、いろいろな衣装に身を包み展開されるスパイアクションとしては、エンジェルたちとルックを存分に楽しめると思いました。
ちなみにファッションの点でいうと、非常にクールな悪役(T-1000のロバート・パトリックをパンクにした感じ)を演じたジョナサン・タッカーが良いですね。
グレイチェックベストを着こなし、バーガンディの上下セットアップでばっちり決めるスタイル、真似したい。
今作はアクションの面でもとても楽しめました。
やはり昨今の流れを汲んだアップグレードがされており、近接格闘に関してはかなりタクティカルなものになっています。
またカーチェイスに関してもワイルドスピードのような馬力や火力ありになっていて、全体にかなり硬派です。
そしてそのアクションの硬派な作りに驚いた点は、それ自体が鋭い意味合いを持っているとも感じました。
サビーナはOPで女であること、しかも外見を使うことによるアドバンテージを語ります。そして相手が女性であるが故の油断というのは、女性を無意識に下にみているからだと。
カーチェイスも格闘もアクションとして見ごたえがあったのは事実です。
予告から「アトミック・ブロンド」のような感じがなかったとはいえ、女性であるから華やかで見た目重視だろうなど、勝手な思い込みをしていた自分をすこし恥ずかしく思いました。
今作のエンジェルには一切男性へのアピールはありません。
以前の実写映画化では、よく男性があの3人の中なら誰が好きだとか、付き合うなら誰だとか話しているのを耳にしましたが、今作においてそんな話題は出ないかと思います。
きっぱりと、誘惑は武器と機会を生み出す手であると断言し、今作のエンジェルたちは女性、女の子たちのためにいると思うんです。
一度たりとも男性のために動くことがないですし、男が軽薄にも想像するクローゼットシーンも、目線は女性だったと思うんです。
個人的にはクライマックスが最高に好きです。
結局は手足であり、交換可能であり、指揮権もパワーも男性が握っていると誇示するような状況から、一転し場の支配権は女性たちに。
実行し世界を動かしていたのも、パワーを持つのも、そして指揮を取っていたのも全て女性たちだった。
この逆転は悪役が、エンジェルたちもボスレーも、すべての女性を下にみていた慢心が生んだもの。金持ちパーティに呼ばれた若いダンサーとか、その場を飾るための美人たちと舐めていたわけですから。
一瞬の逆転はカタルシスに溢れていて本当に気持ちが良かったです。世界中に、パワフルで活躍している女性がいっぱいいるのですから。
エリザベス・バンクス監督は絶妙なバランスを取ったと思います。
女性主役のアクションものでありながら、それを男性的な世界、つまり暴力性や飛び抜けたスタントへは向けず、独立しアップグレードしたパワフルな女性を描く。
しっかりと見た目を使ったギミックを入れ込み、油断や先入観を(観客含めて)巧く使い、最後には楽しく華やかさを忘れず女性のエンパワーメントに。
エンジェルは3人じゃなくたくさんいる、そして国際組織になっている。それはシリーズの延長としての進化でありまた必然であります。OPすぐの”How It’s Done”に重なる世界中の女の子たちが好きなことをのびのびやっている映像。
このアップデートが当然のことと分かりますね。世界中にエンジェルがいるんですから。
あのシーンはメインキャストも出ていない部分ですが、一番多幸感にあふれ涙が出る好きなシーンです。
20年ぶりに帰ってきたのは、世界中の女性を鼓舞し、あこがれの対象になるエンジェルたちが輝く作品でした。
個人的には非常に楽しめた作品ですので、是非。あとTVシリーズや以前の実写作品は観ていなくても大丈夫です。
今回の感想はこのくらいになります。それではまた。
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