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「モンスターズ 悪魔の復讐」”Lizzie”(2018)

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映画レビュー
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「モンスターズ 悪魔の復讐」(2018)

作品概要

  • 監督:クレイグ・ウィリアム・マクニール
  • 脚本:ブライス・カス
  • 製作:クロエ・セヴェニー、ナオミ・デプレ
  • 音楽:ジェフ・ルッソ
  • 撮影:ノア・グリーンバーグ
  • 編集:アビー・ジュトコヴィッツ
  • 出演:クロエ・セヴェニー、クリステン・スチュワート、フィオナ・ショウ、ジェイミー・シェリダン、キム・ディケンズ、デニス・オヘア 他

アメリカ犯罪史上に残る未解決猟奇殺人事件を新たな解釈をもとにして描かれたクライムドラマ。

監督はクレイグ・ウィリアム・マクニール。

殺人の容疑を変えられつつも無罪となったリジー・ボーデンを、「荒野にて」(2017)のクロエ・セヴィニーが演じ、また今作では彼女と親しい中となる召使いマギーとして、「パーソナル・ショッパー」(2016)などのクリステン・スチュワートも出演しています。

サンダンスでの公開の際に、予告があがってきて観て以来、いつか見てみたいなと思っていました。

まあ単純に最近どんどんすごくなっているクリステン目当てだったのですが。

日本公開がよくわからないので、海外版ブルーレイを輸入して鑑賞。

※「モンスターズ 悪魔の復讐」というタイトルで日本での限定公開が決まりました。

~あらすじ~

1892年。アメリカ、マサチューセッツのリバーフォールで、地元の名士であるアンドリュー・ボーデンと彼の妻アビーが惨殺されるという事件が起きた。

事件の容疑者となったのは、娘のリジー。遺産についての家族間のもめ事や、彼女に事件当時にアリバイがなかったことが要因である。

リジーは逮捕され、そこで事件にいたるまでの経緯が振り返られる。

強権的である父との確執、一家に召使として働きに来ていたブリジット・サリバンとの関係。

閉鎖的な家という舞台でのリジーの心境が描かれていく。

感想/レビュー

私は実際のリンジー・ボーデンにまつわる噂、そしてボーデン夫妻の惨殺事件はあまり詳しく知りませんでした。

マザーグースの残酷な童謡でちらりと触れられている記憶がある程度。

この作品は未解決事件であるボーデン夫妻惨殺に対し、多くの資料や記録をもとに再現をしつつ、しかし本質の部分ではひとつの視点を与えたというもののようです。

未解決事件なんですから、「こうだったんじゃないか?」っていうことは忘れずに。

で、今作で与えた視点というのは、まあ”現代的な視点”といえばいいのでしょうか。

男性主権的な社会での女性の逆襲や、同性愛者というマイノリティを話の根幹であるリジー・ボーデンの描写に盛り込んだ今作。

その点だけでいうと、クロエ・セヴィニーとクリステン・スチュワートの演技によってとても切なく魅力的なドラマにはなっているかと思います。

クロエ自身この作品に制作として参加しておりますが、かなりリジー・ボーデンの映画化を熱望していたようです。

フェミニズム映画としてみれば、確かに今作に出てくるたった二人の男性はどちらもゴミ人間です。

作品内で父アンドリューはリジーに対し抑圧的かつ精神虐待を加え、召使のブリジットには性的暴行を加えています。

母を失くして悲嘆するブリジットに迫るシーンは胸糞悪すぎてやばかった。

もう、その人の心境とかほんとどうでもよくて、性欲発散の道具としてしか思ってないってことですからね。

叔父にあたるジョンも、今作では力がないくせに男の意地みたいなものだけ持ってる最低人間です。

そんな男性社会、抑圧の中で、女性はみんな所有物です。

リジーではなくあくまでアンドリューの娘、ブリジット・サリバンではなくマギーという召使なのです。

彼女たちを映し出す撮影では、非常に窮屈な画面構成が印象に残ります。

画面占有率がひくく、隅に追いやられ、その他の部分は埋め尽くされる窮屈さ。

また彼女たちの恐怖と緊張が、音を使って効果的に共有されていました。

古い木造の屋敷ですから、歩くたびに床がきしむんですよね。その音やドアノブを回す音、それだけで気分が悪い。

ひとつの家という閉鎖社会をうまく舞台として使っていたと思います。

それで、この作品がそういった女性の逆襲視点、同性愛という要素を実在の事件に投影したそれ自体は楽しかったのですが、同時にこの作品は、リジー・ボーデンが真犯人だったとして、その動機だけでなく謎に包まれた殺害方法まで見せていきます。事件当日の再現ですね。

私としてはそれが余計であり、最終的には殺人の真相を細やかに推理したいのか、それとも抑圧された女性と悲しい愛の物語にしたいのか不明瞭になってしまったという印象です。

もちろん、全裸で斧を持って部屋の隅にいるクロエも、あまりの恐ろしさに怯えまくるクリステンも迫力と演技が素晴らしいのは間違いないですが。

クリステンは「パーソナル・ショッパー」の時も見事な怯えを見せていましたが、今回のもすごいです。怖すぎて吐きそうになっているあの感じホントすごい。

押しつぶされそうな環境の中で、傷ついた者同士がひかれあうという点では、ドラマとして好きな部類です。

全体に暗めで重苦しいショットの多い中、リジーの部屋だけが純白にそしてライトも明るめで聖域のように映し出され、二人の逃げ場であったあの納屋が愛し合う場所となります。

今作はクロエとクリステン、そしてモノトーンにも感じる色調や音の演出により楽しめますが、全体的な構成としては、リジーという女性に与えられた現代的な視点が、完全犯罪物の再現ドラマに引っ張られてしまった気がします。

あえて殺害の詳細に関して省き、二人の女性にしぼることもできたのでしょうけれど、そうなるとそもそもこのリジー・ボーデンを描く必要性もなくなってしまうというのが苦しいところかもしれません。

ひとつの事件に対して新しい解釈や視点を与えている点では、とても現代を感じる作品です。

過去に対しても今の目を向けることは、非常に興味深いドラマが生まれるのだと感じます。

女優のシャープな演技とダークトーンに包まれうつくしく構成された撮影を楽しんでほしい作品です。

感想としてはこんなところです。日本での公開は現時点では未定になっているのですが、規模的には公開は厳しいのでしょうか。

どうにか一般公開まで行ってほしいです。もし興味があれば、すでに海外版のソフトは安めに手に入りますので観てみてください。

それでは。

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