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「バクラウ 地図から消された村」”Bacurau”(2019)

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bacurau-brazilian-movie-2019 映画レビュー
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「バクラウ 地図から消された村」(2019)

  • 監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアノ・ドルネス
  • 脚本:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアノ・ドルネス
  • 製作:サイード・ベン・サイード、ミヒェル・メルクト
  • 音楽:マテウス・アウヴェス、 トーマス・アウヴェス・ソウザ
  • 撮影:ペドロ・ソテロ
  • 編集:エドゥアルド・セラーノ
  • 出演:ソニア・ブラガ、バルバラ・コーレン、トマス・アクィナス、シルベロ・ペレイラ、カリーヌ・テレス、ウド・キア 他

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ブラジルの映画監督クレベール・メンドンサ・フィリオが、ジュリアノ・ドルネスと共に不可解な出来事と謎のよそ者に襲撃される村を描いたミステリースリラー。

監督はTIFFでも公開され、世界各国で高い評価を得た「アクエイリアス」を撮った方ですね。そういえば観ていました。

そちらでも見えてくる乱暴かつ腐敗した体制への反抗は今作にもみてとれます。

また、そちらにも出ていたソニア・ブラガが今作にも出演、その他バルバラ・コーレン、最近は「異端の鳥」でも存在感を放ったウド・キアなどが出ています。

世界各国の映画祭でノミネート、受賞を果たし、カンヌ国際映画祭ではポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」とパルムドールを争い、結果的に審査員賞を獲得しています。

もともと注目していたわけではなかったのですが、ネットでの評判から観ることに。

このような小さめの作品ながら、地元のシネコンでやっていたことも助かりました。

さすがにあまり入っていなかったのですが、何を間違えたのか高校生のカップルがいて、バイオレンスに引いていたのがちょっとおもしろかったです。

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今から数年後の未来。

ブラジルの僻地にバクラウという村がある。

村の歴史の語り部である祖母カルメリータが亡くなったことで、テレサはバクラウへと戻ってくるのだが、徐々に不可解な出来事が起きる。

村はデジタルデータから姿を消し、存在しないことになっており、その後電波消失した。

さらに、中心部から離れた農場では、一家が皆殺しにされていたのだ。

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非常に奇妙でユニークなストーリーテリングでありながら、さまざまな作品やジャンルの複合体でもあり、そして痛烈かつ独自の強さを持った政治批判でもある作品。

ブラジルの貧しい村バクラウを舞台に展開されるのは、王道もマカロニも合わせた真っ直ぐな西部劇、政治サタイア、どこかジョン・カーペンターのような空気もあるホラー。

迫り来る外部の殺し屋を前に準備する村人とかは王道な西部劇ですし、棺桶を準備しているところなんて「荒野の用心棒」(1964)のオマージュかと思うところ。

そしてあのクソムカつくトニー・ジュニアの水の所有をめぐる部分は西部劇かつ、現在のブラジルにおけるトロピカル・トランプなどと呼ばれる大統領ジャイール・ボルソナーロを投影しているのでしょう。

しかしそれらを単純に合わせるだけでなく、この独特の風習を持ち、どこか怖さのある村を描くことは「ウィッカーマン」や「ミッドサマー」のような不気味さもあります。

村人たちのリアクションが普通と異なり裏がありそうなことや、教会よりも重要な場所として登場するバクラウ歴史博物館がどんどんとこの村の”何か違う”感覚を強めています。

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あまりに妙ちくりんなUFO登場で「大丈夫か?」と思ったのも束の間、ドローンと見抜いた上での冷静な態度。

徐々に村の組織的な強さが見えてきますが、そもそも入り口に家があって中央へ連絡報告していたり、構造化された場所になっていますね。

常に外部の敵に対して備えている村なんですよね。

そしてそんな村を襲撃しようというのは、資金があり倫理観が破綻しているイカれた白人たち。

ウド・キアが出てくるもんですから、ああこれは大惨事になるなと予感させます。

スクリーンでの顔力が半端ないですよね彼。途中のナチス関連の問答での怖さは流石です。

その他の悪人もまあ畜生どもです。いい意味で真っ直ぐなクズ。

子どもを殺すし、乱射して気分がハイになってセックスし出すし。

こういう奴らなんで純粋に「ざまあ」と言って死にゆく様を笑えます。

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憂さ晴らしのために来ているいけすかない連中。

貧困層をまるでおもちゃか何かと考え、欲求の捌け口として扱い、そして権利を踏みにじって排除する。

しかし、いくらデジタル地図、つまりシステム的な構造から彼らをいないことにしようとしても、あの歴史博物館は、バクラウという村がある事実を叫びます。

そして村人たちは反抗と存在証明を果たすのです。

全ての血や生首がバクラウの証になっていく。

葬られていくのは部外者の方なのです。

スリラーとしても西部劇としてもそして辺境の村の凄惨な殺戮記録としても、要素はこれまでに色々なところで語られてきたものです。

それでもミックスされた中からブラジルの独特の奇妙さが滲み出ている秀逸な作品です。

社会的に抹殺され搾取される者たちの、地のそこからの叫び。

ブラジルの現政権のことや対外的特に北米などとの関係性を考えても興味深い作品でした。

こちら是非劇場でご鑑賞ください。今回の感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

それではまた次の記事で。

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