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「教皇選挙」”Conclave”(2024)

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「教皇選挙」(2024)

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作品解説

  • 監督:エドワード・ベルガー
  • 製作:テッサ・ロス/ジュリエット・ハウエル/マイケル・A・ジャックマン/アリス・ドーソン/ロバート・ハリス
  • 原作:ロバート・ハリス
  • 脚本:ピーター・ストローハン
  • 撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
  • 美術:スージー・デイビス
  • 衣装:リジー・クリストル
  • 編集:ニック・エマーソン
  • 音楽:フォルカー・ベルテルマン
  • 出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、カルロス・ディエス、イザベラ・ロッセリーニ 他

キリスト教会のトップである法王の死去により、新法王を選ぶ選挙「コンクラーベ」をめぐり、選挙の舞台裏と教会内の秘密に迫っていくドラマ。

監督は、第95回アカデミー賞で「西部戦線異状なし」にて国際長編映画賞などを受賞したエドワード・ベルガー。

コンクラーベを統括するローレンス枢機卿を演じるのは、「シンドラーのリスト」や「ザ・メニュー」などで高く評価される名優レイフ・ファインズ。

さらに、「スーパーノヴァ」のスタンリー・トゥッチ、「スキャンダル」「人生は小説よりも奇なり」のジョン・リスゴー、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニらが脇を固めています。

本作は第97回アカデミー賞において、作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞など計8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞しました。

原作は2016年に出されたロバート・ハリスによる同名小説となっています。日本語版は出ていないようですね。

賞レースでの評判もありますが、監督の前作「西部戦線異状なし」が非常に良かったですし、俳優陣もすごく豪華なので楽しみにしていた作品。公開からは1週遅れて観に行きました。

しかし、口コミも広がっているからか、とても混んでいました。

「教皇選挙」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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全世界で14億人以上の信徒を抱える、キリスト教最大の宗派・カトリック。その頂点に立つローマ教皇が死去し、新たな教皇を選出するための選挙「コンクラーベ」がバチカンで開かれる。

世界各地から100人を超える枢機卿が集まり、厳重に閉ざされたシスティーナ礼拝堂の中で極秘の投票が始まる。

しかし、票は割れ、舞台裏では陰謀や差別、スキャンダルが渦巻きはじめる。

そんな中、選挙を統括するローレンス枢機卿は、バチカンの根幹を揺るがす衝撃の秘密に直面する。

感想レビュー/考察

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重苦しくスリリングな選挙の裏側

キリスト教会のトップの交代劇。聖職者たちが集うこの選挙なんですけど、スリラーかってくらいの緊張感と重苦しさを持っています。

今作ではこの教皇選挙をめぐって、何か命の危険があるわけではないのです。

しかし全世界に影響のある、ある意味で最も強い権力を持つ人物が決まるという中で、つぎつぎにでてくる候補者たちの疑念や、良くない雲行きなどがかなり見ていて疲れてしまうようなスリリングさを持っているのです。

コンクラーベといえばダン・ブランの小説の映画化「天使と悪魔」で出てきて知っている方も多いかもしれません。でもあちらよりも正直今作の方がものすごく緊張感に溢れていますね。

皆が教皇の座を狙っている

主軸となってるローレンス枢機卿を演じているのはレイフ・ファインズ。

これまでのヴォルデモート卿や「キングスマン ファースト・エージェント」などの作品と全く異なって、とにかく弱弱しい上に責任重大な役目に追われていて大変です。

彼自身の主義主張もあるなかで、旧知の仲である候補者に肩入れをしています。それはスタンリー・トゥッチが演じているベリーニ。彼らが考えているのは、マシな教皇を選ぶこと。

野心家であり、同性愛者や特定の宗教を信仰する人たちを忌み嫌う差別主義者、会計面で不正を働き教会を我がものとして牛耳っていこうとする者。

そんな候補者たちを新たな教皇にするくらいならば、ベリーニに票を集めてしまおうということです。

ただ今作の脚本上おもしろいのは、「教皇になろうと息巻く候補者が危険だ」と言っていたベリーニですら、実ははっきりと教皇になりたがっているということ。

ローレンスにとって本当に教皇の座を任せていい候補者が分からないのです。

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キリスト教会が犯してきた罪

曲者たちがまさに曲者。でも皮肉なことにここに登場する誰もが、世界の縮図化のように実在するような権力者であり、そして教会の過去にも当てはまっている。

もっとも記憶として刻み込まれているのは、世界中のありとあらゆるキリスト教会にて、司祭など聖職者によって、修道女や信者たち、また多くの子どもたちに対して性暴行が繰り返され続けていた事実。

ベリーニについてはテデスコの対抗馬になるためだけにいるようなものなので、モデルとしては2005年の教皇選挙におけるマルティーニ枢機卿なのかもしれません。

またアデイエミは過去に女性を妊娠させておきながら、子どもを認知せず放置しているなど、聖職者とはいったい何なのか疑うような人間ばかり。

貧乏くじを引いたローレンス

なににしても、ロクな候補者がいないことは間違いない中で、厳粛にコンクラーベを進行しなくてはいけないローレンスには、すごく同情しますね。

炎上中のプロジェクトとか、完全に赤字のワークをとにかく終わらせなければいけない貧乏くじを引いたような。

そんな候補者たちとローレンスを映し出す撮影で、断絶を丁寧に見せてくれるのは親切。ローレンスと会話している相手が完全にカメラのフレーム外に出ていたり、何かにさえぎられて映っていない。

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全ては前教皇の仕組んだ組織改編劇

ローレンスの奮闘には前の教皇の影がちらついていて、そこがまた怖いところ。

今作に黒幕がいるのだとすれば、それは前教皇です。

「チェスがとても強く、いつも相手の8手先を呼んでいる方だった。」とベリーニに言われるほどの策士であった前教皇。

彼自身があらゆる事象を事前に仕込んでおり、その通りに事は進んでいく。

  • ローレンスの辞職を察知してそれを止めてしまい、今回の教皇選挙の管理させる
  • 自身の死後のことはシスター・アグネスに任せることで、ローレンスにはできない候補者の秘密の暴露をさせる
  • 誰にも何も知られていないベニテスを、今更拒否できないタイミングで選挙に投入させる
  • トランブレの汚職の証拠書類を補完しつつ、彼を利用してアデイエミを潰せるようなシスターを呼び出す

前教皇は自身の死を一つの機会として、キリスト教会の中にある膿を出し切ってしまおうと計画していたのでしょう。

ふさぎ込んだ教会に光が指し風が抜ける

轟音と共に、密室となっていた教会の窓が吹き飛ぶ。

テロの恐怖もありますが、むしろ、何もかもが秘密裏に行われ、内向的で凝集され凝り固まったキリスト教会そのものに、清々しくオープンな光と風が入ってくるというのは美しく見えました。

背景と化してしまいそうなシスターにも重要な役割や発言を持たせている点とか、最終幕の新教皇となったベニテスが身体的には女性であることとか。

多様性とか女性の権利、力を感じさせるような脚本は、原作が2016年であることを考えると現代的だなと感じます。

このへんは食傷気味に感じる方もいるでしょうけれど、私としては押し出しすぎないツイストで、まあいいのかと思いました。

脚本と演者たちが力強いので十分に楽しめますし、最後のツイストがやや急ではあるものの響き渡るのは前向きなメッセージにも感じました。

今回の感想はここまで。ではまた。

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