「アリータ: バトル・エンジェル」(2019)
- 監督:ロバート・ロドリゲス
- 脚本:ジェームズ・キャメロン、レータ・カログリディス
- 原作:木城ゆきと『銃夢』
- 製作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー
- 製作総指揮:デヴィッド・ヴァルデス
- 主題歌:デュア・リパ『Swan Song』
- 音楽:トム・ホルケンボルフ
- 撮影:ビル・ポープ
- 編集:スティーヴン・E・リフキン
- 出演:ローラ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、エド・スクライン、キーアン・ジョンソン 他
木城ゆきと原作漫画『銃夢』をハリウッドで実写映画化した作品。記憶を失ったサイボーグの少女が、闘いを通して本当の自分に目覚めていくサイバーパンクアクション。
監督は「デスペラード」や「シン・シティ」などのロバート・ロドリゲス。脚本はジェームズ・キャメロンが参加しています。
主人公をCGIモーションキャプチャーで演じるのは「メイズ・ランナー」シリーズなどのローラ・サラザール。
そのほか主人公アリータを保護した博士をクリストフ・ヴァルツが演じ、マハーシャラ・アリやジェニファー・コネリーなども出演しています。
公開時には日本の漫画がハリウッドにて実写映画化されること、そして何よりも漫画の絵をそのままに落とし込みつつ実写にしたような、アリータの造形、特に目の部分が話題になっていました。
「ゴースト・イン・ザ・シェル」しかり、こういう近未来的な、ブレードランナー的世界観を持つ日本の漫画はハリウッドで企画が通りやすいのでしょうか。
当時自分は原作も読んだことはなく、あまりサイバーパンク系にも興味がなかったこともあってスルーしていた作品です。
すっごくいまさらになりましたが、Amazonプライムビデオにて配信されていたので鑑賞してみました。
地球と火星連合の間で起こった戦争(ザ・フォール)から300年余りの時が過ぎ、最後の空中都市ザレムとそこから出される廃棄物を利用して生きる者たちが住むアイアンシティだけが残っている。
アイアンシティでサイボーグの修理を行う医師のイドは、スクラップ置き場で奇妙なサイボーグ少女の頭部を見つけた。
新しいボディを与え、機能を回復するも、彼女は以前の記憶を失っており、イドは彼女をアリータと名付けて保護することにした。
ある晩、ひそかに家を出るイドを怪しんだアリータは彼を尾行すると、イドは犯罪者を狩るハンター・ウォーリアーであり、賞金首と戦っていることを知った。
闘いに巻き込まれるアリータだったが、戦闘で驚異的なスキルを発揮し、それがザ・フォールで使用された戦闘術であるとわかる。
出自を思い出していく一方で、賞金首をまとめるベクターは、アリータの技術とそのボディを狙い動き出す。
原作漫画の再現性やコアとなる部分の描写については分からないのですが、実は想像していたよりもずっと楽しめる作品に仕上がっていると感じました。
正直なところ、企画としてやり易いという点意外にはあまり期待していませんでした。
大本の世界観というものはその視覚効果の精密さによって、つまり画の力によって質の高い印象を与えられると思うのです。
実写版「トランスフォーマー」が好きなのは、その視覚と音響などの噛み合い方が、あまりにお粗末な脚本を乗り越えていくからです。(あれは作家性で許される部分もありますが)
今作は話としてもそんなに滅茶苦茶ではないと思います。
脚本にジェームズ・キャメロンが参加していますが、その映像技術だけでなく、話に組み込まれている要素にも興味が続きます。
大きくいうと、アリータという人格を形成していきながらも、自分が何者であるのかを探求していく魂の旅であり成長記です。
自分を知るほどに危険へと踏み込んでしまいながらも、しかしやはり魂が自分にすべきことを叫ぶわけです。
弱者のために立ち上がれる者として。
ここは深読みかもしれませんが、サイボーグのボディパーツの件に関しては、女性だと強調されることもあって、自分には女性の身体の決定権も投影されているように思え熱かったところ。
そのアリータの感情においては、もちろん現実の人間としては違和感があり、常に作り物であると思い起こさせるVFX技術の力もあります。
アリータの大きな目は、やはり他者とは異なる存在として映りますが、観客がそこを乗り越えられるラインであり、その先に彼女の苦悩を共有するというアクションが仕込まれていて良かったです。
そしてその境界線の乗り越えに大きな役割を果たしているのは、他でもなくモーションキャプチャーと声で命を吹き込んだローラ・サラザールですね。
彼女が非常に滑稽さとリアルさを綱渡りするこの作品の根幹であるアリータを見事に演じたおかげで、世界にのめりこんでいけるんだと思います。
そもそもロバート・ロドリゲス監督はフランク・ミラーのグラフィックノベルを映画化し「シン・シティ」を作り上げた手腕もあり、そこにローラ・サラザール、クリストフ・ヴァルツなど演者の力も加わり、さらにVFX技術によるスペクタクルなアクションが展開される。
そこまで来ているので、サイバーパンクなこの世界をリアルな冒険として観客が楽しめるのです。
漫画の画を追求しすぎてヘンテコなことになりそうだったり、そこに集中しすぎてエッセンスも感じない張りぼてになることも多いコミックの実写映画化の中で、想定した以上の楽しさと世界による驚きを作り手の手腕で見せつけたなと思う一本でした。
今回の感想はこのくらいです。なんででしょうかね。「ゴースト・イン・ザ・シェル」はあんまりピンとこなかったんですけれど。
とりあえずここで終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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