「シルヴィ 〜恋のメロディ〜」(2020)

  • 監督:ユージン・アッシュ
  • 脚本:ユージン・アッシュ
  • 製作:ユージン・アッシュ、ンナムディ・アサマア、ジョナサン・ベイカー、ガブリエル・グロレ、マシュー・サーム
  • 製作総指揮:エメット・デニス、アクバル・グバジャビアミラ、マット・ラチャムキン、テッサ・トンプソン
  • 音楽: ファブリス・ルコント
  • 撮影:デクラン・クイン
  • 編集:デイナ・コンドン
  • 出演:テッサ・トンプソン、ンナムディ・アサマア、ランス・レディック 他

Sylvies-Love-movie-amazon-2020

ユージン・アッシュ監督による1950年代を舞台としたロマンスドラマ。

TV製作の仕事を夢見る女性とジャズサックス奏者として成功を目指す青年のひと夏の恋とその後数年にわたる愛の物語を描きます。

主演は「マイティ・ソー バトルロイヤル」「クリード チャンプを継ぐ男」などのテッサ・トンプソンと「クラウン・ハイツ/無実の投獄」のンナムディ・アサマア。

もともとは2014年ころに着手し始めていた作品ということで結構実際に撮り始めるまでに時間がかかっていますね。

作品はサンダンスでプレミア上映されており、アマゾンスタジオが購入したのでAmazonプライムビデオにて配信公開となっています。

少し前に登録されていたのでプレイリストには入れていたのですが放置。

今回はテッサトンプソン目当てということと、50年代~60年代にまたがる中でそこで大きな変化を受けているであろう黒人にフォーカスしてのメロドラマという題材に興味があり鑑賞しました。

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1957年の夏。父の経営するレコード店でTVにかじりつきのシルヴィの前に、ジャズサックス奏者のロバートが現れる。

プロのバンドとして成功を夢見る彼は一方でバイト口を探していたのだ。

シルヴィにはすでに婚約者がいたが、二人は自然に惹かれあう。しかし素晴らしいときは永遠には続かない。

ロバートのバンドがパリでの契約を得たのだ。彼はシルヴィに一緒に来てほしいというが、シルヴィはロバートの成功を祈りお別れをした。

そして5年後、ニューヨークの劇場前で友人と待ち合わせをしていたシルヴィの前に、ロバートが現れるのだった。

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個人的には久しぶりに完璧な作品を観たと思います。

これは社会的テーマが云々とか芸術としての革新性とかの話ではありません。

ただ、描きたいことを忠実に素晴らしいレベルと空気で間違いなく描いているその手腕が完璧なのです。

古き良きロマンス。

そのジャンルのときめきや暖かな感触を、余すところなく再現しているのは全く美しいものです。

ただ眺めていてもほっこりと幸せな気分になりました。

この作品は決して複雑ではありません。必要最低限にロマンスにおける恋人たちの障壁やすれ違いを見せています。

甘く苦く、切なく美しいそのテイスト。

ライティングの妙が素敵な50年代NYCのストリートにハーレム。ジャズクラブでの落とした照明の中きらりと輝きを見せる楽器と浮かぶ人々の顔やドレス、スーツ。

レコード店、家の中、倉庫。それぞれの場所の撮影の風格に、全体をしっかりと包み込むジャズの音色まで、スキのないパッケージで上品に包まれています。

主演の二人の相性もすごくよく思います。

もう久しぶりに見ていてニヤニヤしましたし、恥ずかしくなったり、可愛らしすぎて胸が・・・

テッサ・トンプソンのちょっと世間知らずで可愛らしく、でも逆境や苦悩に対し勇気を奮う姿も、そしてンナムディ・アサマアの紳士的たたずまいやクールな雰囲気も。

どちらもすごく素敵で、このシルヴィとロバートのロマンスを非常に命あるものにしています。

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そしてロマンスとしての完成度を高めつつ、社会性やメッセージ性が強くなりすぎない程度に時代設定を入れ込み、今でこその作品にしています。

そもそもこの手の50年代NYCロマンスは白人のものが多い中で、主演二人が黒人、さらに黒人音楽の流れも汲んでいるジャズを組み込んでいます。

それだけでなく、シルヴィは女性映画の主人公といっていい課題に立ち向かいます。

そもそも女性が仕事をするということ自体が珍しい時代において、そして”カラード・ピープル”とまだ有色人種の地位も低いのが当たり前の社会で、彼女は自分の夢に向かって努力していきます。

「仕事をするなら家のことを怠らない約束だ」

男にはそれが適用されないのに!といいう理不尽極まりない言葉が普通に出てくる社会で、シルヴィが奮闘する。

ただ世間知らずに裕福な男性と結婚したというのはロマンスにおける真実の愛の邪魔としては王道です。

しかしその時代の女性の選択肢のなさや束縛、良き妻、良き母を求められ続ける抑圧などがうまくブレンドされているんですよね。

NAACPの名前が出てきていたり、それはまあ公民権運動が盛んになっている時代が、ここにしっかり透けて見えてきている。

それも目くばせではなくて、下に見られているという状況にクロスして、そこに屈する居心地の悪さからの展開にしっかりつながっているんです。

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1957年の夏。出会ってすぐにお互いに引き込まれた。

この作品はその魔法の瞬間をすごく暖かに映し出すだけではなく、その後にわたってふと、その空気やあの安心、心地良い温度を何度も引き出させます。

ストリートの空気をそのまま吸ったり、夜の涼しさやライトを肌で感じるようななんとも素晴らしい映像。

決して複雑にしすぎずに、それでも設定された時代背景をブレンドしたまとまりある融合。

本当に久しぶりにやりたいことを綺麗にやってのける、ただ眺めているだけで心が安らぐロマンスを観た気がします。

完成度が高く古き良き時代のロマンスとして完璧、そしてしっかり2020年代の作品としてのメッセージも含まれている。

ユージン・アッシュ監督の確かな手腕が発揮されている作品です。

確かな手触りとか空気感はバリー・ジェンキンス監督の「ビール・ストリートの恋人たち」にも似ているかもしれません。

とにかくおすすめの一本です。できればさらに没入感のある劇場でじっくりと眺めたい作品ですが、しかし配信でもこうして日本に来てくれたことがうれしい限り。

アマゾンプライム加入の方には是非とも見てほしい作品でした。

今回の感想は以上。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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