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「シチリア・サマー」”Stranizza d’Amuri”(2023)

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stranizza-damuri-movie-2023 映画レビュー
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「シチリア・サマー」(2023)

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作品概要

  • 監督:ジュゼッペ・フィオレッロ
  • 製作:エレオノーラ・プラテッリ、リッカルド・ディ・パスクアーレ
  • 脚本:ジュゼッペ・フィオレッロ、カルロ・サルサ、アンドレア・チェドロラ
  • 撮影:ラミロ・シビータ
  • 美術:パオラ・ペラーロ
  • 衣装:ニコレッタ・タランタ
  • 編集:フェデリカ・フォルチェージ
  • 音楽:ジョバンニ・カッカモ、レオナルド・ミラーニ
  • 挿入歌:フランコ・バッティアート
  • 出演:ガブリエーレ・ピッツーロ、サムエーレ・セグレート、ファブリツィア・サッキ 他

イタリア・シチリア島の美しい風景を舞台に、実際の出来事を基にしたラブストーリー。

主人公の少年たちのみずみずしい初恋と、彼らを待ち受ける運命を描き出します。

新人俳優のガブリエーレ・ピッツーロとサムエーレ・セグレートがオーディションによって選ばれ、主人公ニーノとジャンニを演じています。

そのほかの出演には「はじまりは5つ星ホテルから」のファブリツィア・サッキ。

ジュゼッペ・フィオレッロは長編映画初監督を務め、イタリアで最も歴史ある映画賞であるナストロ・ダルジェント賞で新人監督賞を受賞しました。

ちょうど23日勤労感謝の祝日公開ということで公開日に鑑賞してきました。女性客がすっごく多かったですね。男性がほぼいませんでした。

「シチリア・サマー」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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1982年、初夏のシチリア島。

16歳のニーノと17歳のジャンニは、バイク同士の衝突事故で運命的な出会いを果たす。

ニーノは学校を出て頭が良く、たくさんの家族に囲まれている。一方のジャンニは父がおらず母と二人だけ。働いている工場の親方が母と付き合っており、家では厄介者扱いされ、そして近所の不良たちはジャンニに絡みある嫌がらせをしていた。

育った環境も性格も異なる彼らは引かれあい、友情は激しい恋に変わっていく。

かけがえのない時間を共に過ごす2人だったが、彼らのまぶしすぎる恋はある日突然の終わりを迎える。

感想/レビュー

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ある短い夏の間の恋愛と、悲しい別れ。

フランソワ・オゾン監督の「Summer of 85」を思い出すような今作はイタリアが舞台でした。

時代設定ではイタリアがワールドカップに優勝した82年。

舞台はシチリアのどちらかといえば田舎町なので、この設定だけでも少し現代の騒々しさから離れる幻想的な空気がありました。

原題の”Stranizza d’Amuri”はシチリアの言葉で”愛の不思議さ”といった意味になるようです。

まさにある事件を取り扱ってはいるものの、むしろ事件や社会的な問題、同性愛者への差別などに過剰にフォーカスしていない。

やはりこれは不思議な出会いと短くもすごく美しい愛の物語になっています。

あくまで二人の少年の友情と愛情に焦点を絞り切った描き方は、かなり好みでしたし良いバランスであったと感じます。

映し出される映像が美しい

とにかく撮影が美しいですね。

街中や砂利道、二人が特別な場所として過ごす桃源郷のような泉。

ものすごい仰角でとらえる打ち上げ花火。採掘場ですら真っ白な岩が敷かれていて美しく見えます。

太陽光の取り入れ方とか、水の反射具合、衣装関連の落ち着いていても鮮やかなカラー。

少し時代を示すためかざらついた感じもありながら、行きすぎないある程度のクリアさも持っています。

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ニーノの仕事が花火師っていうのも、この一瞬だけ輝いて消えていくはかなさが、二人の愛にも重なっていてすごく良いですね。

主演の二人もすごく印象的。ニーノ役のガブリエーレ・ピッツーロはインテリ感と優しい家庭で育ったゆえの柔軟な感じがすごく出ていて素晴らしい。

後半のクライマックス近くで、家族からの圧力のせいでジャンニについて心無い言葉をはくシーンがあります。あそこの痛々しさと言ったら。

そのあとでむせび泣く声の感じとか、あえて顔を映さないで箱の中に閉じ込められたように納屋のショット、締まる扉など演出も素敵でした。

そしてジャンニ役のサムエーレ・セグレート。

ダンスをやっているらしく肉体が出来上がっていて、整備工、採掘情労働などの肉体労働的な面がフィジカルに出ていてハマっています。

それなのに顔つきが凛々しくてギャップがすごい。母との関係性なども繊細で、感情の揺れ動きが大きいながらあまり表に出さずに内包する姿が印象的。

周囲の人間に視線を向けるカメラ

今作は小さなコミュニティで展開するゆえに、結構家族とか他の人間たちの機微な感情も映し出されています。

モノ言わずにその人物を映し続ける視線のようなショットが多く使われていて記憶に残ります。

ジャンニの初登場時には、彼自身にはあまりフォーカスが当てられない。

むしろジャンニと(かつて)仲のいい女の子の、不安そうな表情での眼差しにずっとカメラは向けられています。

その他、ジャンニを見つめる母、ニーノを見つめる母。

ふと感じ取っていくその疑念や不安ゆえに、目を向けている周囲の人たちもカメラはよく映し出しています。

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ジャンニの母の行動がすべてを崩していってしまう。

でもそこには悪の感情はない気もします。

母にはジャンニしかいない。彼女は息子が離れていくことに恐れをなし、孤独ゆえにあの行動をとったようにも見えました。

孤独はニーノの甥っ子のトトにも見えます。ビーチでジャンニに砂をかけるシーンがありますね。

トトにとってはいつも遊んでくれた叔父さんを奪ったジャンニがあまり好きじゃないのでしょう。

それでもジャンニと引き離されて、納屋で一人泣いているニーノをすごく心配そうにのぞき込んでいました。

暴力と死でしか解決できないのか

この作品は実際の事件に着想を得ている。

これはジャッレ殺人事件というもので、15歳と25歳の二人の男性が、頭を撃ち抜かれて殺されていたという事件。

映画でも説明されますが、ここからイタリアのLGBTの権利をめぐるムーブメントが巻き起こったようです。

あまりそのことを知らずに見ていた私としては、OPとED近くでの猟のシーンで、やたらと銃声が大きく設定されているのが不安とか怖さを出していた理由が分かりました。

しかし、「またLGBTの悲愛か・・・」と思った矢先、イタリアのワールドカップ優勝の喧騒の中で二人が再び会うシーンで救われていました。

大衆とは逆行する方向に、バイクで走っていくニーノとジャンニ。彼らの姿に嬉しさを感じた。

ただ本当にラスト数秒ですべてがプツンと切れてしまう。そのまま劇場から放り出され、感情をどう処理していいのか分からないような最後でした。

美しい情景は二人の愛に捧げられていて、それを破壊してしまった周囲を間接的に描き出す。スマートなアプローチに思える作品でした。

イタリアも同性愛者が結婚と同等な権利を得たのは2016年なんですよね。こういう人の死をもってしてでもなかなか進まないのは本当にもどかしい。

今回の感想はここまで。

それではまた。

コメント

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