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「或る殺人」”Anatomy of the Murder”(1959)

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Anatomy of the Murder 1959 映画レビュー
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「或る殺人」(1959)

  • 監督:オットー・プレミンジャー
  • 脚本:ウェンデル・メイズ
  • 原作:ロバート・トレイヴァー『錯乱』
  • 製作:オットー・プレミンジャー
  • 音楽:デューク・エリントン
  • 撮影:サム・リーヴィット
  • 編集:ルイス・R・ロフラー
  • 出演:ジェームズ・スチュワート、ベン・ギャザラ、リー・レミック、ジョージ・C・スコット、アーサー・オコンネル 他

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「ローラ殺人事件」「黄金の腕」のオットー・プレミンジャー監督が、レイプ事件を扱う裁判劇を描いた作品。制作当時にしてはかなり挑戦的な題材と使用される言葉などが話題の映画です。

主人公の弁護士を「スミス都へ行く」などのジェームズ・スチュワートが演じ、殺人の被告人をベン・ギャザラ、そして検察官として「パットン大戦車軍団」のジョージ・C・スコットが出演。

今作はアカデミー賞にて、作品賞含めて6部門ノミネート。助演男優賞はアーサー・オコンネルとジョージ・C・スコットの2人がノミネートしています。

初めて観たのは数年前2011、2年くらいだったかな?プレミンジャー監督作をまとめてみる中で鑑賞。

Anatomy of the Murder 1959

元検事であり、今は弁護士として活動するポール・ビーグラーだったが、仕事の依頼は全くなく、いつも趣味の魚釣りをして過ごしていた。

しかしあるとき、友人のパーネルがある事件の弁護の仕事を紹介してくる。

それは妻をレイプされた陸軍中尉が、相手の男を銃殺したというものであった。

状況的には勝てっこない事件であり、馴染みの裁判官はいまおらず、相手の検察もダンサーという中央から派遣されてきた敏腕だった。

ポールは裁判にむけて、なんとか無罪への道を切り開こうと奔走する。

Anatomy of the Murder 1959

プレミンジャー監督作品は好きですが、今作はお気に入りでは実はないのです。

好きなところももちろんあるのですが、作品全体としては、際どい内容に切り込むセンセーショナルな作品ではあるものの、そのものの質としてはそこそこ、という印象になっています。

しかし同時に、非常に悩ましいのですが、今作を完璧だと言えない理由そのものこそ、今作が素晴らしいなと思う理由でもあります。

ちょっと意味が分からなくなりそうなので、まずは純粋に素敵だなと思うところから紹介します。

ひとつ目は今作を語るうえで絶対出てくるであろう、題材の話。

レイプという事件を法廷劇で扱い、いろいろな際どい部分含めて人物に話させている。今2010年代も終わりから見れば、たいしたことはないですが、それでも59年に、コードもまだ感じる映画界にてこれを描くのは先進的。

これ以後にどうなっていくのか考えると興味深いですから。

Anatomy of the Murder 1959

で、正直この作品で私を惹きつけてやまなかったのは、ジョージ・C・スコット演じる検察官ダンサー、ソウル・バスのクールなタイトルデザイン、そしてデューク・エリントンの素敵な音楽です。

バスの死体を模したデザインのカッコいいことは、「黄金の腕」のデザインから変わらず。

またデューク・エリントンは今作にはグラミー賞を獲得していますが、この殺人、強姦、疑念と裁判という戦いに、ユニークかつスタイリッシュなジャズメロディで強い印象を残します。

そしてジョージ・C・スコット。今回主役のジミーはどことなく頼りない感じもあるのに対比して、彼の存在感の強さ、そして切れ者というキャラクターがハマりまくる。

正直もうポールじゃ勝てないだろうという圧を持っていて、彼が登場するのは実は映画も中盤以降なんですが、ちょっと食いまくるパワーがすさまじい。

実はこのジョージ・C・スコットのカッコよさと印象強さも、諸刃の剣という現象が起きているのですけれどね。

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ここで初めに言った、この作品が素晴らしくしかし同時に残念な理由を。

それはこの法廷劇が死ぬほどおもしろく、解釈の幅があまりに広いため、最終的な着地点が満足できない事。

ひとつの殺人事件から、不倫やDV、レイプ、タブーへ突っ込んでいく論争など色々な広がりを見せ、複雑に絡む人物関係や疑念がとてもおもしろいのですが、それら広がったものを放置してのエンディング。

どうにも真実は見えてこないですし、人物の動機や心情もはっきりしません。結局レイプはあったのか、そして浮気は?暴力は?なぜあのバーニーの娘は証言する気になったのか。

初めに留置場にて会う時のローラと中尉の距離感とか、のちに議論される牢屋での激情とか、ほのめかしは多いのですけれど。

いろいろ疑問が多く、終わり方もなんとなく早足かつ曖昧。

ただそうしたこと含めて、一つの殺人を取り上げてみても、なんとも真実とは脆弱なものか思い知らされるわけです。正義とか信念とか、ひいては人間とは。

初めは純粋すぎると言われたポールも、最後に至ってはもはや正義の人とは言い切れない。

突出した魅力がある作品で、160分もあるのに見入ってしまうことは確かです。しかし総合的には先進的な内容ながら、たどり着く目的地がなかったような気もする作品でした。

感想としてはこのくらいです。プレミンジャー監督はやっぱり「ローラ殺人事件」がダントツで好きですね。ちょっと古い映画ですが、廉価版DVDとかもありますし、一度鑑賞をお勧めします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ではまた次の記事で。

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