「アントマン・アンド・ワスプ クアントマニア」(2023)
作品概要
- 監督:ペイトン・リード
- 脚本:ジェフ・ラブネス
- 原作:スタン・リー、ラリー・リーバー、ジャック・カービー『アントマン』
- 製作:ケヴィン・ファイギ
- 音楽:クリストフ・ベック
- 撮影:ビル・ポープ
- 編集:アダム・ゲルステル、ローラ・ジェニングス
- 出演:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、キャスリン・ニュートン、ミシェル・ファイファー、マイケル・ダグラス、ジョナサン・メジャース、コリン・ストール 他
MCUとして31作品目となり、アントマンシリーズとしては2018年の「アントマン&ワスプ」に続くシリーズ3作目。
量子世界に囚われたアントマンたちの脱出劇と、彼らを狙う量子世界の征服者との戦いを描きます。
監督はシリーズ前2作に続いてペイトン・リード。
主演ポール・ラッドやエヴァンジェリン・リリーらも変わらず、今回はこれまで幼い娘だったキャシーが成長し、「名探偵ピカチュウ」などのキャスリン・ニュートンが演じています。
また量子世界の征服者を「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」などに出演、今度「クリード3」での登場も期待の高いジョナサン・メジャースが演じています。
これまで「ブラック・ウィドウ」から始まっていたMCUのフェイズ4は前作の「ブラックパンサー ワカンダフォーエバー」で終わり、今作は次のフェイズ5の始動作品となります。
マルチバースをテーマに進んでいくようで、ここにきて量子世界を舞台にアントマンの話が用意されました。
さすがにMCUなのでほとんど世界公開と差はなく日本公開。ただ他の作品で忙しく、公開週末にはスルー。
平日夜にレイトショーで観てきました。
〜あらすじ〜
サノスとの戦いを経て、アベンジャーズの一員としてアントマンことスコットはセレブリティの人生を送っていた。
一方で成長した娘のキャシーは人助けのためなら警官にも反抗するようになっており、ハンクとホープと一緒に量子技術を社会に活かそうと活動している。
しかし研究室でキャシーが開発した量子世界へと信号を送る装置を見て、ジャネットは戦慄した。
すぐにシステムを遮断するように言うが、今度は量子世界から信号が返って来た結果、全員が吸い込まれて量子世界に囚われてしまった。
スコットはキャシーとともに量子世界の住人に捉えられた。
そしてホープ、ハンク、ジャネットの3人は脱出のため奔走するが、ジャネットは量子世界に君臨する征服者を酷く恐れていた。
感想/レビュー
辟易した。
かつて王道を敷いていたであろうこのフランチャイズも、もう路線を見失ってしまったのかもしれません。
フェイズ5は何がしたいのか
前のフェイズ4の流れの中では、喪失に向き合うことをサーガのテーマとし、上手いか別としてとりあえず絶えない葬式ムードが続きました。
そしてこのフェイズ5。
マルチバースを全開にしていくつもりなのでしょう。
そして新たなアベンジャーズに向けてサノスの次のボスキャラである征服者カーンを登場させる目的もありますね。
ただハッキリといって意味をなしていません。
2時間を超える宣伝広告
映画というかやたらと時間の長い広告でしかなく、そのCGで作り出された空っぽの世界と紙のように薄っぺらい人物の破綻したドラマは観ていてただ退屈でした。
不完全燃焼に持ち込んでいくようになったのはいつのことか忘れましたが、映画と呼んでいいと思えないレベルです。
続編ありきだからとか、意味不明の後から出ますよキャラへの目配せ以上に、言葉で説明しただけの人物が多すぎる。
これだけビジュアルに飽和した作品でありながら、ハリボテでしかないなんて。
プラクティカルさを欠いた見慣れた世界
ビジュアルに関しては作り込まれているのだとは思いますが、その世界観含めてどうでもいいですし、もはや驚くことはなかったです。
視覚的に楽しいと思えません。
大量にレンダリングした実の伴わない背景を見せられて誰が心躍らせるのでしょうか。
アントマンというのはサイズの変更におもしろさがあります。ビジュアルでもドラマでもです。
現実における私たちの知り得るサイズと比較するからこそ、普段の世界を違った視点で冒険する楽しさがあるはずです。
今回は舞台として量子世界を選んだため、そもそもそれが不在になっています。
では量子世界の魅力は?といえば教えてほしいです。
観ていて、スター・ウォーズを意識しまくった安っぽい世界観の量子世界に興味が失せていきました。
説明セリフで自分語りするだけの人物
薄っぺらい人間の描写はそのデベロップをほとんど人物の語りに任せています。
口じゃなくて体動かしてください。
本来はマルチバースをまたいでも変わらない性質を描くはずが、スコットは”どんな世界でもキャシーのため立ち上がる”のに対して、カーンは完全に変異体でした。
多くの可能性のスコットが、共通してキャシーのために立ち上がる様は、1作目のアリたちの連携をアクションでも再現していて素晴らしかったと思います。
ただカーンとの関連性というか対になる要素が見えにくいです。
ジョナサン・メジャースは彼自身の存在感や感情豊かでありながら奥底に恐ろしさを抱えている感じがとてもいいと思います。
なのでもっともっと描き方を工夫してほしい。だいたいカーンの描写はジャネットがしゃべって説明して終わっちゃいますからね。
これだけ親子とか複雑さのあるキャラがいるのに、うまく扱えず、革命軍みたいな話もあまりに安っぽくてお粗末。
そして量子世界でありながら最後はただの殴り合いですよ。もっと頭使って脚本書いてほしいです。
終始全てがどうでもいい
量子の世界、そして時空を超える存在カーン。時空を超える、時間軸も移動できて、空間にも支配されない。
要するに何でもありなのです。
ということは何を意味するかといえば何にも意味がなくなるということです。
どれだけの大災害を想像してもなかった時間に言ったり、逆転させたりできる。そこに行動と結果の因果を求めて何になるでしょうか。
ある程度の制約やなにができて何はできないなどのルールがあるからこそ、その中での葛藤と選択に感情を寄せていけるはずなのです。
とにかくバカバカしくCGが壮大で、そこにいて説明するだけの登場人物と気に掛けることのできない話に疲れる作品でした。
映画の行方を見ていくためには今後もシリーズを観てはいくでしょうが、本当にもう終わっているものを引き延ばしているだけに思えて残念です。
今回はかなり酷評になりました。
それではまた。
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