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「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」”Black Panther: Wakanda Forever”(2022)

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「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」(2022)

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作品概要

  • 監督:ライアン・クーグラー
  • 脚本:ライアン・クーグラー、ジョー・ロバート・コール
  • 原作:スタン・リー、ジャック・カービー『ブラックパンサー』
  • 製作:ケヴィン・ファイギ
  • 音楽:ルドウィグ・ゴランソン
  • 主題歌 『Life Me Up』リアーナ
  • 撮影:オータム・デュラルド
  • 編集:ケリー・ディクソン、ジェニファー・レーム、マイケル・ショウバー
  • 出演:レティーシャ・ライト、アンジェラ・バセット、ダナイ・グリラ、ドミニク・ソーン、テノッチ・ウエルタ、ウィンストン・デューク、ルピタ・ニョンゴ、マーティン・フリーマン 他

2018年に公開されアカデミー賞3冠、さらにアメコミ映画史上初の作品賞ノミネートを果たした「ブラックパンサー」

その続編であり、MCUの作品群としては「ソー:ラブ&サンダー」に続く長編作品。

監督は前作から引き続き「クリード チャンプを継ぐ男」などのライアン・クーグラーが努めます。

「アベンジャーズ:エンドゲーム」までブラックパンサーを努めてきたチャドウィック・ボーズマンが2020年に逝去されたため、レティーシャ・ライトが主人公を努めます。

その他、アンジェラ・バセットやダナイ・グリラらも前作から続投し出演。

さらに今回は「ユダ&ブラックメシア」などのドミニク・ソーンが、天才的頭脳を持ち自身のアーマースーツ”アイアンハート”を着て戦う少女として登場。

また、メインのヴィランである深海の王ネイモアを、アメリカそしてスペイン映画で活躍するテノッチ・ウエルタが演じます。

もともとはもう少し早い公開であった予定が、ボーズマンの逝去に伴い脚本を作り直したことでリスケになった作品。

多くのファンが陛下なきブラックパンサーシリーズ、ひいてはMCUの行方に不安を抱えていたと思います。

ただ早い段階で、クーグラー監督もマーベル側も、ボーズマンの代役でブラックパンサーを用意することはないと発表していました。

そして満を持し公開された本作。

ちょうど新海誠監督新作とバッティングしたこともあり、IMAX上映が少なくて、通常字幕で鑑賞してきました。

人の入りもちょっと少なく感じました。

「ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー」公式サイトはこちら

〜あらすじ〜

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ワカンダの守護者にしてアベンジャーズの一人、ブラックパンサーことティ・チャラ王が亡くなった。

ラモンダ女王が王位に付き、国は悲しみに包まれたが、兄を救えなかったと思い詰める妹のシュリは、テクノロジーの開発に明け暮れラボから出てこなくなった。

そして1年のときが経つ。

世界はブラックパンサー亡きワカンダを好機とみなし、貴重な資源であるヴィブラニウムの入手に躍起になっている。

ある時、CIAのヴィブラニウム探知機によって発見された鉱石の回収現場で、海から謎の勢力が現れ職員たちを襲った。

それはこれまで決して地上に現れなかった深海の国タロカンの軍勢。

タロカンを率いるネイモアはラモンダ女王の前に現れると、探知機を発見した科学者を連れてくるように脅す。

ワカンダの技術公開のせいで、ヴィブラニウムを探す人間が多くなりタロカンが暴かれる可能性があるため責任を取れというのだ。

科学者を保護するため、シュリとオコエはアメリカへ渡る。

感想/レビュー

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脚本を書き直した経緯があり、チャドウィック・ボーズマンが存命であり続投した場合のストーリー構想も気にはなりますが、彼を替えがたいものとして描いた点は共感します。

スクリーンの外でも英雄で有り続け、我らの王であった彼に代わっていける人はいないでしょう。

そして単純に主演俳優の逝去という都合によってではなく、むしろそれを美しくも設定へと落とし込んだわけです。

喪失とその癒しを待たない世界

目の前に広がるのは、大いなる存在を失った際の、近親者や文化圏の人々ヘの影響と、それでも目まぐるしく動き続ける世界とのせめぎ合いです。

残酷ではありますが、喪失を処理しているシュリやラモンダ女王、ワカンダに対して、世界は好機とすら捉えているわけです。

こうした点で舞台の設定としてはバランスが良かったと思います。

OPでの逝去と葬儀。ジャンプする1年後。

観客すらティ・チャラ王の崩御を受け止められない中で1年もすっ飛ばす。

混乱しているままに、世界からの政治的な圧力と外敵の侵略行為が映し出されているのです。

観ている側としては「王が死んだばかりだ。まだ放っておいてくれ。」という気持ちですが、フランスの特殊部隊もCIAもこちらを狙っている。

そしてこの止まってくれない世界は、現実にも意味があります。

チャドウィック・ボーズマンの逝去をまだ飲み込めていないからです。

彼が今いないことが現実に感じられないですし、時間がほしい。でもMCUも映画界も、世界も進んでしまうのです。

私がこの作品を非常に楽しみにしていた一方で、正直見ないままで過ごしたいと思っていた理由がそこにあります。

この作品はティ・チャラ亡き後の世界を描くとはすなわち、ボーズマン亡き世界なのです。

それを直視するとはすなわち、彼がいなくなったことを否が応でも認識しなくてはいけない。

話が進んでしまえば、エンドゲームまでの彼がいた世界への別れを告げることになるのです。

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そんなざわめきを、クーグラー監督は様々なキャラクターのドラマに落とし込みました。

ティ・チャラが、ボーズマンがどうであったかを描くのではなく、それぞれの喪失を中心に添え、そこから相対的に彼の大きさを感じさせる。

1作目でも各キャラクターの立場や思想を入れ込みながら複雑で美しいドラマを展開していた手腕は健在です。

このブラックパンサーというヒーローの題材上、そこには政治や国家が絡み規模は大きくなりがちです。

しかしそれぞれをティ・チャラそばにいた一人の人間として描き出すことに留め、下手に世界の命運をかける方に重点を置きません。

個人として亡き王を捉え、ドラマを深堀する

妹、母、戦友そして愛する人。

近くにいた人を亡くすこととして親密な物語になっています。

圧巻の演技を見せるアンジェラ・バセットのラモンダ女王。彼女は夫を失い、今度は息子を失ってしまう。

それでもなお国のために表に立ちますが、今作の進行でシュリの安否すら見えなくなったときが非常に胸を裂かれるようなドラマに満ちていました。

彼女が言及するように、オコエ隊長にも非常に厳しい現実があります。

キルモンガーの件で王座へのそして国への忠誠をつらぬいたことが今作で彼女を苦しめる。それは責務ゆえですね。

一方である意味責務を投げ出してしまったのはナキア。

彼女に女王が会いに行ったときは素晴らしいセリフがありました。「みんなにとってはブラックパンサーだった。でも私にとってはすべて。私のティ・チャラ。」

記号化しがちなスーパーヒーロー映画にはこうした血の通った言葉が必要ですね。ナキアの逃避は、観客にも共有されるものだと思います。

観なければ、その死を認めずに済むのですから。

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そして今回の主人公となるシュリ。内に秘めるのは自分自身を焼き尽くしてしまいたいという怒りと後悔。

29%だったハーブの完成度。その未熟さが兄を殺したと思い詰める彼女は、同じく痛みを抱えるネイモアと繋がっていきます。

失われた王国

映画史において、少なくともこうしたブロックバスター映画において、スペインによる侵略と文化の殲滅をしっかりと見せているだけでも素晴らしい姿勢と価値があると思います。

1500年代のことが映画でも出てきましたが、メソアメリカの歴史に触れているわけです。

スペイン人がマヤ、インカやアステカを踏みにじり、殺すか奴隷にするかして殲滅。キリスト教への改宗、スペイン語の強要も言及されていますが、ただ歴史の事実が離されるだけではなく、もっと胸を痛めるのはタロカンという王国です。

タロカンは深海の王国で、その美術造形は非常に美しかったです。

「アクアマン」のものとは異なり、やはり深海であるので基本は薄暗い。

そして平面に積まれている酔いうよりも、水中である浮力も考えて立体構造的な建造物が多かったですね。

ネイモアが生み出した太陽の光に照らされるタロカンの王国は、このコミックヒーローの映画というフィクショナルな世界にて観客の目に届けられていますが、この王国はスペインの侵略がなければ地上に存続していたかもしれない姿。

タロカンの輝きは、現実には奪われ追いやられ失われてしまった光なのです。

この点は前作でワカンダが”目指すべき理想郷”であったのに対し、”世界によって奪われた王国”として紹介されるのはおもしろいところ。

ただでさえ中央アメリカから追いやられたネイモアが、今回の件でふたたび侵略の兆しを見て激昂するのは当然のことなのです。

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選択が英雄を作る

怒りに染まり復讐鬼とすら会話したシュリですが、最後に思い浮かべたのは国民の姿でした。しかも自国だけでなくタロカンの民を見た。

怒りの炎で自身も世界も焼き尽くすことは、もしかすると簡単な選択かもしれません。

むしろ、真に利他的な選択をすることが難しい。

人間らしく苦しんでもなお、最後にとるシュリの選択の気高さに感動します。

ネイモア、シュリの怒りの共有だったり、歴史とフィクションを巧く混ぜ合わせていく点が楽しめました。

とはいえ個人的には、タロカンの軍勢の脅威があまり伝わってこなかったこと(序盤の夜の攻撃シーンの不気味さは最高ですが)、アイアンハートがあまりに”そこにいるだけ”すぎること、マシンに関してはあまりいいデザインが見られなかったことなど、結構不完全燃焼なことも多い映画です。

そこに彼を感じる

ただ、われらの王チャドウィック・ボーズマンの死への本当に心のこもった姿勢が感じられるのは確かです。

不在への悲哀も心に空いた穴も、この映画を見ることで癒されるのだと思います。その意味でも、私に必要な作品でした。

今は彼がいないことを認めていますし、でも感じ取れてもいます。この作品のように遺志を継いだ新たな一歩を見ることができましたから。

観終わってこんなにも心に安らぎと静けさを感じたことは、これまでのMCUにはなかったです。

というところで感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

Wakanda Forever.

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