「カポネ」(2020)

  • 監督:ジョシュ・トランク
  • 脚本:ジョシュ・トランク
  • 製作:ジョン・シェーンフェルダー、ラッセル・アッカーマン、アーロン・L・ギルバート、ローレンス・ベンダー
  • 製作総指揮:ジェイソン・クロース、クリス・コノヴァー、デヴィッド・ジェンドロン、アリ・ジャザイェリ、ロン・マクレオド、スティーヴン・ティボー
  • 音楽:EL-P
  • 撮影:ピーター・デミング
  • 編集:ジョシュ・トランク
  • 出演:トム・ハーディ、リンダ・カーデリーニ、マット・ディロン、ジャック・ロウデン、アル・サピエンザ、カイル・マクラクラン 他

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「クロニクル」(2012)「ファンタスティック・フォー」(2015)のジョシュ・トランク監督の第3作品目となる映画。

アメリカ禁酒法時代の悪名高いギャング、アル・カポネの晩年を描くドラマです。

主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ダンケルク」などのトム・ハーディ。

その他、リンダ・カーデリーニ、マット・ディロン、ジャック・ロウデンらも出演しています。

トム・ハーディがアル・カポネを演じるというニュースが出てきたのは実は結構前の話で、最初は予告が出るまで今作は”Fonzo”というタイトルで進行。

これはカポネの本名Alfonsoとかけていたものでしょうが、最終的にはカポネになりました。

「ヴェノム」の撮影があったりでたびたび製作が伸び、そしていざ公開しようと思えばコロナウイルス感染症の拡大から結局劇場公開ができずにデジタル配信での公開になったというなんだか踏んだり蹴ったりな作品。

しかし日本では劇場公開が無事にできたようです。

今回高回収よりもちょっと遅れての鑑賞になりました。

さすがにもう少し立っていたこともあるのか、結構すいていましたね。

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禁酒法時代にシカゴギャングの親玉として君臨した伝説のギャング、アル・カポネ。

彼は脱税容疑で10年間刑務所で過ごし、その間に子どものころから罹患している梅毒により、体も精神も蝕まれていった。

認知症も患うカポネは、シカゴを離れ今はフロリダの豪邸に妻やその他の手下たちと暮らしている。

多くは彼を案じているが、当の本人にはすべての喪失感と、疑念、恐怖しかなかった。

彼は自身が隠したとする1000万ドルについて思い出そうとするもできず、一方で周囲がその金を狙っているのではないかとおびえている。

そして、政府もこの元犯罪者の王が、実は病気のふりをしているのではと目を光らせていた。

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まず、ジョシュ・トランク監督というと、今作はとてもとても興味深いものになっている点を。

それは華々しい期待の新星として現れたあの「クロニクル」のころから、次にビッグプロジェクトであったマーベルヒーローチームのリブート、「ファンタスティック・フォー」での悲惨すぎる大失敗を切り離さずにいられないことです。

本当に素晴らしい才能が、たった27歳の若さで現れた。

しかもあの時はデイン・デハーンも若手注目株で魅力的でしたし、マイケル・B・ジョーダンもまだまだサイドではあっても頭角を現してきたころです。

それが、「ファンタスティック・フォー」ではもう良いところが無いくらいに凄惨な結果となってしまう。

しかもスタジオ側にいろいろと口出しされた件を訴えたりしたあと、それまで決まっていた「スター・ウォーズ」のアンソロジーの監督の話も、クビになったのか自分から降りたのか、なくなってしまったのです。

で、その栄華を極めてからのすべてを失った様、そして今はもう周囲を信じられない自分の中の妄執に生きるその姿は、まさに今作のアル・カポネなんですよね。

今作はトランク監督自身が脚本も編集も行っているので、1つの映画に対するコントロールを取り戻したように思えます。

そしてインディペンデントタイプの小さな作品となったわけで、トランク監督としては自分の過ごしやすい環境に。

しかし、相当に傷ついてしまったのか、この作品はアル・カポネその人と同じくらいに壊れてしまった映画だと思いました。

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何にしても集中力がない作品です。散漫に感じてしまいます。

おおよそはこの晩年のカポネの過去の悪夢を語ってはいますが、その中で噂されている彼の隠した1000万ドルの行方についてもミステリー的に匂わされます。

金のありかは「湿ったところを掘れ」というミスリードがあるものの、割と序盤にカポネの態度から、あの彫刻像の中に隠されているだろうとは予想されますが、ミスリード含めてなんの意味があるのでしょうか。

対して重要ではないその金のありかをめぐる話も、浮き沈みがあり、それのせいかジャック・ロウデンの存在自体も意味が薄く感じます。

そして過去からの悪夢。

彼が犯してきた罪として、一つはマット・ディロン演じる自身のメンターだったジョニー・トーリオの殺害があります。

彼を幻影として見ながら、自身が行った彼の殺害にはひどく後悔や恐れを感じているようです。

そして、もう一つはゴールドを象徴とする少年。

金の風船は、富や名声を象徴するものでしょうけれど、しかし風船を持つ少年はカポネが放棄した過去である息子のトニー。

得られないこの金の風船はまさにどんどんと財産を失っていくカポネの現状であり、そして過去に持っていたその金へ近づくと、同時に自分が避けている息子の存在を照らしてしまう。

まあ認知症やら自分の周囲への疑念やらほんとうにいろいろと飛び散っていますが、カポネの健康と精神状態よろしく、すべてがぼやけて気が散っていますね。

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それが結局何につながるかというと、この映画と全くつながれないことです。

感情的にも共感も何も生まれません。ただ退屈でした。

トム・ハーディは確かに好演を見せてはいます。

特殊メイクも相まってまったくもってクソな状態のカポネと彼の狂気と朧げな意識などを表現します。

身体的な所作も含めてグロテスクな彼のカポネはしかし、全体のストーリーテリングに何か結束をもたらすわけでもなかったです。

とにかく、様々な要素の集合に終始してしまい、その中から強い語りというものは生まれてきていません。

トム・ハーディの怪演なら「ブロンソン」、実在のギャングなら「欲望のバージニア」とか「レジェンド 狂気の美学」がおすすめ。

そしてトランク監督作なら「クロニクル」を見てください。それだけです。

今回脚本も編集も自分で行い、作品制作のコントロールは得ているはずですが、どうでしょうか。これだと言い訳はできません。

それとも、もう戻らないほどに壊れてしまったのか。

かなり酷評的にはなりましたが、個人的には監督・主演ともに期待していて結構待っていた作品だったためになおのこと失望を強く感じざるを得ない作品でした。

今回はこのくらいで終わりです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の映画の感想で。

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