「ハリエット」(2019)

  • 監督:ケイシー・レモンズ
  • 脚本:ケイシー・レモンズ、グレゴリー・アレン・ハワード
  • 原案:グレゴリー・アレン・ハワード
  • 製作:デブラ・マーティン・チェイス、グレゴリー・アレン・ハワード、ダニエラ・タップリン・ランドバーグ
  • 製作総指揮:ビル・ベネンソン、ペン・デンシャム、シェイ・カマー、クリスティーナ・ケンドール、チャールズ・D・キング、エリザベス・コック、ジョン・ワトソン
  • 音楽:テレンス・ブランチャード
  • 主題歌:ジョシュア・ブライアン・キャンベル、シンシア・エリヴォ”Stand Up”
  • 撮影:ジョン・トール
  • 編集:ワイアット・スミス
  • 出演:シンシア・エリヴォ、ジャネール・モネイ、レスリー・オドム・Jr、ジョー・アルウィン 他

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俳優として活躍しながら、監督としても数々の作品を送り出してきたケイシー・レモンズ監督が、アメリカ奴隷制時代に自由を求めて南部を脱出しながらも、家族そしてほかの奴隷たちのために奴隷解放運動に参加した実在のハリエット・タブマンを描きます。

ハリエットを演じるのは「ロスト・マネー 偽りの報酬」などのシンシア・エリヴォ。

また、ハリエットを追跡する奴隷主を「女王陛下のお気に入り」などのジョー・アルウィンが演じ、ハリエットに戦うすべを教えてくれるフィラデルフィアの南部奴隷解放活動員を「ドリーム」などのジャネール・モネイが演じています。

企画自体は2015年ころから立ち上がっていたようです。

作品自体の評価としてはそこそこといった感じでしたが、主演のシンシア・エリヴォの演技は高く認められるものでした。

全米映画俳優組合賞で主演女優賞ノミネート、アカデミー賞も同様に主演女優賞、そして主題歌の”Stand Up”が歌曲賞にノミネートしました。

日本でも2020年3月公開でしたが、コロナウイルスの拡大に伴い延期され、緊急事態宣言もあけた6月に公開されました。

実はそれより前に、アメリカで観る機会があったのですが、そこでも日本公開でも見逃しています。

観るべきと思うのは実はシンシナティにある、今作のような地下鉄動とその活動を残す博物館、国立地下鉄道自由センターを訪れていまして、それも貴重な滞在だったので、すこし思い入れがあったのです。

まあ結局映画館で見逃したので、今回配信をしっかり観ることに。

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1840年代のアメリカ、メリーランド州。

黒人奴隷の子として生まれたアラミンタ(ミンティ)は、自由黒人である男性と結婚したが、奴隷監督はミンティを束縛し、夫との面会すら禁じる。

これ以上この地にいられないと考えたミンティは、渋る夫を残し、一人で自由を求めて北部へと脱走した。

フィラデルフィアまでなんとかたどり着き、秘密裏に南部の奴隷たちを北部へと逃がす組織”地下鉄道”と出会った彼女は、自由な人間であるハリエット・タブマンと名を変えた。

しばし安息の時を過ごすハリエットだが、南部に残した夫や、今だ奴隷として縛られている家族を忘れられず、彼らを北部に誘導するため、なんと単身で南部へと戻るのだった。

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映画を見るとき、スクリーンに映し出される物語は、時空を越えています。

今現在の世界ですら観もせずに私たちは死んでいくわけですが、しかし、映画というこの窓口は過去の知られざる物語を今に届けてくれる。

その役割は、こうした作品にてとりわけ重要に思えるのです。

南北戦争よりも前の時代。奴隷制度が当たり前であったこのメリーランド州で生まれた英雄。

あまり語られてこなかったこのハリエット・タブマンを語るということでもすごく意義ある作品だと思います。

信じがたいハリエットの物語を現実のものに落とし込んでいく上では、主演のシンシア・エリヴォの力が非常に大きいものであると思います。

今作はアクション映画であり、西部劇であり、伝記映画でありまたスリラーにもなっています。

様々なジャンルの要素がハリエットに集約されているために、やはり軸となる部分としてはそのジャンルそれぞれに対応していく必要がある。

その中でシンシア・エリヴォは見事にどのジャンルにおいてもリードしていくのです。家族と離れ孤独に苦しむ妻や娘であるときの脆さもありながら、自由人であるハリエットになってからの毅然とした態度。

特にそれぞれのシーンでの表情の使い分けが見事だと思います。不安や恐怖におけるものと、守護者であり車掌としてリーダーシップを発揮するところと、切り替えが巧みです。

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また今作は美しい映画でもあると思います。

それはスティーブ・マックイーン監督の「それでも夜は明ける」に共通するところなのですが、その情景によるものです。

ハリエットの逃亡劇や南部からの追走はその状況を考えるに決して安心できるものではないのですが、しかしやはりこの南部の景色、自然の情景には目を見張る美しさがあります。

それは「それでも夜は明ける」の首吊りの奥に置かれる暖かな景色と同様に、現実のむごたらしさとその背景にある自然風景が対比され、それぞれがより強く映し出される効果があると思います。

まるで表面は美しい南部の人間と、その裏に残酷で醜い奴隷制度が横たわるのと同じように。

総じていえばシンシアの演技と画面には圧倒される作品ですが、実はその実話に対する視線はすごくまっすぐでやや退屈です。

ハリエットの物語は偉人の伝記であり、その直線上にある今を感じ取るのは薄く感じます。

また先ほど書いたように、この作品はとにかく含まれるジャンル的な要素が多いため、それがゆえに演技の幅を魅せていけるとはいえ、やや散漫でそれぞれが薄く感じてしまうのも事実です。

「42  世界を変えた男」と同じような印象を受けました。重要人物の物語を丁寧に語るために、創造的な要素にかけてどことなく定型のテンプレっぽい。

知っておくべき話であり、作られる意味は大いにあるのですが、おもしろさにはいまいちな印象を受けてしまう作品でした。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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