「バグノルド家の夏休み」(2019)
- 監督:サイモン・バード
- 脚本:リサ・オーウェンズ
- 原作:ジェフ・ウィンターハート
- 製作:マシュー・ジェームズ・ウィルキンソン
- 編集:アッシュ・ホワイト
- 出演:モニカ・ドラン、アール・ケーブ、エリオット・スペラー・ジロット 他
第32回東京国際映画祭のユース部門にて上映された、とある親子の夏の日々をコメディトーンで描くドラマ映画。
監督はサイモン・バード。主演は母親役を「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」などのモニカ・ドラン、そして息子役をTVシリーズで経験を積んできた若手俳優アール・ケーブが演じています。
またバンドのベル・アンド・セバスチャンが今作のサウンドトラックを担当。
もともとはジェフ・ウィンターハートのグラフィック・ノベルが原作とのことです。
映画祭の中ではスチルで観たカラーリングや設定が楽しそうで、(ほかに重めの作品もあったので)ポップな感じが良いなと思い鑑賞。
あらすじ
離婚した両親。一人息子のダニエルは夏の間、父とフロリダで過ごす予定だったが、都合が悪いと断られた。
結局は母と夏休みを過ごすことになるダニエル。
しかしヘビメタ少年のダニエルは母にとってはなんとも扱いづらく、ダニエルも母との夏なんて退屈だと呆れている。
お互いに踏み込む領域を探りながら、ぎこちない親子の夏休みが始まる。
映画祭のなかでは比較的注目が少ないかと思いましたが、満員で。
とにもかくにも、終始ほっこりと優しい笑いに包まれる心地よい作品でした。
やる気が出なくてすべてがウザくてダルい思春期少年と、それをどう扱っていいか戸惑いながら、自分自身の人生も少しでも進めようという母の奮闘。
よくある青春映画とか家族ドラマなんですが、この作品は騒ぎ立てるところがなかったのはとてもいいと思いました。ある意味でしつこくなく、爽やかというか。
スカル・スレイヤーやら友達とかクスッと笑ってしまう周囲もいい味を出しています。
そうはいっても登場人物は少なめで、夏休みが舞台というのもあり学校描写もありません。人自体が少ない小規模なドラマ。
主にこの母と息子だけに焦点を絞り、二人の関係性に中止した結果かなと思います。
ダニエルの成長期でも母の苦難でもなく、母子の姿というか。
この親子の距離感が絶妙に引いた画面で示され続けます。全編通してこの親子、画面の左右に広がっていたり、奥と手前だったり。
ぎこちない心の距離というかパーソナルなスペースというかがうまいことカメラワークや配置で観て取れて楽しいです。
ただずっと、画面の中に一緒に映るのは一つ大きいのかな?決して画面外に出ていってしまうことはないというか。
だんだんと、相手を自分色に染めるのはよそうと理解し始める。
始まってすぐの洗濯物は、淡い色合いの母のものに対して、ダニエルの服は黒ばっかり。ですが、最後のパーティになれば、母がブラックトーンに身を包みます。
そしてダニエルは、OPと対になりながら、今度は自分から母にケーキをおすそ分け。
小さな変化、行動がこの親子の距離の取り方を繊細に映し出していました。
思えば最後のあの靴のカラーやドレスとカジュアルのバランスが、この親子のすべてなのかな。
ポップなカラーですがうるさくなく、しつこさもないながら優しい映画でした。
感想自体はかなりあっさりですが、単館系でやるといい感じだと思う作品。
というところでおしまい。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ではまた。
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