「SNS -少女たちの10日間-」(2020)

  • 監督:ヴィート・クルサーク、バーラ・ハルポヴァー
  • 原案:ヴィート・クルサーク
  • 製作:ヴィート・クルサーク、フィリップ・レマンダ
  • 撮影:アダム・クルリシュ
  • 出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー 他

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インターネット上にて少女たちが遭遇する多くの性的搾取者、彼らとのやり取りを、俳優陣をそろえて実際に実験として行う様を映し出すチェコのドキュメンタリー映画。

ヴィート・クルサーク、バーラ・ハルポヴァーの二人が監督を務め、作品内でも全体統括をしています。

二人とも社会派ドキュメンタリー制作をしてきたバックグラウンドがあるようです。

実際にネット上での性的搾取者や児童への性的虐待をリアリティショーとして取材記録していくという、作品自体が非常に危うくスキャンダラスなもの。

今作製作中に撮られた様々な映像や画像は実際にチェコの警察から証拠としての共有依頼もあり捜査に使用されているとのこと。

いろいろと衝撃的な内容のドキュメンタリーですが、題材や何より手法など気になったので見たかった作品でした。

渋谷で観ようと思っていて、公開週末には行けなかったため見送り・・・していたら緊急事態宣言で映画館が閉まってしまいました。

そうした背景があってなのか、いつもよくいく地元の映画館での上映が始まり、GW中はレイトショーしかなかったのがGW期間終了とともに上映回数が増えたので、見てくることができました。

R15指定でまあネット上の変態クソ野郎どもが出てくるドキュメンタリーですが、結構若い層が多め。あとカップルできている人も多かったです。

(※デートムービーではないでしょう。こうした社会問題の議論をする間柄ならいいと思います。)

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チェコでは多くの10代前半の子どもたちがインターネットを利用している。

中には親から制限を受けている子もいるが、無制限に使用している場合も少なくない。

そんな子どもたちはSNS上のチャット、ビデオ通話などで大人たちと会話交流をする。

そしてそこには児童への性的虐待も含まれている。

ドキュメンタリー作家のヴィート・クルサーク、バーラ・ハルポヴァーらは12~3歳に見える若い女優を募集し、その中から選ばれた3名と実験を開始する。

彼らのために3つの子供部屋を用意し、それぞれの偽のアカウントを作成。10日間にわたって子どものふりをし、連絡を取ってきた相手とやり取りを行った。

2,548人。

10日間で彼女たちにアプローチしてきた人数。

そしてもちろん、同時に残念なことに、そこには性的搾取や脅迫が多く含まれていた。

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今作は設定も題材も聞けば結論分かるものです。

ネットって変態が多いよねとか、気を付けないとポルノを観てしまうだの、男性器の写真を送られてしまうだの。

果ては興味本位で自分の身体の写真を送れば拡散されてしまう、実際に会えばレイプや誘拐の危険もある。

こうした内容それ自体は正直このドキュメンタリーを観なくても周知の事実かと思います。

ではなぜその”当然”、”当たり前”と思われていることを、わざわざ実験的アプローチで製作して映し出す必要があったのか。

そこにこそ意義が見えてきます。

この作品の目指すところはその現実の体験、虚と実の融合にあると思います。

例えば劇画というのはやはりすべてが演技・演出です。作り物。

それはまるでニュース映像を観たり、小説で読んだりネットでの見聞と同じような距離というものを持っています。

もちろんそれらは知見を広げていく上では有効ですが、その距離は”無関心”や”非当事者意識”をはらんでしまうのは仕方がないと思います。

そこでこのドキュメンタリーという手法に意味はあります。現実の、生の事象であること。

想定できることはあっても完全に事態をコントロールすることはできない。

しかしそれだけでは、結局は社会問題を追いかける実録番組と何ら変わりはないかもしれません。

TV特番にもそうした警鐘を鳴らす志を持つものはたくさんあります。

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そこで監督たちは嘘に賭けたのだと思います。ドキュメンタリーとしては禁じ手である役者の投入です。

これはまさしく虚、嘘っぱちになってしまうので、自分も最初はよくないのではないかと思いました。

しかし、この演者たちが私たち観ていく側のルート、根差す対象になり、そしてまた演技が真実になっていく瞬間を生み出すのです。

そしてそこにこそ、本当の意味でこのネット上の性的搾取の恐怖体験と当事者意識があるのです。

そもそものオーディション部分から映画が始まっていく中で、集まった女優のうちほとんどにネット上での性的な虐待や嫌がらせなどの被害経験があるというのは心が折れますが、その後のセッティングまで丁寧に見せていきます。

そして、彼女たちそれぞれの私物を通して個人の背景を見せていきます。

彼女たちに対してもその現実が生という形で描かれていく。

だからただの実験のための機能ではなくて、ダンスが好きな人、父との想い出を大切にする人などの現実の人間が見える。

そうなれば当然寄り添う形で彼女たちの怖さや気分の悪さ、怒りも分かち合っていくことになるのです。

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さらにそのフォーカスをぶれさせない構成の巧さがあります。

監督たちはこの子供部屋から目を離させない。

チェコの社会研究のような専門家インタビューや実際の被害者へのヒアリングなどを出しません。

そうなれば、先の距離のある研究にしか映らないからでしょう。

観客も一緒にこのスタジオ、子供部屋、そして画面の前に固定されたように進む、体験型に仕上げています。

その先に虚実の融合が待っていました。

子どものふりをし演技していた女優たちが、本物の恐怖と不快感にさらされて本心から怒る。

終盤の面会シーンでは、演出ではなくて本当に怒りが爆発した瞬間と思います。

観客もこうして実験に参加し、本物の性的虐待を3人を通して受けていく。だから沸き上がる感情も個人的かつ本物になるのです。

警察を動かしていくほどのムーブメントになることは重要ではなく、またふとした瞬間の管理運営側に対する非難もここでは最重要の機能ではないです。

いかに当事者意識を持たせるのか。

そこに個人的繋がりを求めていくなかで、禁忌たる役者の投入からそれを利用しての虚実の境界線の破壊までこなして見せたドキュメンタリー。

この題材に向き合っていく上でこの上なくスマートで効果的な手法を取る素晴らしい作品でした。

今作の日本公開版はR15、実はR18版もあるらしいです。

そちらではモザイク処理がないらしいですが自分は勘弁ですね。映画史上最長の男性器ショットの連続があるのでしんどい。

映画を通して自分も若干性的虐待を受けたようです。

見事にまとまっているドキュメンタリーで必見ですので劇場公開が近くであったら是非。

今回の感想は以上になります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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