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「アステロイド・シティ」”Asteroid City”(2023)

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「アステロイド・シティ」(2023)

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作品概要

  • 監督:ウェス・アンダーソン
  • 脚本:ウェス・アンダーソン
  • 原案:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
  • 製作:ウェス・アンダーソン、スティーヴン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • 撮影:ロバート・D・イェーマン
  • 編集:バーニー・ピリング、アンドリュー・ワイスブラム
  • 出演:ジェイソン・シュワルツマン、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マヤ・ホーク、ティルダ・スウィントン、マーゴット・ロビー、ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ソフィア・リリス 他

「グランド・ブダペスト・ホテル」「フレンチ・ディスパッチ」など、独特の世界観とセンスで多くのファンを獲得しているウェス・アンダーソン監督最新作。

出演陣にはジェイソン・シュワルツマン、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、マーゴット・ロビーなどハリウッドスターが集結。

今作は2023年カンヌ国際映画祭のプレミア上映されています。

そういう意味ではあまり海外での公開から期間を空けずに日本公開まで着た作品ですね。日本ではウェス・アンダーソン作品はオシャレ映画なんて言われ方もしていますが、注目度も高いものです。

相変わらず予告の時点で色彩やセットの可愛らしさがあり、俳優陣もこれまで実に豪華です。

公開日がちょうどファーストデイだったのでそこで鑑賞してきました。

「アステロイド・シティ」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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1955年、アメリカ南西部の砂漠の街アステロイド・シティで、5人の天才子供たちとその家族が科学賞の授賞式に招待される。

しかし、子供たちに母親の死を伝えられない父親や、シングルマザーの映画スターなど、それぞれが複雑な感情を抱えていた。

授賞式中に突如宇宙人が現れ、大混乱が起き、街は封鎖され、軍は宇宙人を隠蔽しようとするが、子供たちは外部に情報を伝えようと試みる。

アステロイド・シティと人々の運命は一体どうなるのか。

感想/レビュー

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ウェス・アンダーソン監督の作品については、もう予告でもスチルでも、もしかするとそのキャスト人を見るだけでも彼のモノであるとわかります。

それだけ映画界隈においては特異なトレードマークを持っていて、そしてその世界観にこそファンもついていると思います。

今作もその例には漏れず、きっとファンの方にはたまらない映像作品となっているでしょう。

シンメトリック、ミニチュア、色彩

画面構成は相変わらずのシンメトリー多用。

整理されまくっていてやはりおもしろい。

その舞台劇にも思える人物とセット配置などはカチッと決まりまくっていて、病的なレベルでの視覚的な楽しさがあります。

OPから列車すらもなぜかミニチュアなのかのように思える可愛らしさがあり、そこからアステロイド・シティの全貌を見せていく。

用意されている舞台セットはすごく少なく、ガソリンスタンドにそれぞれの止まる小屋、そしてカフェなど。

それでもディテールを少し抑えたクリーンさなんかがあって、すごく可愛らしいですね。

さらに色調もさすがウェス・アンダーソンの世界。

パステル調な感じで50年代アメリカ風。

そこでサンドブラウンにターコイズブルー。柔らかな色彩が少し重いドラマにも緩さを与えています。

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いつもの馴染み顔

キャスト人についても、やはりウェス・アンダーソン作品の馴染のメンツがそろっていたり。

エドワード・ノートンもウィレム・デフォーも、ジェイソン・シュワルツマンやティルダ・スウィントン。

今回はスカーレット・ヨハンソンだったりリーヴ・シュレイバー、マーゴット・ロビー含めてあらゆるところに、本当に少ない出番でも知ってる誰かがいますね。

Everyone is Someoneな状態で、その点だけでもびっくりするくらいの豪華な俳優陣。

ただ主軸としてはある程度絞り込んでいるし、群像劇はやはりうまいので、変な偏りだったり悪目立ちする俳優もいないのはやはりコントロールが素晴らしいですね。

ウェス・アンダーソン版「未知との遭遇」

そんなわけで眺めている分にはいつも通り素晴らしいクオリティの今作。

根底のテーマには未知との遭遇があるのかと。

作中でそもそもエイリアンとの遭遇をして、政府もそして集まった家族も右往左往していきますけれど、背景には原子力爆弾開発のシビアな状況が置かれています。

きのこ雲すらポップな形で示されはするので、マイルドなんですが、50年代のアメリカは実際結構緊張の世代ですよね。

この頃の映画は黄金期でありながらも、ヘイズコードとか原子力への恐怖、そこから「遊星よりの物体X」みたいな道への恐怖ものぞきます。

のどかさを持っていつつも、大きな転換点という意味があるのかもしれません。

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統制管理支配・・・

緊張状態が横たわる中で、統率と管理が横行する。

そもそも軍事的な目的での科学省の発表というのも、果たして科学が政府の所有物のようにされていいのかなという疑問もありますし。

最終的には銃(政府、軍)VS科学銃(子どもの発明)という構成から、技術はみんなのものであるといった展開もあります。

また、コロナ禍を彷彿とする外出禁止、検疫の体制が敷かれますね。

それ自体はまだいいのですが、情報統制までをも行おうとする政府と軍が描かれるので、やはり批判的なテイストはありますね。

それらも、可愛らしいデザインやユーモアあるセリフ回し、解除と思った瞬間にまた自粛なんておかしさも交えて語られます。

演技の中の演技の中の演技

今作はそんな現代の私たちの混乱と脅威を、50年代のアメリカ群像劇に重ねていますが、さらにメタ構造を持っています。

モノクロで正方形な画面で、映画が始まってすぐにそれは語られますが、今作は「アステロイド・シティ」という舞台劇を上映しているという構造。

なので、監督や脚本家がいて、俳優を集め、彼らがアステロイド・シティを創り出し、それが現実の私たちに映画として提供されているという3層になります。

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ほぼすべての俳優は、演技の中でさらに演技をしています。

スカーレット・ヨハンソンは一番レイヤーが多くて大変そうです。

俳優スカーレット・ヨハンソンがまず、舞台女優を演じ、その舞台女優が獲得した役ミッジを演じる。そしてそのミッジは俳優という設定なので、今度は「アステロイド・シティ」の中でミッジとしてまた演技をするシーンもある。

癒すために芸術を作る

レイヤー構造はおもしろさというだけでなく、現実にそのまま訴えられないことを投影する役目があります。

エドワード・ノートン演じる作家とアステロイド・シティ主演の俳優(ジェイソン・シュワルツマン)は恋仲にあります。

しかしこの舞台劇の設定が50年代であることを鑑みるに、その同性愛は決して認められず、芸術家人生を閉ざすような秘密です。

先述の政府・軍の統制はこんな抑圧に対する批判もあるのでしょう。

オギーがミッジと仲良くなりながら、ロマンスの展開をしないのは、背景に同性愛があるからかもしれません。

いずれにしても、劇作家が亡くなったことが明かされるように、オギーの妻の喪失はまさに舞台製作における死別を投影しているでしょう。

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オギーはメソッド演技法のように、実際に自分の手をやけどさせる。

ミッジは演技を忘れて思わず普通にリアクションしてしまう。

痛みを体感し、没入していく。

芸術自体が人を癒す。芸術を作ること自体が人を癒す

それは役の中に自らを消していくことであり深層への旅。まさに「眠らなければ目覚めない」ということなのでしょう。

そこまで、生み出した芸術に自分を投げ込むことで初めて、逆に自分自身を見つめなおすことができる。

それを得るために、人は芸術を作り観たり聞いたりするのかもしれません。

今作はウェス・アンダーソン監督が考える芸術と人間の魂の話。

全体には興味深いですが、私は前作の「フレンチ・ディスパッチ」以来どうも熱がない。ウェス・アンダーソン監督の世界観の完成度は素晴らしいのですが、テイストが先行しすぎてきて自己完結型に感じます。

舞台だからといっても、結局は映画に落とし込んでいるのに会話が多すぎてなんだか・・・

今後も同じテイストなのは良いとして、観る側から離れていくならこちらも引いてしまうかなと思っています。

アートハウスというか、独りよがり感がちょっと鼻につくんですよね。好みは分かれるのでご注意を。

今回の感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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