「クリード 炎の宿敵」(2018)

  • 監督:スティーブン・ケープル・Jr
  • 脚本:シルベスター・スタローン、チェオ・ホダリ・コーカー
  • 製作:シルベスター・スタローン、アーウィン・ウィンクラー、チャールズ・ウィンクラー、デヴィッド・ウィンクラー、ウィリアム・チャートフ
  • 製作総指揮:ライアン・クーグラー、マイケル・B・ジョーダン、ガイ・リーデル
  • 音楽:ルドウィグ・ヨーランソン
  • 撮影:クラマー・モージェンタウ
  • 編集:デイナ・E・グローバーマン、サイラ・ヘイダー、ポール・ハーブ
  • 衣装:リズ・ウルフ
  • 出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、シルベスター・スタローン、ドルフ・ラングレン、フローリアン・ムンテアヌ、ウッド・ハリス 他

ライアン・クーグラー監督によるロッキーシリーズスピンオフ「クリード チャンプを継ぐ男」(2015)の続編となる作品。

監督はクーグラー監督に代わり、スティーブン・ケープル・Jrが務めます。彼は長編としては”The Land”(2016)というストリート青春映画を1作のみ監督、その他はショートとテレビエピソードの経験という若手監督で、長編2作目にして大きなシリーズを撮るという点で、ライアン・クーグラーに似てますね。

主演はもちろん前作に引き続き、最近は「ブラックパンサー」(2018)の悪役エリック・キルモンガーで評価の高いマイケル・B・ジョーダン。またスタローンやテッサ・トンプソンなどのメンバーも出演。

そして今作では因縁の対決としてあの「ロッキー4 炎の友情」でアポロを殺したイワン・ドラゴとしてドルフ・ラングレンが参加。彼の息子であり主人公アドニスと戦うヴィクター役は、プロボクサーであるフローリアン・ムンテアヌです。

期待のシリーズ新作ということで週末に観てきました。入りとしてはそこそこ・・・うーん、もう少しいてもよかったかな。

伝説のボクサー、アポロ・クリードの息子アドニス・クリード。彼は世界チャンピオンとの壮絶な戦いを繰り広げ、その実力を世界に知らしめた。その後試合を重ね、ついに世界チャンプのタイトルを勝ちとるアドニス。

彼はアポロの友人であるロッキーに支えられ、そして愛するビアンカと結婚し幸せに過ごしていた。

そんなある日、ウクライナからチャンプへの挑戦者が現れる。ヴィクター・ドラゴ。彼はかつてアドニスの父アポロを試合で殺したあのイワン・ドラゴの息子であった。

父の因縁は息子の世代へと引き継がれ、アドニスはロッキーの反対を押し切ってヴィクターとの試合に挑む。

さて、クーグラー監督から一時はスタローンが監督することになり、最終的には若手のスティーブン・ケープル・Jr監督に引き継がれた今作。

前作からの続きということですが、要所ではクーグラー監督のものを受け継ぎながらも、全体のスタイルとしてはスタローンが脚本していることもあってか、よりロッキーシリーズ的な印象がありました。

今作は何にしても、劇画調なんだと思います。

前作ではマリス・アルベルチの撮影において、ドキュメンタリックさや2ラウンド長回しでの臨場感、まるで試合中継そのもののようなリアルさが追求されていたと思います。

それと比べると、今回の撮影監督となったクラマー・モージェンタウが作り出す画は、決め画的なものも多くまたスローモーションの多様や俯瞰視点などがあり、一応はPOVがあるんですが、フレッシュさは減少。しかし昔ながらの画づくりには大きく貢献していて、その味わいはロッキーシリーズのようでした。

上下逆さに撮られたビアンカとアドニスのショットは1作目の印象的なカットで、今回はそこに娘が入っていて歴史が更新されたり、またトレーニングシーンでは走るアドニスをサイドからずっと並走するショットがあり、まさに有名なロッキー1作目のあのショットに重なります。

しかしそこで、後ろから車で追うロッキーがすっとフェードアウトしていくのが、新たな世代へのバトンタッチ的だったり、単なる繰り返しではなく素敵でした。

しかし何よりも今作で濃厚なのは、そのドラマでしょう。

ここに関していえば、前作以上に厚みが増しています。それは、今作がアドニス・クリードの物語でありながら、ロッキーシリーズにおいて重要な歴史のその後をしっかりと描き出し、複数のストーリーが宿命のように交差するからです。

やはり何と言っても、今作で目を離せないのが、イワンとヴィクター親子の物語でした。

「ロッキー4 炎の友情」にてイワンはアポロを殺し、ロッキーがその敵を討つように試合でイワンを倒しましたが、今回はその後のドラゴの人生がすごく短くも、効果的に語られています。

序盤はアドニスと交互にドラゴ親子の話を入れてきますが、それがあまりに残酷で切なかったです。チャンプになり愛する人に囲まれ、ロッキーとも仲良く人生を歩むアドニスに比べ、寒色に包まれたウクライナでの肉体労働者として働くヴィクターの生活。ヴィクターも親の世代のことがなければ、いい仕事についたり、恋人を作っていたかもしれないのに。

イワンに関しても、国に捨てられてしまい、ロッキーと違って彼の真似をするファンもいなければ銅像もないのです。

すべての演者がとてもいい仕事をしている中でも、とりわけスタローンとドルフ・ラングレンが輝いているのは、いぶし銀で歴史の厚みあるものだからかもしれません。

もうロッキーが口開くと全部名言が出てくるし、ふとした瞬間にロッキー1作目の時のような孤独で哀愁ある眼をするスタローンに泣かされてしまいます。

ラングレンはイワンがエイドリアンズを訪れての会話シーンで、「妻も。」の前に一瞬詰まり、憎しみよりも悲しみが溢れそうなところをこらえるのがなんとも切なくて、繊細で素晴らしい演技でした。ドラゴ親子側はとにかく台詞が少ないですが、一つ一つが重くまたその所作でものすごく語ってるんですよ。

誰しもに寄り添える、それが今作の魅力。

だからこそアドニスが感じる試合への緊張と怖さ、期待への重圧も感じられ、見送る側であるメアリー・アンやビアンカの気持ちにもなれる。そしてもちろん、ドラゴ親子が単なる悪役ではなく、彼らにも寄り添い応援できます。

中盤の砂漠でのトレーニング。”Runnin”によってアガりまくるあの地獄での痛み。

リングに上がるまでの苦労と、そしてリングの上での孤独。ただ、そこに立つまでにどれだけ多くの人に支えられてきたか。そしてそこに立つ理由はただタイトルを守るだけではなく、自分の愛する者のためでもある。

試合で失うのは、タイトル以上のものです。

アドニスは守るべき家族が待っている。そしてヴィクターには、リングの外に父がいる。ノックアウトも、強打も、すべてリングの外の父からの愛を得るため。

そこまで理解させるからこそ、食らうパンチやダウンが観客にも響いてくると思います。苦難を共にし、アドニスもそしてヴィクターも、両者の勝利を願うからこそ、座席までその痛みが届いてくるんです。

感情移入で私がすごいと思うのは、最終試合の両者の入場シーンでした。

前作のリッキー・コンランの入場は映画史に残るクールなものでしたけども、今回のヴィクターとアドニスのものはそれ以上かもしれません。

ヴィクターはおそらく生まれて初めて声援を受けていたでしょう。若干の戸惑いすら浮かべた表情でリングへと向かいますね。会場手前でイワンが「聞け。」というのもグッとくるところです。

そしてアドニス。これが素晴らしい。ブルーの光を追った先にいるビアンカで、登場もクールですが、なにより女性が生で歌いながらファイターを送り出す入場なんて今までなかったでしょう。それに、これから闘う者にとって、愛する人が文字通り声援をくれてリングに上がるなんて、これ以上の入場はないはずです。感動的でした。

試合でかけているものは守るものです。その孤独な四角形の中で、ファイターは外に待つ大事なものをかけ闘います。

何しろ、ドラゴ親子ですよ。もう、国も尊敬も名誉もそして妻(母)も去った。イワンはそれらを取り戻すことに執着していたのですが、どうでもよくなったのでしょう。何よりも、目の前でパンチを食らう息子を、ヴィクターだけを守りたかった。

オープニングでの乱暴な起こし方。そして中盤の車で煽っていたランニング。本当に守るべきものを知ったイワンは、最後はヴィクターと並んで走ります。あのカットだけで涙が止まらない。彼らはもう、過去にも国にも翻弄されず、新しい時代を歩むんでしょうね。すごく気持ちがいいです。

今作が描くのは複数の家族の再生。

アドニスは自身が芯からファイターであると知り、常にチームで戦ってきたと理解しますね。「君が必要なんだ。」とその言葉通りだったのです。

折り重なる家族のドラマと王道なルックを持つ今作は、何よりもすべてのキャラクターにしっかりと戦う理由を持たせることで、人物の心へ観客を近づけ、闘いを熱くし彼らを気にかけ応援させてくれます。

アポロの息子の話があれば、必然的に語られるイワンの息子。単なる客寄せの話題ではなく、映画の中に人生があり続いていることを示してくれるのは、私はとても好きです。

正直で確かな感触のある人間ドラマ。最後の最後、リングに上がらずバトンタッチするロッキー。本当にアドニスの時代が始まったんです。

ロッキーシリーズの色合いがアドニス・クリードのレガシーに加わった熱い作品でした。

是非映画館でその音、映像を観て、彼らを応援してほしいです。私ももう一回は絶対見たいです。

感想はこれで終わりです。今後もクリードが続くのなら、まだまだ楽しみですね。さらに期待して待ちたいです。それでは~

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