「ディナー・イン・アメリカ」(2020)
- 監督:アダム・レーマイヤー
- 脚本:アダム・レーマイヤー
- 製作:ベン・スティラー、ニッキー・ウェインストック、ロス・プットマン
- 製作総指揮:ステファン・ブラウム、ショーン・オグレー
- 音楽:ジョン・スウィハート
- 撮影:ジャン=フィリップ・ベルニエ
- 編集:アダム・レーマイヤー
- 出演:エミリー・スケッグス、カイル・ガルナー、グリフィン・グラック、パット・ヒーリー、メアリー・リン・ライスカブ、リー・トンプソン 他
作品概要
「バニーゲーム」で監督デビューを果たした、それまでドキュメンタリーでの撮影などをずっと続けてきたアダム・レーマイヤー監督によるパンクなロマンスコメディ映画。
孤独な少女があるきっかけでパンクバンドの男を匿い、奇妙な恋愛関係に発展していくというもの。
主演は「ミスエデュケーション」でクロエ・グレース・モレッツのルームメイトを演じたエミリー・スケッグス。またパンクバンドの男を「ビューティフル・ボーイ」などのカイル・ガルナーが演じています。
その他主人公の家族にはNETFLIXの「トール・ガール」に出演のグリフィン・グラック、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」のパット・ヒーリー、「キングス・オブ・サマー」のメアリー・リン・ライスカブらが出演。
ロマンスとかコメディとか言う言葉がお上品でこの作品に対して失礼なくらいに、今作はパンクで反抗的なわけですが、存在自体がパンクなのもまた久々に見た気がしますね。こびへつらう感じがないというか。
作品はサンダンスとかダブリン国際映画祭などで上映して賞も取っているようです。ただ、肝心の本国アメリカの公開がまだ?見たいですね。
というかIMDbみてみると、日本だけが一般劇場公開していて、ほかのほとんどの国は映画祭での上映かインターネット配信らしい。(参考:IMDb Dinner in America Release Info)
そう考えるとかなりのプレミア映画体験かも。
私は劇場で存在をしてから地味に楽しみにしていた作品で、公開週末に朝の回を観てきました。朝割と早い回ではあったのですが、意外に人は来ていましたね。
~あらすじ~
アメリカの片田舎。20歳になっても過保護な両親の元、バイト暮らしなパティ。
引っ込み思案でいつも孤独、近所の学生からからかわれる彼女の唯一の救いは、大好きなパンクバンドとその覆面ボーカリストであるジョンQ。
そんなパティと出会うのがサイモン。彼はドラッグディーリングをしつつ、世話になった先で奥さんとイケナイことをし、逃げる際に火を放ったことで警察に追われる身。
サイモンはしばしの隠れ家とパティの家に転がり込むが、実は彼こそパティの押しバンドのボーカルだった。
正体を明かさないままに、社会不適合な二人は奇妙な関係を発展させていく。
感想/レビュー
さっきも紹介のところで書いたのですが、この作品自体が非常にアナーキーというか。
存在そのものでこの世の中とか、少なくとも一つラブロマンスというジャンルに反抗して見せた痛快さを持っています。
インディペンデント映画の魂を持ち、メジャースタジオタイプには中指を建てる、非常に風変わりな形で展開していく純愛の物語でした。
タイトルはアメリカにおける家族の夕食。
そこでは家族の交流が暖かな空気とともに展開・・・されるわけもなく、今作では4回ほどもある全てにおいてとにかくメチャクチャな家族模様が映し出されます。
突き詰めていくとこの二人の社会不適合とされ孤独を抱える存在が、外から見れば両極的にもかかわらずそこ奥底にある部分でつながる話。
孤独な二人が出会うのは、まあロマンスとはそういうものだからと言えますが、何にしても今作がおもしろいのはその距離の詰め方というか繋がり方がぶっ飛んでいるところ。
ヘンテコで歪、不謹慎で失礼、でも最高に楽しかった。
演技が良いということもありますね。主演二人ともがこの独特(すぎる)な男女を見事に演じています。「ミスエデュケーション」の時と同じ俳優と気づかなかったくらいに、エミリー・スケッグスは変身。
ちょっとどんくさい上に、推しが強すぎて犯罪すれすれのセクハラをキメてしまうヤバめの女の子を熱演。
また何とも言えない汚いにいきそうでいかないエロさがあるサイモンも、カイル・ガルナーが好演しています。あのモヒカンとルックの割に全然ケンカできないとか、かわいい。
他の登場人物も総じてアホということから、奥底では実はこの社会不適合なパティとサイモンがまともに見えてくる。
お互いに家族の中で孤独であり問題を抱え、その自分自身であることを否定的に見られ続けているわけです。そんな傷跡を見ながら共鳴した2人が輝かしい。
ふと一見見れば、サイモンはけんかっ早くてやばいお兄さんですが、実は結構頭がいい。転がり込んだ先での機転の利かせ方とか、パティに対していろいろと教えてあげるとか。そして非常に繊細です。
私的にはあんなキャリアにならないバイトをさせるよりもまともな職探しを進めながら、未払いを許さないサイモンの方が立派な保護者に思えてきました。
やられてしまいましたけど、パティのためにバスで立ち上がってくれたり、正義感もありますね。
パティの生き方とか、すごく特徴的なファンレターとかも、おかしいとかトロいではなくそれこそがパンクなのだと示されます。
綺麗なタイプのものが好きならば合わないよという方もいるとは思いますし、もしかすると恋愛映画でありながらもデートには向いていないかもしれません。
それでも自分にはここまでも自由さや自分らしさを曲げないで存在するこの頑固で風変わりな映画が観れて嬉しく思えます。
完璧に美しく構成された作品ではないですが、主演二人が素晴らしい力を発揮してくれて、最高にパンクなラブストーリーになっています。
後悔規模の小ささがもったいないですが、せっかく世界でも珍しく劇場での公開がされているので、ご鑑賞をおすすめしたい。
というところで感想は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた。
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