「リトル・ウッズ」(2018)

  • 監督:ニア・ダコスタ
  • 脚本:ニア・ダコスタ
  • 製作:レイチェル・ファング、ティム・ヘディングトン、ガブリエレ・ナディグ、デヴィド・ストーン
  • 製作総指揮:フレッド・バーガー、ジョン・バッカルド、デヴィッド・ボーイズ、リア・ブーマン、トム・ドルビー、デレク・エスプリン、スザンヌ・フィルキンス
  • 音楽:ブライアン・マコーマー
  • 撮影:マット・ミッチェル
  • 編集:カトリン・ヘッドストローム
  • 出演:テッサ・トンプソン、リリー・ジェームズ、ルーク・カービー、ジェームズ・バッジ・デール、ランス・レディック 他

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ニア・ダコスタの監督デビューとなる作品。

「クリード」「マイティ・ソー:バトルロイヤル」などのテッサ・トンプソン、「ベイビー・ドライバー」などのリリー・ジェームズという注目の女優二人が姉妹として共演します。

作品は批評面で早くから高い評価を得ており、トマトメーターが高いことでも知名度を上げていますね。

また、ダコスタ監督がこの後ジョーダン・ピールが脚本を務める「キャンディマン」の監督に抜擢されたことも記憶に新しいところ。

今回は日本公開前に見る機会があり鑑賞。

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カナダ国境近くで暮らすオリー。

彼女は以前麻薬の運び屋をやっており逮捕され、保護観察処分を受けている。

そんな彼女の元に、妹のデヴが突然訪ねてきた。

彼女は幼い子供を一人育てながら、虐待的な元カレから逃げてきたのだという。

そしてなによりの問題は、デヴが妊娠していること。

彼女は子供を産むことはせず中絶を望んでおり、他にだれも頼ることもできずオリーの元へと来たのだった。

妹をなんとか守るため資金が必要になり、オリーに残された道は、再び麻薬の世界へと戻る事だけだった。

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テッサ・トンプソン、そしてリリー・ジェームズという注目の女優の共演ということで非常に楽しみにしていた作品。

そしてその点とても楽しめた上に、今作は意外な点で驚いた作品でもあります。

麻薬の運び屋への道、足を洗いたいけどそれが難しいというようなプロットはよくある話です。

ただ今作は、それ以上にそこから目得てくるものが大きかったと思います。

クライム映画というか社会派な作品。

ニア・ダコスタ監督は初めての作品にて、その荒涼とした風景に「ウインド・リバー」「最後の追跡」を思わせる、西部劇と閉鎖しふさぎ込んだ広大な土地を映します。

実際西部劇として扱われている本作ですが、マット・ミッチェルの撮影は広いのに寂しげで、暗く影を落とす感じがなんとも哀愁あるものになっています。

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ここではオリーとデヴを通して、バブル後の経済、医療と保険制度そして女性の身体の所有権についてが描かれています。

オリーの麻薬売買の実際は、石油工業にて働く肉体労働者の痛み止めにあたるものです。

おそらく保険適応外などで通常は処方されない麻薬を売っている。

なので犯罪行為ではありますが、人助けでもあるのです。

ブーミングした市場はその後見捨てられます。そこに一切の支援もなく。

そのシステムの不備はもちろんデヴが直接ぶつかります。

彼女が医療保険に加入していないことと負担が、受付での会話で聞こえますが、そのままアメリカ社会が抱える医療の問題になっていると思います。

子供を産む・そして産まないという選択肢。

それは妊娠する・しないから始まっている女性の身体に関する選択なのですが、男性と社会システムの2つに大きく影響されます。

1人のこどもすらまともに育てられない、育児参加もしていないくせに、「今度はちゃんと世話をする」などとよく言えたものです。

避妊をしなかったことがすべて男性の責任とは言えないですが、結果に対して身体的なものを伴わない男は逃げるのです。逃げることができる。

ただ女性は自分の身体のことですから、逃げるということはない。

であるならばしっかりと支えてあげる仕組みが必要なのに、それは整備されていません。

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今作は女性の登場人物が少なく、主役はオリーとデヴ姉妹。

そして彼女たちが対峙するのはいつも男、それも複数人です。

デヴが偽造書類を依頼するシーンでの怖さは身に染みるものでした。

唯一残された母の家ですら、売却に苦労します。

オリーとデヴの二人とカットバックで映されるエージェント。全く同一画面に映らないことが伝える隔絶。

「あなたの選択は他の選択肢と同じく良いものよ。」とオリーがデヴに言うのですが、果たして満足な選択肢が残されているのでしょうか。

この姉妹に与えられる選択肢は少なく過酷です。

そんな中で、ここから抜け出すという選択肢を捨て家族を救うことを選んだオリーに胸を打たれます。

ダコスタ監督は西部劇の中に女性を入れ込みながら、現代アメリカ社会特に地方における閉塞を描きます。

ジャンルとプロットの組み合わせとしてもユニークで、これからも題材と視点に注目したいと思う監督デビュー作でした。

感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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