作品解説
- 監督:ジェームズ・ガン
- 製作:ピーター・サフラン、ジェームズ・ガン
- 製作総指揮:ニコラス・コルダ、シャンタル・ノン・ボ、ラース・P・ウィンザー
- キャラクター創造:ジェリー・シーゲル、ジョー・シャスター
- 脚本:ジェームズ・ガン
- 撮影:ヘンリー・ブラハム
- 美術:ベス・ミックル
- 衣装:ジュディアナ・マコフスキー
- 編集:ウィリアム・ホイ、クレイグ・アルパート
- 音楽:ジョン・マーフィ、デビッド・フレミング
- 出演:デビッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト、エディ・ガテギ、アンソニー・キャリガン、ネイサン・フィリオン、イザベラ・メルセド、スカイラー・ギソンド、サラ・サンパイオ、マリア・ガブリエラ・デ・ファリア 他
1938年に発行されたコミックを原点とし、これまで幾度も映像化されてきたアメコミヒーローの原点にして頂点「スーパーマン」。この伝説的キャラクターを、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結」で知られるジェームズ・ガン監督が新たに映画化。
スーパーマン/クラーク・ケント役には、「Pearl パール」や「ツイスターズ」などで注目を集めるデビッド・コレンスウェット。ロイス・レインには、「アイム・ユア・ウーマン」などのレイチェル・ブロズナハンがキャスティングされた。
そしてスーパーマンの宿敵レックス・ルーサー役には、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で強烈な存在感を放ったニコラス・ホルト。
~あらすじ~
人々を守る超人ヒーロー、スーパーマン。彼は普段、大手メディア「デイリー・プラネット」で新聞記者クラーク・ケントとして働き、正体を隠して静かに暮らしている。
ピンチのたびに颯爽と現れ、超人的な力で人々を救うその姿は、誰もが憧れる存在だった。
しかし、彼のヒーロー活動が国境を越えて拡大するにつれ、世界はその存在に疑問を抱き始める。
恋人であり、唯一その正体を知るロイス・レインでさえ、「本当にこのままでいいの?」と問いかけるように。スーパーマンは、自らの“使命”に迷いを感じはじめる。
そんな中、スーパーマンを地球にとっての脅威と見なす天才科学者にして大富豪のレックス・ルーサーが、水面下で世界を巻き込む巨大な計画を進行。
彼は異国での紛争を引き起こしながら、スーパーマン自身も解読ができていなかった、彼の故郷の両親からのメッセージを解き明かし、それが世界中に大きな衝撃をもたらすことに。
スーパーマンはヒーローから一転して、異性から来た侵略者の烙印を押され、政府から拘束命令まで出てしまう。
感想レビュー/考察
今まさに必要なのは、大きく強く、めげない正義
どうあがいても分が悪いと思っている、スーパーマンの映画化。
なんといっても1978年に、スーパーマン本人が実在してしまったというくらいの衝撃、リチャード・ドナー監督そしてクリストファー・リーヴ主演の「スーパーマン」が誕生している。
コミックからそのまま出てきて、現実に存在しているようにしか思えない魔法ともいえる映画。牧歌的な、おとぎ話の世界と、有名すぎて人類の中で固定されているジョン・ウィリアムズのテーマ曲。
なぜいまもまだスーパーマンの映画を作るのか?フランチャイズのため?クロスオーバーのため?
そんなうがった考えしか出てこないくらいに、あまりに完成された作品があるというのは呪いでもあるように思います。
しかし、鑑賞して観ると、語り続ける意義がありました。
逆に言うと、今だからこそ貫いていくような、2025年現在の地球だからこそ必要な、大きく強い正義を描いている作品だと思います。
すでにさまざまなことが起きていて、世界は動いている
今作のOP。ボコボコにされて傷ついたスーパーマンで始まります。
字幕では彼が地球に来たこと、ヒーロー活動を始めたこと。他にも世界中に様々な超人がいることなどがさらっと示されていく。
いろいろなキャラクターが出てきますし、みんなが普通にスーパーマンのことを認識し、敵もいて。賑やかな世界はコミックを読んでいる感覚にも思えて楽しい。
思い返せば、すでに事が始まっている「スター・ウォーズ」そっくりな完成された世界への放り込みは、監督の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」第1作品目がまさにそうだったと思います。
そして同時に、混乱するほど様々なことが起きていて、何かが間違えるとこれは崩壊するんじゃないかって程の緊張感になっていることでもあるんですよね。
自問するスーパーマンを通して、それでも彼の変わらない本質を描き出す
今回の形式はオリジンを描くような、ゆっくり時系列で説明していくつくりではないので、戸惑ってしまうかもしれませんが、この作りはオリジンとしてまた正解だと思います。
目まぐるしく動いている世界で、慕われるヒーローであるスーパーマン。ですが、映画の初めに戦闘で負けてしまうなど完璧ではないってことが、一番初めに示されるんです。
これって、力があればいいっていう考えでもないわけで、「とにかく最後は超人パワーが強い方が正義。」みたいな論をはじめから否定しているのだと思います。
完璧ではなくて負けることもあるスーパーマン。その弱さや脆さが、次に彼の正義自体に降りかかります。
世界は争い、謀略を張り巡らせる。世の中の人々は流されて主張も変える。他国の問題に干渉してでも、人を救おうとしたスーパーマン。
彼の葛藤をロイスとのインタビューで語って見せる中で、その”スーパーマンとはだれか”、”彼は何を正義としているか”が試され、疑われ、そして自分自身でも見直していくことになるのです。
でもそれを通すからこそ、この新生スーパーマンの変わらない芯の部分を示すことになるので、はじめましてのオリジンとしても完成されるんだと思いました。
現実の問題を様々に意識した世界
現実社会とものすごくリンクの多い世界。
まずもって架空の軍事国家が、隣接している小国に軍事介入しているという点。まさにパレスチナ、ガザをめぐる問題にそっくりですし、強硬派のイスラエルを示しているとしか思えない。
その残酷な現実は回想されませんが、スーパーマンとロイスのインタビュー練習で語られます。
現実でも、欧州諸国やアメリカの機能不全から、人々を守れていない。だからこそそんなときに、スーパーマンのような力が盾となってくれたら。。。そう思ってしまう。
現実のパラレルとして非常にタイムリーです。
周囲からの批判、移民への冷たい目線
そしてそのスーパーマンのどうしても人を見捨てられない姿勢が、SNSでは炎上を招いてしまう。
実はほとんどはレックス・ルーサーが猿を使って捨てアカで描きまくっているのですが、世論はそれに騙され先導されてしまうのです。
これは現実にも多く見られることでしょうし、SNS周りはジェームズ・ガン監督自身が経験したことも大いに込められていると思います。
そして、今回は人助けを徹底的に行うスーパーマンが、自分のアイデンティティにも大きく揺れていく。
彼はなんども異星人と呼ばれ、レックス・ルーサーは絶えず”エイリアン”と呼び続けます。よそ者、そして外国人の意味もある。
まさに移民問題にもかかわるような、スーパーマンというテーマを掘り下げているのです。
自分がどんな運命を背負っていても、自分は自分の選択の先にある
しかも、今回はさらにとても厳しい宿命が彼を襲う。
崩壊したクリプトン星から送られた両親のメッセージ。OPでの敗北の際にも、自身の気持ちの拠り所として何度も再生していたあのメッセージの全容。
それは彼を地球の支配者にし、再びクリプトンの栄光を取り戻すように言うものだったのです。
悪意に満ちているわけではないものの、より優れたカル・エルこそ、地球を統治することで地球人は愚かな争うを止めるからということです。
周囲の反応も、そして自分自身が何者であるのかも、すべてが信じていたものと違ってしまった。
打ちのめされたスーパーマンが、あらためて地球人クラーク・ケントとしての実家に帰るシーンが最高。
「親が子にどうなるべきとは言えないんだ。必要な時にそばにいるだけさ。お前の選択と、お前の行動が、お前が誰なのか決めるんだ。」
あそこで本当にちょっとしか出ていない、父親役のプルイット・テイラー・ヴィンス、素晴らしかった。
どこから来ていても、どんな目的を持たされていても。自分が何をするのかが大切。
どんなことを言われても、何が起きていても、スーパーマンは絶えず人の命を救うことを優先します。小さなリスすら救う。
様々なものをぶつけた先に、スーパーマンの本質が残る
今回は徹底的にスーパーマンを叩くことでそこから彼の真の姿とアイデンティティを確立した。
市民に支えられ、子どもたちが希望の印として名前を呼ぶ。
文字通り分断されようとする街をつなぎとめて、手を取り合うことを掲げていくというのは、まさに何もかもが分断対立を重ねる今の私たちの世界に必要なヒーローだと思います。
要素が多いなって感想も正直分かるのですが、希望の象徴としてのスーパーマンを描きこみつつ、彼の本質を再定義して見せた。
そしてその姿こそが今の私たちの生きる世界に必要なのだと、高らかに宣言した快作だと思います。
映画館の大画面でその雄姿を見るべき作品。こちらかなりお勧めです。
今回の感想は以上。ではまた。
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