「ミッション:インポッシブル フォールアウト」(2018)
作品解説
- 監督:クリストファー・マッカリー
- 脚本:クリストファー・マッカリー
- 原作:ブルース・ゲラー 「スパイ大作戦」
- 製作:トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、ジェイク・マイヤーズ、J・J・エイブラムス
- 製作総指揮:デヴィッド・エリソン、デイナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー
- 音楽:ローン・バルフ
- 撮影:ロブ・ハーディ
- 編集:エディ・ハミルトン
- 出演:トム・クルーズ、ヘンリー・カヴィル、レベッカ・ファーガソン、サイモン・ペグ、ヴィング・レイムス、ミシェル・モナハン、アレック・ボールドウィン、ショーン・ハリス、アンジェラ・バセット、ヴァネッサ・カービー 他
言わずと知れたスパイアクション映画、ミッション:インポッシブルシリーズ第6作品目。
主演はもちろんトム・クルーズですが、今回は前作も監督を務めたクリストファー・マッカリーも続投、さらにレベッカ・ファーガソンも出演など、前からの流れを色濃くした作品となっています。
サイモン・ペグらIMFメンバーに加えて、CIAエージェントとしては「ジャスティス・リーグ」(2017)などのヘンリー・カヴィル、また彼の上司には「ブラックパンサー」(2018)のアンジェラ・バセットも出演しています。
海外での試写の時点でものすごい高評価、あのジョージ・ミラー監督「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)以来のアクション映画とも言われ、一般層でもシリーズトップの評判で、とても楽しみにしていました。
個人的にはマッカリー監督とトムのコンビは「アウトロー」(2012)から好きで、2人が続投してMIをとると決まったときから期待していましたけども。
初日はちょっと観に行けなかったですが、土曜日に通常2D、日曜日にIMAXで鑑賞。さすがに夏休みも始まっていますし、日本でも人気のシリーズともあって、ほぼ満員でした。
~あらすじ~
IMFの活躍により犯罪集団シンジケートのリーダーであるソロモン・レーンが捕まってから2年。
新たに”ジョン・ラーク”なる雇い主を得たシンジケートの残党”アポストル”は各地でテロ行為を繰り返していた。
イーサン・ハントの元には、またも新たなミッションが舞い込むことになる。
アポストルが、マフィアによって盗み出されたプルトニウムを手に入れることを阻止するのだ。彼らから一度は奪ったプルトニウムだが、イーサンは仲間が人質にされたことで、プルトニウムの奪還よりも仲間の命を選んだ。その結果としてプルトニウムは敵の手に渡ってしまう。
判断のミスを非難されるイーサンには、CIAよりエージェントウォーカーが同行し、ジョン・ラークを捕えプルトニウムを今度こそ奪還する任務が与えられるが、そこにあのイルサ・ファウストも現れ、任務は混迷を極めていく。
果たしてプルトニウム核爆弾の製造とそれによる世界の崩壊を食い止めることはできるのか。
感想レビュー/考察
トム・クルーズを代表する、そして現行のアクション映画シリーズの中でも進化し続けているミッション:インポッシブルシリーズは、前作「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」でIMFの根幹の再定義と共に、MIシリーズひいてはスパイ大作戦の魅力とは何かを見事に描いていたと思います。
その点で今作は、前作のスパイ大作戦感も残しつつ、アクション面を比類なきレベルにまで高めつて映画MIシリーズの信じられない超人的描写を上げてきました。
なによりも、イーサン・ハントと言うスーパースター、ヒーローを限界まで試しています。
そうですね。今作はしっかりシリーズの流れを含みつつ、イーサン・ハントを追い込みまくっていく作品でした。
アクション面がぶっ飛んでいるのは、今作で一番目立つところでしょう。
いまや56歳となったトム・クルーズが、跳んで走って運転して。
アクションはカーチェイスにバイクチェイスにパルクール的疾走、銃撃戦に肉弾戦、フリーフォールやヘリコプターチェイスまで盛りだくさんで、それが次から次へと繰り出されてきてクラウラします。
上映中は思わず「危ないっ!マジかよ!」と緊張が絶えず、息もつけない状態でした。
純粋に楽しいのです。アクションという、ハラハラドキドキは映画の歴史です。
追走劇もガンファイトも、人がギリギリで危機を脱するとか、ぶつかりそうになりながら車が街を爆走するとか、全てのアクションはただその動きで人をひきつけ夢中にさせてくれます。
映画言語のアクションで、観るだけで誰しもがピュアに興奮できる。映画館の中で呼吸も忘れて画面に見入ることの幸せをかみしめました。
トム・クルーズはただ危なっかしいアクションをして、見世物的にやっているわけではないですね。
しっかりアクションにおける画作りとか展開とか、つながりも考えられていて、やはり彼はアクションが好きで、だからこそのプロ中のプロなんだなと尊敬してしまいます。
中盤でのドライビングシーンとか、「アウトロー」(2012)でのマッカリー監督とトム自身のアクションの魂が蘇ってきましたよ。車のエンジン音、トムの運転技術と重みのある車の動き。
もちろんスタントなしでの度胸も素晴らしいし、イーサン・ハントへの心配が、実際にトム・クルーズが死んでしまうのではないかという心配に直結する、その確かな感触のあるスリルも最高です。
やはりどこまでCG技術が発達しても、実写に勝るものはないですね。何しろ役者の表情に全てが見えます。切羽詰まった感じが演技じゃなくて顔に出るので、こっちもヒヤヒヤするんですよ。
しかし私が好きなのは、それ以上に、すさまじいアクションシークエンスの目的がはっきりさせられていて、見せ方も真面目なところです。
今作のアクションでは、出発点と目的地がはっきりしていることが多いです。
ここからここまで行く。こいつがこうする前に追いつく。手段と段階とかが整理されていて、ド級のアクションだけに集中して楽しめるように配慮されています。
観客はなんかアレおかしいだろ。とか、そもそも何でこんなことしてんの?というノイズも入らない。ショーを最大限楽しめるようにしています。ホントに見事です。
またそのアクションにおける技術面も素晴らしいですね。
最近は色々な技術がありますが、ハリウッド全体の撮影技術も確実に上がっていると思います。
フリーフォールはそれ自体難しいのに、ワンカット(もしかすると疑似かもですが)でかなり視点移動をしていたり、やはりパリの街での追走劇(バイクと車で二度おいしいw)もスピード感と臨場感が半端ないです。
そこで強くおすすめしたいのが、IMAXでの鑑賞。ラストアクションにおけるヘリチェイスの鮮明さと抜けはその自然風景含め素晴らしい映像体験ですよ。IMAXおすすめです!
まあ激しくない撮影面でも、特にイルサとイーサンが並木道で会話するまでのシークエンスとかも好きですね。
空間構造を巧く使って、一歩進めば全く違う風景になったり、それが異なる世界を行き来しながらも、結局はどこへ行っても抜け出せないような迷路に感じます。それに、木々が檻のように見えるのも見事でした。
さて、ひとつアクション映画としては格の違いを見せつけていて、トム・クルーズはじめクルー全員が一体となって、とにかく観客に楽しんでもらおうという姿勢が伝わり、気持ち良く観ていけます。
その整理された限界アクションに加えて、細部の構成も、ストーリーテリングとして組み立ても巧いと思います。
印象づけの巧みな作品はだいたい好きなんですが、その後活きてくる何かをワンカット入れ込むんですよね。
あくまで自然な流れですが、その後機能するってプロップを観客の無意識に埋め込むのはさすがですね。それによって、展開に違和感がなくなりますし。
騙されているふりして騙すというIMFらしさを炸裂させる場面も含め、各所でアイテムの画面への登場タイミングがナイスでした。
それにイーサン含めIMFとか各組織がしっかり出し抜きあっているのも良い。
体使うだけの
あと、個人的には今回のローン・バルフの音楽が好きです。
ちょっとハンス・ジマーの「ダークナイト ライジング」でのスコアっぽさもああるなぁと思ったら、ジマーと共同製作が多かった作曲家さんなんですね。つまりこれは彼のテイストなんです。
スコアは有名すぎるラロ・シフリンのテーマを組み込みつつ、現代的静けさと緊張を押し出した音楽ですごく良かったと思います。
脚本面で、スパイ映画らしいミステリーに追加されていたのは、今までシリーズでは見られなかった、夢や想像ですね。
イーサン・ハントの想像する最悪のシナリオ、イーサン・ハントが陥るかもしれない闇。
ホントイーサンを追い込みます。彼の今までの全ての善意が、最悪の結果を招き、死の灰(フォールアウト)を降らせてしまうかもしれない。
シリーズ通して何度もIMF解体があったり、孤立無援で戦ってきた彼が、その忠誠をいつまで持てるのか。
彼の信用対象はIMFだけになっていて、ともすればそのやり方はテロ組織と変わりないかもしれません。
しかし今作でマッカリー監督は、イーサン・ハントの本質をもう一度定義し直し、映画史に残るヒーローを輝かせます。
彼は仲間を捨てず、無実の人を殺さず、政府でも組織でもなく、人を救うという行為に忠誠を誓う男です。
ルーサーを選んだこと、警官を撃てずまた見殺しにもできなかったこと。
イーサンが殺しの人ではないことを物語ります。
大義名分も大事、彼は大勢の人間を救いたい。だけど、シンジケートやアポストルと違い、そのために罪もない人が死んで良いとは絶対に思わないのです。
大事な人も、世界中の人も両方救う。
そのためにいつも全力なイーサン・ハント。
ルーサーの言うとおり、
「イーサンはイーサンだ。」
“Same Old Ethan.”
彼がスクリーンに登場して以来、敵や危機は姿を様々に変えてきました。
でも彼は変わらない。走ってぶら下がって。それはいつも、これからも人の命を救うためなんです。
それは同時にトム・クルーズの再定義でもあります。
56歳にして相変わらずスタントなし体当たりでアクションを繰り広げるのは、一見疑問に思われるかもしれませんが、彼はアクションを愛し、それで人を楽しませたいのです。
出来る限り本物を見せて、観客が手に汗握って興奮してくれれば良いんですね。昔も今も、トムはトムなのです。
ここまでアクションを愛し、それを楽しむ観客を大事にし、そしてMIシリーズ、イーサン・ハントへの想いに溢れた作品。
感謝と尊敬ばかりです。
アクション映画を観る楽しさはこれです。こういう映画があるから私はアクション映画を観つづける。
今回はかなり長くなってしまいましたが、本当にスゴイ作品です。難しく考えず、アクションがヤバいって感じで観て全然いいです。ってか、そういう真っ直ぐな楽しさこそこの作品の魅力です。
とってもおすすめ。ここまで到達して見せて、トムは、MIシリーズはこれを超えていくというのでしょうかね?超えてほしいですね。
限界を感じさせない、素晴らしいトム・クルーズ映画、スパイアクション映画でした。
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