「ファスト・カラー」(2018)

  • 監督:ジュリア・ハート
  • 脚本:ジュリア・ハート、ジョーダン・ホロヴィッツ
  • 製作:ジョーダン・ホロヴィッツ、ミッキー・リッデル、ピート・シライモン
  • 音楽:ロブ・シモンセ​​ン
  • 撮影:マイケル・フィモナリ
  • 編集:マーティン・ペンサ
  • 出演:ググ・バサ=ロー、ロレイン・トゥーサント、デヴィッド・ストラザーン、サニーヤ・シドニー 他

fast-color-2018-movie-review

「マイ・ビューティフル・デイズ」のジュリア・ハート監督が、超能力を持つゆえに追われる女性と彼女の家族を描くSFドラマ。

主演は「ベル -ある伯爵令嬢の恋-」「女神の見えざる手」などのググ・バサ=ロー。また彼女の母親役にはロレイン・トゥーサント、娘役にサニーヤ・シドニーが出演。

監督自ら脚本も執筆し、SXSWにて上映、2019年になってから北米での一般公開もされた作品です。

日本での公開や配信は現在のところありませんが、海外ではすでにソフト販売もされていて、安かったのとバサ=ロー主演ということで購入してみました。

fast-color-2018-movie-review

近未来。地球では気候変動の影響か、8年もの間、雨が降らない状況が続いていた。

水の価値は高騰し、荒廃していく地で、ルースという女性が旅をしている。彼女は人目を避け、語らず静かに行動する。

彼女の目的は母と娘のいる家へ帰ることだが、同時に何らかの組織に追われてもいる。

あるモーテルにルースが泊まった夜、彼女は発作を起こし、それに呼応するように大きな地震が起きるのだった。

fast-color-2018-movie-review

ジュリア・ハート監督はややストレートであり分かりやすくも思えますが、スーパーパワーとフェミニズムを織り交ぜたドラマを展開しています。

また作品の感情面は主演のググ・バサ=ローなどの強い演技で支えられていて、随所に入れ込まれる人と対比された美しい風景も魅力だと感じました。

スーパーヒーローのオリジン映画でもあり、またSF映画であり家族の再生映画であり、何よりフェミニズムの流れを汲んだ女性のエンパワー映画でもあるという、かなり多面的な見方のできる作品になっています。

私としてはこの多面性や、それぞれの方向へ無理に叫んだりしない抑えられたトーンも好きです。

どんな映画なのかを、観る人それぞれにゆだねているというか。観ている側が各隙間を埋めて、自分の中でこの作品を完成させ、メッセージを作っていくのだと感じます。

fast-color-2018-movie-review

ググ・バサ=ローは好きな俳優ですけれど、今回もこの主人公ルースがどのように生きてきたか(生き抜いてきたか)、その所作の中にとてもよく入れ込んでいます。

個人情報を決して自分から出さない。いつ動き、いつ止まるべきか心得ていて、警戒心がすさまじい序盤。それに対比して娘と過ごして、失っていた時間を埋め合わせようとする穏やかさ。

また絶えず自分自身に恐れを感じているなど、実際には台詞こそそんなにないのですが、彼女は良いリードでした。

また力を持つ女性であり、そして呪いのようにそれを受け継いできた母親役のロレイン・トゥーサントも腰の据わった感じがカッコよかったですね。

彼女たちにとって外は過酷な世界です。傷つけられ、酷い人間がいる。それは外へ出ることを夢見るリラに、ルースが言った言葉の通り。

家の中にはお花の絵など安らぎが感じられますし、この家と周囲であれば能力も使っていい。

fast-color-2018-movie-review

外からの脅威と、リラの外の世界への欲求。

超能力による世界の色彩とか、真っ青な空と小さくも暖かな明かりの灯る家などふと心奪われる撮影の美しさ。

「少しでも光の元へ出れば、それを許さない。輝くものがあれば必ず、私たちを求め、傷つけるものが現れる。」

安息の地をあの小さな家だけとしていましたが、ついに女性たちはその真価を余すところなく見せ、生きることを選びます。

天地を変えてしまうほどの、神のような力。

もしも彼女たち、女性たちがその力を自由に使っていれば、この作品内のアポカリプス状態自体が避けられていたのかも?

自分を縛るものをほどき、閉じ込める扉を無に帰す。

ルースの旅の中で、彼女の泊まる宿、そして助けてくれたパブのオーナー。みんな女性なんです。男性は父を除いて、狩人であり、ルースをトロフィーとして扱います。

fast-color-2018-movie-review

全ての集約からして、私には女性のエンパワーメント映画でした。もちろん多様な見方ができ、個人のドラマとしても良かったです。

強いて弱点となるのは、語りが少なく多面的ゆえに、どの方面でも突き抜けてはいないことでしょうか。

スーパーヒーローものとしてのカタルシスや、フェミニズムとしての爽快な部分までは至らないのも、まあコンセプトゆえかと。

いずれにしても、ジャンルミックスでとても考えて観るのが楽しい作品でした。

感想としては以上となります。前監督作が遅れましたが日本公開もされましたから、劇場ないしは配信で日本でも観れるようになるんじゃないかと思います。

興味のある方は海外版ソフトが安いので、そちらをおすすめします。

ということで今回はおしまいです。

それではまた次の記事で。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です