「ウェットランズ」(2013)
- 監督:デヴィッド・ヴェンド
- 脚本:デヴィッド・ヴェンド、 クラウス・ファルケンベルク
- 原作:シャーロット・ロッチ『Wetlands』
- 製作:ピーター・ロンメル
- 音楽:エニス・ロトホフ
- 撮影:ヤコブ・ベナロウィッツ
- 編集:アンドレアス・ヴォドラシュケ
- 出演:カーラ・ジュリ、メレート・ベッカー、マーレン・クルーゼ、クリストフ・レトコフスキー 他
ドイツの青春映画で、監督は「帰ってきたヒトラー」のデヴィッド・ヴェンド。
シャーロット・ロッチによる同名小説の映画化で、性を探求する風変わりな少女が、入院中に看護師の男性を誘いつつ、離婚した両親の再会を画策する物語。
主演はカーラ・ジュリ。「ブレードランナー2049」で、アナ・ステリン博士役を演じていた方ですね。本作で国際的に知名度を上げていたようです。
内容的に、割と変態まっしぐらな少女がことあるごとにアソコやお尻の穴をいじるもので、いろいろな意味で話題になった作品。
批評面での評価は結構いいものではあります。
日本では公開されていない?かと思いますが、海外版でブルーレイが出ていて観れたので鑑賞しました。
痔核を患うヘレンは、衛生面にかなりうるさい母の言いつけを無視し、汚いトイレの便器についた妙な汚れをアソコでふき取るなどのぶっ飛んだ行為をしていた。
アソコから出た液をなめてみたり、まるで香水のように首筋に付けてみたり。
ある日ヘレンは、女性のシェービングとしてお尻の穴周りの毛を剃ろうとして失敗、傷を負ってしまい入院、そのまま痔の手術をすることに。
ヘレンはそこで出会ったロビンという看護師に、挑発的な行為をしたり自身の性の探求話をしたり、彼を困惑させる。
しかし彼女の目的は、自分のお見舞いに、今は離婚してしまった父と母を同時に来させて再会させることだった。
割とぶっ飛んでいて、人を選ぶかもしれないとは思うものの、しかしチャーミングさで全てカバーしてしまうタイプの作品です。
エロティックさは終始、グロや痛い描写もありますし、登場人物にはブラックな部分もあります。
それらすべてがどこか笑えるようになっているので、イラついたり不快に思うことはなくそれが心地よく感じました。
とにもかくにも主役のヘレンを演じたカーラ・ジュリの魅力につきますね。くるくるカールの髪でカラフルネイル、スカートでスケートボードのルックも可愛らしい。
そしてキュートでありながらも何かたくらむ笑顔、悲しみや寂しさを抱える繊細な表情まで、リードとしてすごく素敵に輝いています。
彼女の性の冒険や両親との記憶、またカギとなる悪夢的ビジョンなど、映像の面でもすごく楽しかったこともあります。
OPすぐの細菌ワールドで「なんだこれ」となって、ライティングにより色彩の強烈なビジュアルや、ワンカット風に展開される妄想オナニーシーンなど、ヘレンの頭の中のカオスやある意味自由な思考が繰り出されていく。
無軌道に見えるヘレンの性の探索も、ちりばめられるビジュアルからその目的が薄く見えてくるかと思います。
また、性の描写に関しても、まあエロティックでありながら、明るいカーラ・ジュリの奔放な感じと、身体的(女性の身体として)なディスプレイとしてその痛みや負担も入れ込まれており、ここに男性的な目線が感じられなかったのも良かったです。
そもそものシェービングも日本では義務化ってくらい女性になんか圧がかかってたりしますし、生理のこととか女性器の清潔、感染症、検診など、赤裸々ですが見えてくるものが多いはず。
ヘレンと親友コリーナの一線を越えた性自由主義な遊びも、そういう意味では身体的な変化や負担のある女性同士が、それを楽しんでいこうという姿勢にも見えました。
ヘレンの物語は、通して見るとずっと自己完結的でしたし、どこか自己破壊的であります。突飛な行動のすべては、誰かに注目してもらうため。
性的な部分(若い女性に対して周囲の男性が向ける目?)を敏感にキャッチし、利用して寂しさを埋めようとしていたのかも?
カミングエイジストーリーとしても親密ですが、やはり彼女にあるのは、抱えたあるものをどう扱っていいのか分からない事。それゆえに真っ直ぐに人と向き合えないこと。
それは両親が戻れば自然に修復されると考えていたようですが、そうではありませんでした。
誰かにしてもらうのではなく、荷は自分でおろしていく。自分の人生を歩み始めるラストにほのかな清々しさを湛えています。
かなりぶっ飛んだ、下手すると下品で不快な描写がある中で、それを快活にみせてしまうトーンとカーラ・ジュリの魅力が炸裂する作品。
女性の成長や性、体の変化などをうまく含めながら、少女が一人の女性へと踏み出していくさまをユニークかつフレッシュに描いた素敵な映画でした。
エロとグロがある「アメリ」みたいな作品で、人を選ぶとは思いますが興味があれば一度鑑賞をおすすめするドイツ映画です。
感想はここまでとなります。最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の映画の記事で。
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