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「荒野のストレンジャー」”High Plains Drifter”(1973)

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映画レビュー
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「荒野のストレンジャー」(1973)

  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 脚本:アーネスト・タイディマン、ディーン・レイスナー
  • 製作総指揮:ロバート・デイリー
  • 音楽:ディー・バートン
  • 撮影:ブルース・サーティース
  • 編集:フェリス・ウェブスター
  • 出演:クリント・イーストウッド、ヴェルナ・ブルーム、マリアンナ・ヒル 他

イーストウッド監督作2作目、そして西部劇としては彼の最初の監督作です。

そしてこの西部劇にはレオーネやシーゲル監督の影響を受けつつイーストウッドの世界観を打ち出していると思います。

すごく奇怪な西部劇で、従来のアメリカ西部劇、そしてイタリアマカロニウエスタン両方を脱構築しているように思えます。ジョン・ウェインはかなり嫌っていたようですね。

王道西部劇でもなく、マカロニでもなく・・・まさにイーストウッドの西部劇です。

遥か彼方からひとりの男が馬に乗ってやってくる。

たどり着いた町で、3人のならず者を有無を言わさず撃ち殺した男。住人たちはその腕前に驚き、町の護衛を頼むことに。

というのも、この町で保安官をなぶり殺しにした3人の極悪人が、自分たちを刑務所へ送った街の住人に復讐するのを恐れているのだ。

住人達は引き受けてくれれば何でも言うとおりにするという。そして男は護衛として雇われ、とんでもない命令を下していく・・・

この映画、いわゆる流れ者が町にタイプです。「シェーン」(1953)のような始まりです。

しかし主人公の設定がとんでもないのです。

出自が良くわからないのはそれこそ「荒野の用心棒」(1964)でも同じですが、それ以上に人格に不可思議さがあると思います。とにかく正義なのか悪なのか、観ていて判断できません。

とにかく要求がめちゃくちゃなのです。こういった点はいままでの西部劇には主人公としてあるまじき行為ですし、マカロニにしても派手で意地悪すぎますね。

あげくの果てには、なんと町を赤いペンキで塗り、看板には地獄へようこそと書いてしまうのです。

今までの西部劇はここに崩れ去ります。もう王道も何もない、イーストウッドの西部劇。

そしてだんだんとわかるのはこれが超自然的で寓話のようだということ。

そう、まさに死者の復讐劇です。炎をバックに、顔も見せずに鞭打つその影は、まさに地獄の断罪人。

否応なく思い出される、過去に見殺しにされた保安官。何もせず見ていた住人たちの罪。

「真昼の決闘」(1952)におけるケインが経験した、孤立無援で悪に立ち向かうこと。それが残酷な結末を迎えていたら。そのもしもをここで描いているわけです。

自身を殺した奴をなぶり殺しに、見殺しにした住人からは生活と町を奪います。

唯一彼が寄り添うのは、町ではのけものだった弱い小男だけです。

全て焼き払い復讐を終えたこの男は、立てられた墓を指さして「俺の名前は知ってるはずだ」と言い残し去っていきます。

王道西部劇のアメリカ精神など失った住民を描き、レオーネのユーモアとガンファイトを絡め、そして正義が行われないシーゲルの社会批判、イーストウッドの弱者のために果たすダーク・ヒーロー要素。

すべてが重なって全く新しく衝撃的な西部劇になっていると思います。

奇妙で独特の西部劇、おススメの映画です。

そんなところでまた次に~

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