「本当の目的」(2015)
作品概要
- 監督:ダリヤン・ペヨフスキ
- 脚本:イゴール・イワノフ、ダリヤン・ペヨフスキ
- 製作:トミ・サルコヴスキ
- 音楽:アレクサンダー・ダリヤン・ペヨフスキ
- 撮影:ディモ・ポポフ
- 編集:ヴァルジマール・パヴロフスキ
- 出演:イレーナ・リスティック、カムカ・トシノヴスキ、アデム・カラガ 他
マケドニアのダリヤン・ペヨフスキ監督が、列車で出会った二人の女性のそれぞれの抱える真実と、そこで生まれる奇妙な友情を描く作品。
主演はイレーナ・リスティックとカムカ・トシノヴスキ。二人ともマケドニアでは有名な俳優なのでしょうか?
全然知らない作品ではあったのですが、Amazonプライムビデオにて配信されていましたので観賞。
めったにない機会だったのと、あらすじを読んでみてみました。
マケドニアの映画って人生で初めて観ましたね、ヨーロッパ映画ではあるのですが、これまた独特な雰囲気がありました。
~あらすじ~
売春婦として働いていたマリカは、借金の取り立て屋に暴行され、反射的に男をナイフで刺し逃走した。
彼女は街を離れ列車に乗り、同じ車両でヤナという女性と出会う。
ケガの理由をごまかすマリカは、泊まるところも頼る人もいないためヤナを追いかけ、田舎村の山小屋に押し掛ける。
ヤナはマリカを一晩だけ泊めることにするのだが、ヤナには彼女の事情があり、この田舎の故郷の村へと戻っていた。
まだヤナが少女だったころ、双子の妹と古い友人との間に起きたこと。
感想/レビュー
ふさぎ込む世界にわずかに開く息のできる穴
不思議な閉塞感の漂う作品でした。
画面に対する構成とかそのカラーリングからくるものでしょう。
しかし終始息苦しいわけではなく、私は心地よさも感じるものです。
この作品の色彩のなさ、全てに感じる脆さ、もしくは既に壊れてしまっている感覚。
人物の抱える、あるいは舞台が持つ閉鎖性や閉塞感が作品全体を飲み込んでいます。
しかしその中で、マリカとヤナに生じていく奇妙な友情と連帯に、どこか安息を見ているのかもしれません。
序盤に展開される理不尽な暴力とそこからの否応ない事件。
少なくともマリカの事情は観客に共有されているので、あとはヤナの側の事情が解き明かされていく。
その手法自体がこれまた塞ぎこんだ世界ならではです。
被害者としてつながり安らぎを得る二人の女性
帰省した村ではほぼ全ての人間がヤナを知っている。
世界に広く知られているとは、逆に外側を奪われることで、非常に狭いということなのです。
その、言わずに分かるという世界において、お互いの抱える傷を言わずに感じ取っていく。
だからこそ、ヤナもマリカもお互いを最後まで攻撃は出来ないのですね。
どうしても、同じく虐げられたものとしてつながりを感じるから。
この二人の関係性は、表立ってベタベタしないし、またお互いの道はそれぞれに尊重している、絶妙な距離感です。
車という外出する乗り物が、ガレージという閉ざされた空間にある中で、音楽をかけて酒を共有するシーン。
車という乗り物であるのでやはり二人はどこかへと行きたいという気持ちがあると思えます。しかしガレージの中に置かれては、身動きはできない。
二人の詰まった感じと、その中で見つけたお互い、また別れも予感させていてすごく好きなシーン。
生の清算と解放
ある過去を抱えるわけありの女性二人が、旅を共にし・・・欧州の空気でありながらも独特な重さも感じ、女性映画的でもあります。
たぶん、プロットはよくあるものなのかもしれません。
それでも、今作は欠けた色彩の淡い世界の中で、自分の生の清算と解放。
邪推になるかもしれませんが、「この国自体が売春婦みたいなもの」というセリフ、マケドニアを考えるに、囲まれた中での国自体の窮屈さや抑圧も重なっているのかなと思いました。
主演の二人のアンサンブルも良く、少ない要素と繰り返されてきた物語でありながら、しっかりとユニークな空気をその画面の色彩や静けさなどから感じさせてくれる作品でした。
そもそもマケドニアからの作品というのがとても珍しく、無学な自分には少しでも新しいものに触れる機会になったので良かったです。
ちょい不思議な空気の「テルマ&ルイーズ」のような、しんみりしていながら爽快でもある映画です。
もしよければAmazonプライム配信されているうちにご覧ください。
感想は以上になります。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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