「マリグナント 狂暴な悪夢」(2021)
- 監督:ジェームズ・ワン
- 脚本:アケラ・クーパー
- 原案:ジェームズ・ワン、イングリット・ビス、アケラ・クーパー
- 製作:ジェームズ・ワン、マイケル・クリアー
- 製作総指揮:エリック・マクレオド、ジャドソン・スコット、イングリット・ビス、ピーター・ルオ、チェン・ヤン、マンディ・ユー、レイ・ハン
- 音楽:ジョセフ・ビシャラ
- 撮影:マイケル・バージェス
- 編集:カーク・モッリ
- 出演:アナベル・ウォーリス、マッケンナ・グレイス、マディー・ハッソン、ジョージ・ヤング、ジェイク・アベル 他
作品概要
「Saw」や「死霊館」シリーズを生み出してきたホラー作家であり、「ワイルド・スピード SKY MISSION」や「アクアマン」などのブロックバスターシリーズ監督にも抜擢されるジェームズ・ワンがオリジナル脚本で送るホラー・スリラー。
主演は「アナベル 死霊館の人形」に出ていたり「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」でヒロインを演じたアナベル・ウォーリス。
主人公の少女時代を演じるのは、「gifted ギフテッド」など大活躍中の子役マッケンナ・グレイス。
その他、ジョージ・ヤング、ジェイク・アベル、マディー・ハッソンらが出演しています。
いまやジャンルを超えて様々なプロジェクトに引っ張られていくクリエイタージェームズ・ワン監督の新作ともあればまあ楽しみにはしていたのですが、今回はR18指定をくらっているんですよね。そのせいかあまり広告宣伝はなかった気がします。
それこそ死霊館新作なんかはCMも結構見た気がしますが。
タイトルの”マリグナント/malignant”というのは「悪性、悪性の」という意味で、今作のある真相に対する示唆になっています。
今作も例に漏れず、2020年公開予定の作品でしたが、コロナ感染症の拡大で延期になった1本です。ホラー映画こそ逃げ場なく止めることもできない環境である映画館で光りますから、遅れてはいても無事に劇場公開できたのは良かったですね。
後悔した週末に観に行ってきたのですが、結構混みあっていました。
~あらすじ~
妊娠しているマディソンは、支配的で暴力的な夫の暴行により後頭部を強打して怪我を負ってしまう。
マディソンは夫を部屋から閉め出し夜を過ごすが、何かが家に侵入し夫を惨殺。彼女も襲われて気絶してしまう。
病院で目覚めた彼女は流産しており、彼女を気にかけてくれる妹をよそに絶望したマディソンはふさぎ込む。
しかし、マディソンは急な金縛りの中で動けなくなり、まるでその場にいるような臨場感で夫を殺害した何かが別の人間を殺害する現場を見てしまう。
幻覚にも悪夢にも思えるそれは、現実に起きていたことを知ったマディソンは、警察に警告するが、あまりに超常的でまともに取り合ってもらえない。
しかし再び悪夢がマディソンを襲うとき、この怪奇現象と連続殺人が、彼女自身の出生や出自にかかわっていると知るのだった。
感想/レビュー
変容し展開の読めない異物
この作品について語っていくことは何をもっても仕掛けについて触れてしまいネタバレになってしまうのでその点ご容赦ください。
そのぐらいにこの作品は変容をします。
なのでいろいろと知ったり見聞きする前に、とにかくヤバい狂った映画だということだけを念頭にしてできる限りまっさらに観に行ってほしいと思います。
ホラー映画ではありますが、絶対に楽しめる作品に仕上がっていますので。
さて、ジェームズ・ワン監督は彼自身のキャリアにおけるレベルアップを次の作品にしっかりと昇華して来ている印象です。
彼は「アクアマン」にて大プロジェクトオリジンを任せられ、ブロックバスターの作品のつくり方を自分で確立したのでしょう。
私は「アクアマン」における複数の映画を見ているかのようにモリモリエンタメに振り切ったスタイルをそのまま適用したホラー映画だと思っています。
大きく3部構成になる今作は一本の主軸を持ちながらも、それぞれにおいてすの顔を変えていくんですよね。
スーパーヒーロー映画でシェイクスピアに乗せてインディ・ジョーンズにセンター・オブ・ジアース、海洋大戦争を展開しつつ、ラブコメ入れたりホラー入れたりできたジェームズ・ワン監督なので、このてんこ盛りを作っても味わいがまとまっているのもうなずけます。
古典的な心霊、怨霊、何か得体のしれないものタイプの第1パートに関しては正直抑え目、控えめではあります。
古くからのライトの仕掛けだった、ポルターガイスト的なもの、ちょっとのジャンプスケア。
ここに至っては人によっては退屈かもしれません。私も正直ここは普通だなと思っていました。
だんだんと楽しさがこみあげてくる
しかし第2幕になったとき、楽しくなってきたのです。
それは第2幕が楽しいのではなくて、その転調が自然な形であり、またこの作品がたどり着ける終着点をふと見失ったからです。
じっくりとした古典的ホラーをめぐる旅だと思っていたのが、自分はジェットコースターに乗せられているんだと気づきます。
展開が決まっているようで、それを越えていく。ホラー映画ですがそんなに怖くない。でもそれでもいいんですよ。楽しければ。
それこそ「アクアマン」におけるカメラそのものが回転するような視点が動くカメラワークとか、家の中を俯瞰してずっと人物を追いかけるなどの変質的な部分も。
まさかの連続殺人事件捜査ものだったり、普通の警察組織が超常的なものに巻き込まれる様については、追いかけっこなど含めて「エンド・オブ・デイズ」とか彷彿とさせました。
最終幕ではついにとんでもない驚異の変貌を遂げて、見たことのない顔をのぞかせてくる。
2幕目の途中でなるほど仕掛けに気づいたときには、恐ろしいよりもテンションが上がりました。ジェームズ・ワンがまたやってくれたと。
こ最終幕が上がると、観客は二分していくかもしれません。この転調を巧い、先が読めなくて楽しいと感じるか、あまりに一貫性がないと感じるかによって楽しんでいけるかが変わる可能性はあると思います。
ラスト30分ほどの異次元体験
ホラー映画にしては頭のおかしいレベルのキレのある動きとスーパーアクションの応酬。
最高にぶっ飛んでます。
この盛大な憂さ晴らしみたいなラスト30分ほどの異次元体験をするためでも、今作を見る価値はあると思いますよ。
正直粗になっている部分は多いですし、荒唐無稽な話でありあまり怖いわけではないです。
R18指定は人体破壊描写に対するものでしょう。
ただ突き抜けていくライド感を楽しませてくれて、素晴らしい映画。
また根底の部分では、血の繋がりや家族といった形を取っている点はジェームズ・ワン監督のテーマに沿っており、彼の作品群の1つにしっかりと連なる気がします。
何度かの協働になるアナベル・ウォーリスのホラー映えも良いですし、今作でマディー・ハッソンを知ったことも大きいですね。
健気で行動力ある妹シドニーは良心的な部分でも今作の主人公の一人として物語をリードしてくれました。
大傑作とかホラー史に残るとか、賞レースに絡む作品でもなく、あとに尾を引くこともありません。
ただ映画館に行ってその2時間位を思う存分に楽しむこと。
来てくれた人に最高のエンタメを、自分のできる限り届けて帰ってもらおうとううジェームズ・ワン監督の気概が感じられる作品でした。
1本で3本分くらいのボリュームがあるのでお得。
ということで感想はこのくらいになります。指定が入ってしまっているため高校生とかに見てもらえないのが悔しいですが、ちょっとでも気になる方は是非。あまり怖くないのでホラーが苦手でも大丈夫。
今回も最後まで読んでいただありがとうございます。
それではまた。
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