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「哀れなるものたち」”Poor Things”(2023)

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「哀れなるものたち」(2023)

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作品概要

  • 監督:ヨルゴス・ランティモス
  • 製作:エド・ギニー、アンドリュー・ロウ、ヨルゴス・ランティモス、エマ・ストーン
  • 製作総指揮:オリー・マッデン、ダニエル・バトセック
  • 原作:アラスター・グレイ
  • 脚本:トニー・マクナマラ
  • 撮影:ロビー・ライアン
  • 美術:ジェームズ・プライス、ショーナ・ヒース
  • 衣装:ホリー・ワディントン
  • 編集:ヨルゴス・モブロプサリディス
  • 音楽:イェルスキン・フェンドリックス
  • 出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、クリストファー・アボット、マーガレット・クアリー 他

「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化。

エマ・ストーンはプロデューサーとしても参加し、純粋無垢で自由奔放な主人公ベラを熱演。

天才外科医ゴッドウィン役には「ライトハウス」などのウィレム・デフォー、弁護士ダンカン役には「ダーク・ウォーターズ」などのマーク・ラファロ。

脚本は「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」のトニー・マクナマラが手がけています。

2023年の第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を獲得し、その後第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞など計11部門にノミネートされました。

ランティモス監督の新作ですし、前評判の高さは聞いていたので結構楽しみにしていた作品。公開週末に早速観に行ってきました。

激情はそこそこの入りでしたね。今作はR18指定になっているので、学生がみにこれなくなってるのは少し残念。

~あらすじ~

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若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって、自身の胎児の脳が移植され、身体が奇跡的に生き返る。

しばしゴッドウィンの研究対象になっていたが、ある時助手のマックスと互いに好意を持ち、マックスから結婚を申し込まれた。

婚約をした一方で彼女は「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出発することになった。

大人の体に生まれ変わりながらも新生児の視点から世界を見つめるベラは、時代の偏見から解放され、平等や自由を学び、驚くべき成長を遂げていくのだった。

感想/レビュー

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ランティモス監督の奇怪で美しい世界の到達点

ここまでにもランティモス監督の世界に触れたことのある方たちであれば、奇怪な世界設定が、さらに極致に達したことを見届けるのがこの作品です。

ダークな寓話のようであった「聖なる鹿殺し」、ロマンスや番うこと、生存と欺瞞に突っ込んだ理不尽世界の「ロブスター」

さらに実話の中にフィクショナルなエッセンスを盛り込みながらも、美しくかつ愛について深く洞察をくれた「女王陛下のお気に入り」

外野何にも似つかないユニークかつ不可思議な世界を描き出す圧倒的なプロダクションデザイン、美術。

それをややクラシカルな視点で映し出す画角と撮影。

彩を得ていく一人の女性の物語

着想的にはフランケンシュタインの怪物と重なる、死者の蘇生。だからなのか、序盤はモノクロで構成されています。

ゴシックな風格もある中で、むしろゴッドの外科手術や遺体の解体においてモノクロがややグロさを抑えてくれているかもしれません。

ただやはりここは、ベラにとっての世界の色を示しているのかと思います。

屋敷の中しか知らない、狭い世界では憂鬱さなどがモノクロに投影されているように感じます。

それが中盤に差し掛かりベラがダンカンとともに(主に性の)大冒険に出ることで一気に色が追加されまた美術的な力が炸裂します。

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クラシカルなセット撮影の力

完全なSF世界ではないのですが、確実に昔の雰囲気でありながらパラレルな突飛さを持つ造形。

リスボンの街並みの立体的な造形に、豪華客船内、戻ってきたロンドン。

巨大なセットを作りとそれによって人工感の入り混じった雰囲気による触感を生み出します。

美術は歪んでいるようなしかしそれでこそ完璧であるような圧倒的なものです。

美しいような恐ろしいような。

セットでの撮影と完璧なライティング操作により、ここもまたクラシックな映画における製作の空気があり、不可思議な世界が広がっています。

様々なレンズを切り替える撮影

カメラに関してもレンズが切り替わったりしておもしろかったです。

ペッツバールレンズで対象の周囲を円を描くようなぼかしとゆがみを入れ込むのは、特にベラが世界の理解に苦しむところ。

のぞき穴のようなレンズはこの不思議な世界をのぞき込んでいる感覚のためでしょうか。

超広角のカメラでクリアにすべてを見せつけてくるところは、美術効果を圧倒的に高めているようで非常に美しかったです。

撮影監督はロビー・ライアン。

彼はケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」「家族を想うとき」、そしてランティモス監督では「女王陛下のお気に入り」、またマイク・ミルズ監督の「カモン、カモン」など結構幅広いタイプの画づくりをしてきた方。

今回最高にいい仕事してます。

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ベラの精神的成長と孤高さを体現する衣装

その美術の中で変容する衣装も見どころです。

ベラは特にアッパーに重心を持っていくような衣装が多く、エマ・ストーンの細い足もあって足元のおぼつかない幼さと、脆さが引き立っています。

そして衣装は無垢な白。ダンカンに連れられて冒険をする際、そして初めてゴッド以外と食事するレストランのシーンでは、ブライトな黄色を纏います。

ついに彼女に色が付いてきたということです。(性的な意味でも)

しかし現実を見て叩きのめされることにより、一時的にその心はまた無垢と壊れた純真になりますね。

また白いドレスを着ますが、幼児性の象徴であった裸足や足の露出はなくなります。

そして哲学と本に出会うことから決定的にベラというキャラクターは変容し、その後の娼館でのシーンでは本当に様々な衣装を着こなします(もしくは裸という衣装も)。

ヴィクトリア朝の服装をベースに置きながら、いつもどこか外れていて従わないベラの衣装。

纏うか纏わないか含めてベラはベラであるという独立した精神を示した、衣装担当のホリー・ワディントンの仕事に脱帽です。

心躍る、独立した音楽

そしてまた音楽です。

ジャースキン・フェンドリックスによるスコアはこれもまた奇妙で、本当に子どもが喜びや冒険心、好奇心のままに楽器を叩いているような感覚。

ふわふわとしていてベラの無垢さも感じながら、緩急のついた心の躍動も入っています。なんていうか音楽もまたどこでも聞いたことがなくて、何かに属していない感じがするんです。

型にはまらないベラという女性らしいですね。サントラ聴きこみましょう。

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ベラは中心におかれ、周囲には複数の男性が存在します。そのどれもにいろいろな男性の象徴が込められていました。

この時代設定上、女性というのは完全に男性の下に置かれています。

ベラを囲み翻弄されていく男たち

ゴッドは一種の実験として見ているために、所有しコントロールしていました。女性を家に閉じ込めていたわけです。

そして初めに出会うマックスは、強引なことは言わないにしてもある種ベラの知能につけ込んで性的な搾取をしようともしています。

露骨なのはダンカンです。彼はまさしく女性をただの性消費の対象としてしか見ておらず、どんどんとベラが自立していくと、”女性には知識はいらない。熱烈ジャンプしろ!”とばかりに本を取り上げてしまう。

マーク・ラファロが最初は捕食者としていいようにベラを利用しつつ、どんどん振り回されていき滑稽な男性性の塊になっていくのがおもしろい。

そして最悪の男性性の化身であるのが、終盤に登場するクリストファー・アボット演じるアルフィーです。

精神的にも身体的にも支配的なアルフィーに対し、どちらにおいても、人生の自由を主張するベラ。

あらゆる男性を入れ込んだ中で、絶対に揺れ動かないベラ。

彼女は変容していきますが、同時に周囲の男性たちも変わっていく。

ゴッドは父の残虐性を愛と勘違いしていますが、自らもベラを愛することで彼女に冒険の自由を与えていく。

マックスは自分の搾取的な意図を反省し、ダンカンは逆にベラに依存する。

そしてアルフィーも”大きく変身”しますね。

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人生も悦びも我がものとする女性

各俳優陣が素晴らしいですが、やはりエマ・ストーンの映画です。

幼児性も知性を得た女性としても、奇抜で予想不可能、それでいて純真で眩しいベラを自分のものとして、観客を魅了し続けます。

映画を見ていきながら、観客もベラを愛していきます。

すべてを自分のものとしていき、好きなときに好きなようにセックスして、食事の場では言われた3つの言葉なんかじゃくて自由な話題で自由なことを言うのです。

フェミニズムの話を、ここまで自由で自分の喜びに素直な女性で描き切っているから気持ちがいい。

人生は私のものだし、クリトリスも私のもの。

知性を、性欲を、冒険を、人生の歓びを。すべて自分のモノとしてなんでも自分の好きなように楽しむベラが自分の世界を作り出す。

奇怪な合成生物の集まる死体の研究所を、彼女は多様性に富んだ楽園にしたのです。

ゴッドは純粋な愛を自分の中に生み、マックスも真なる愛情をもってベラを想う。砂糖と暴力の世界の奥底に、ちゃんと愛が横たわってることをベラは教えてくれた。

衣装、美術、音楽、撮影、演技、人物造形、そしてメッセージ。すべてが完璧なのに、変な優等生さがなくてちゃんとランティモス監督の奇抜なスタイルも抜けたユーモアも入ってる。

全編セックスたっぷりで万人に見やすいわけじゃないくらい尖ってますが、同時になぜかすべての人が楽しめると思える。

新年早々にこれはすごい作品を観ました。思うほどに、この作品が、ベラ・バクスターが好きになります。

非常におすすめの作品。早いですが24年ベスト入りも確実。アカデミー賞での受賞にも期待が高まりました。

今回はちょっと長めでしたが、ここまでです。

それではまた。

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