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「西部戦線異状なし」”All Quiet on the Western Front” aka “Im Westen nichts Neues”(2022)

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「西部戦線異状なし」(2022)

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作品概要

  • 監督:エドワード・バーガー
  • 脚本:エドワード・バーガー、
  • 原作:エーリヒ・マリア・レマルク、レスリー・パターソン、イアン・ストーケル
  • 製作:エドワード・バーガー、ダニエル・マーク・ドレフュス、マルテ・グルナート
  • 音楽:フォルカー・ベルテルマン
  • 撮影:ジェームズ・フレンド
  • 編集:スヴェン・ブーデルマン
  • 出演:フェリックス・カマラー、アーロン・ヒルマー、アルブレヒト・シュッフ、ダニエル・ブリュール 他

1929年に出版された、エーリヒ・マリア・レマルクの長編戦争小説「西部戦線異状なし」をNETFLIX製作で映画化した作品。

同じ原作をもとに映画化し、アカデミー賞獲得をしている1930年の「西部戦線異状なし」がアメリカ映画であったのに対し、今作はドイツ映画となっています。

原作がドイツの小説なので、今作の方がより原作に寄った映画化になっている感じですね。

監督は「ぼくらの家路」などのエドワード・バーガー。

主演はフェリックス・カマラー。そのほか兵士役にアーロン・ヒルマー、アルブレヒト・シュッフが出演。

また、ドイツの降伏条件を結ぶための特派員をダニエル・ブリュールが演じています。

ドイツのアカデミー賞正式出品作品になり、最近はゴールデングローブ賞にも外国語映画賞にノミネート。

注目作品であったものの、ネトフリ配信での公開になっており、ちょっと見るのが遅れてしまいました。

「西部戦線異状なし」NETFLIX配信ページはこちら

~あらすじ~

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1918年。第一次世界大戦のなかドイツ軍は西部戦線の長い膠着状態に苦しんでいた。

ほぼ動かない戦線に、攻撃の度に数千の兵士たちが死んでいく。

18歳のパウルは友人たちの志願に乗る形で徴兵検査を受けて兵卒として戦場に赴くことになった。

出発前の上官の演説に士気は盛り上がり、フランスのパリ目指しての侵攻で現地の若い娘たちと仲良くなることを想像するなど、彼らは意気揚々としていた。

しかし前線に向かう途中から、凄惨な死体や大けがをした兵士と看護兵たちを見てパウルたちの顔が曇る。

そして到着した前線では、わずかなスキを突いた狙撃兵の攻撃や砲撃におびえ、あまりに酷い地獄が待っていた。

感想/レビュー

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実はアメリカ映画の方の「西部戦線異状なし」は観たことがないのですが、今作はそのリメイクではなくて原作の再度の映画かということになっているので、あまりそこは比較しなくてもよいのでは?と思っています。

生々しくむき出しの戦争

そして原作が戦争に参加した当事者たちから見てのありのまま戦争であるならば、この映画はまさに戦争をむき出しでみせつける強烈な作品になっています。

技術面の向上もあってか、まず戦場を捉える臨場感はすさまじいです。

これまでにも同じ題材としてワンカット風での展開を見せたサム・メンデス監督の「1917 命をかけた伝令」があったり、戦場を惨たらしさ全開で全く美化もしないメル・ギブソン監督の「ハクソー・リッジ」がありました。

今作はそうした作品を思い起こすと同時に、”すべてが悪くなっていくだけの中で全くの無意味に命が散っていく虚しさ”を強く感じました。

根底から終わっている

パウルが出撃する前のアバンタイトル?が秀逸だと思います。

若い兵士が塹壕から出て突撃し、仲間が次々と死んでいく。

戦争は始めるのではなく始まっていて、こちらとしても整理できないままに戦場に放り込まれる。

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カットが割られるまでは生きていたその青年は、戦場の場面が終わった時の死体の山に顔を出す。

あまりにひどいのに、ここに説明はない。

死のサイクルをスマートに語る導入

戦死した青年の軍服は、すさまじい流れ作業で新たな兵士の軍服に生まれ変わる。

血に染まったシャツを洗い服を縫い直していく様は、それだけでも戦争というもののひどさを物語ります。

あまりに機械的ですからね。

そして効率化されている様は、それだけこの戦死と兵士の補充が当たり前に繰り返していることを語っています。

膠着化した西部前線と若い青年たちの死が、スマートに語られていく序盤に圧倒されました。

ネームタグをはがして笑顔でパウルを見送る検査官。聞こえの良い演説で”国のために死にに行け”という高官。

遠足に行くかのようなパウルたちの顔が曇り、目の輝きは失せていく。恐怖におびえて塹壕で震える様子を見ていると、「彼らは生きていた」を思い出しました。

この死のサイクルを序盤に置くことから、パウルがいつ死んでもおかしくないという設定が敷かれます。主人公であることなど関係ないのです。

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突き進む暗黒音楽

この邁進し止まらない死の連鎖に関して、今作の楽曲担当のフォルカー・ベルテルマンによる音楽がとてもいい効果をもたらしています。

3つの音の繰り返しで非常に低音。

どす黒く不穏であり揺れ動かないメロディがただ突き進む状況を示します。

もともとこの作品は音楽っていうのが少ないのですが、ここぞというところで、”ここからさらに状況は悪化します!”と宣言するように流れてきてキツイ。

戦争が強いるもの

パウルは戦場で友人たちを失い、敵兵を殺し壊れていく。

それぞれに一瞬でも先に知っていれば、殺さずに、死なずに済んだかも?が散っており、あまりにやるせない。

敵に対しても味方に対してもむなしさが募っていき、親しむほどに死が辛い。

個人的には戦争下で被害を受けた、地元の農家の描写もあったのは良かったです。

少年の目つきが憎しみに満ちていき、そして彼にさせてはいけない行為に及ばせる。

戦争を雄弁に、そして美しく語るのは、戦場に行ったことのない人間だけ。

将軍の胸糞悪さにヘドが出ますが、あのラスト15分。即時降伏なら・・・

エンタメとしての切り口で語るのも変な気がするほどに、ただ戦争というのはもういうものであると、現地に赴き体験する視点で語る力強い作品。

これこそまさに劇場の大きなスクリーンのために作られた作品と言えるので、今回NETFLIXの配信鑑賞だったのがとても悔しい。

しかし一見の価値はあると思いますので、加入している方は是非。

というところで今回の感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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