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「アラビアのロレンス」”Lawrence of Arabia”(1962)

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映画レビュー
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「アラビアのロレンス」(1962)

  • 監督:デヴィッド・リーン
  • 脚本:ロバート・ボルト、マイケル・ウィルソン
  • 製作:サム・スピーゲル
  • 音楽:モーリス・ジャール
  • 撮影:フレディ・ヤング、ニコラス・ローグ
  • 編集:アン・V・コーツ
  • 出演:ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレック・ギネス 他

「戦場に架ける橋」(1957)でもアカデミーに輝いたリーン監督作。

実在のイギリス軍人、T・E・ロレンスの伝記映画であり、アカデミー賞は作品、監督含めた7部門獲得。オトゥールも十分主演男優にふさわしかったですが、「アラバマ物語」のペックに取られましたね。

ペックはもう最後と言われていたので優先されたのでしょうか。

とにかく凄まじいスケールで描き出される砂漠、ラクダの猛進に列車。今では実現できない規模がスクリーンに映るだけで感動です。

そういえばS・スピルバーグはこれを観て監督をめざし、映画を撮る前に必ず見返すとか。

オートバイでスピードを出す男。正面から来た自転車を避けようとし、事故を起こす。

そして事故死した男の葬儀が行われ、銅像も立つのだが、参列した人々の口から出るのは様々だった。「偉大な指導者。」「うぬぼれた自己顕示欲の塊。」「功績は良いらしいが良く知らない。」・・・

その男はイギリス軍人ロレンス。第一次大戦時に、オスマン帝国から独立しようとするファイサルのイギリス援護協定を工作するため、アラビアへと送り出された男だった。

何がすごいかは見ればわかる。そんな映画。

マッチの火から輝く夕陽への切り替え、長回しで見せる広大な地平線からやってくる男の影。

画面を埋め尽くすラクダ騎手が町を飲み込む様。真っ白な砂漠に真っ青な空、その両橋から駆け寄る影。列車の爆破脱線からの奇襲。

これでもかと映る壮大なシーンの数々は、まさにこれぞ映画だと言わんばかりですね。幻想的ともいえる自然風景とちっぽけな人間たちはある意味映画の趣旨に合っていますし。

舞台、人すべて本当に用意して撮るこのスケールはやはりいかにCGが進化しようと超えられない説得力があります。

有名なシーンなどだけ見ても、美しさは凄まじいですよ。

テーマ曲も大好きです。映画音楽の傑作のひとつでしょう。

舞台はアラブでの戦争模様です。他種族と帝国、それにイギリスの思惑。

そういった歴史の波の中で、ロレンスは英雄的な活躍とその突飛な性格が魅力となり、偶像となりますね。

これは彼を、自分を理解しないイギリスから切り離し、兄弟と呼べる存在と同化させ、新たなアイデンティティを吹き込むんです。

だからこそ、与えられた白いアラビア衣装で喜び舞い、ナイフに映る自分をナルシスト張りに眺める。

不可能を可能に。自身の中でのアイドル化が進むロレンスの姿は、まさに現在でも海外にでて少しでも認められて調子こく感じでしょう。「ラスト・キング・オブ・スコットランド」の主人公もそんな感じだったかな。

しかし砂漠に立つロレンスが豆粒のように、歴史と政治の中でも彼は小さな欠片だった。

家族と感じたアラビアは彼の男性性を壊し、狂わせる。殺戮者にまで変え、英雄の美しい白い衣も、その銀に輝く短刀も血に染まります。彼が蔑んだ野蛮な人種に、彼がなる。

汚い彼をはたいた男に、軍服を纏えば握手を求められる。アイデンティティが崩れ去り、ロレンスは何物でもないと悟ってしまう。

ファイサル、アラビアの親友、自分を認めた首長、そしてイギリス軍。邪魔になりすべてに捨てられた彼は悲痛な破局で去っていく、そして時代がそうしたようにバイクに追い抜かれてしまう。

彼には乗りこなせず、死に至らしめてしまうバイク。

結局ロレンスは何者だったのでしょうか。冒頭の人々の言葉がよぎります。すべての人間は偉大で無価値なのかもしれません。

ほとんど4時間くらいあるんですけどね、何度も観れるんです。

リマスター上映も4Kブルーレイも観て、美しく壮大な画面と音楽そして残酷な終局。

映画らしい映画ですし重厚なドラマ。私個人としては、絶対に観るべき映画と思う大切な1本です。

というわけで好き過ぎて書きながらまたブルーレイを再生し始める映画の紹介でした。

うーん、良い。ではまた。

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