「ガルヴェストン」(2018)
- 監督:メラニー・ロラン
- 脚本:ジム・ハメット
- 原作:ニック・ピゾラット「逃亡のガルヴェストン」
- 製作:タイラー・デヴィッドソン
- 製作総指揮:パトリック・デイリー、ジーン・ドゥーマニアン、ケヴィン・フラニガン、デクスター・ブラフ、ショーン・トーマス・オブライエン
- 音楽:マルク・シュアラン
- 撮影:ダグマー・ウィーヴァー=マドセン
- 編集:ゲリック・カタラ
- 出演:ベン・フォスター、エル・ファニング、リリ・ラインハート 他
余命わずかな殺し屋が娼婦に身を落とした少女を連れての逃避行。
「イングロリアス・バスターズ」などの女優メラニー・ロランが初めて監督として制作したスリラー映画。ニック・ピゾラットの小説「逃亡のガルヴェストン」を原作としています。
出演するのは「足跡はかき消して」のベン・フォスター、そして「ネオン・デーモン」などのエル・ファニング。
メラニー・ロランが監督デビューということでニュースを聞いたり、エル・ファニングが娼婦の役ということで話題になったり規模のわりに露出は多かったかと思います。
しかし公開規模が日本ではかなり小さくて、私はとりあえず渋谷で鑑賞。地方によっては観にくいですよね。そういった理由からなのか、注目作だからか、劇場はかなり混みあっていました。
地元の組織で殺し屋をするロイは、あるとき病院の検査結果から自身の死を悟る。
そんな彼にボスは脅しの仕事を任せるが、それロイを消すための罠であった。ロイは咄嗟の判断で待ち構えていた刺客を返り討ちにし、現場で拘束されていた少女を成り行きで助け出す。
ロッキーと名乗る少女はロイを頼り、必要なものを取りに行くと頼み自宅へと行くのだが、彼女は幼い女の子を連れてきた。
妹だというその子を含め、3人はロイの想い出の地であるガルベストンへと向かう。
余命わずかの殺し屋と、娼婦に身を落とした少女の逃避行。そして男は少女だけをなんとかこの裏世界から救い出して、人生を与えようとする。
始まってすぐにこのプロットが組まれた時には、なんとまあ使い古された話をやるのだろうと思ったのですが、ロラン監督が最後に持って行った先は意外なところであり、この作品も典型的な形にはハマっていないと思います。
その点に関しては脚色なのでしょうかね。今回の映画化に際して、「トゥルー・ディテクティブ」などを手掛けるニック・ピゾラットは自身のクレジットを出さずに架空の人物名で脚本をクレジットしています。
ロラン監督の意図が原作と結構違うのかな。
いずれにしても、ありきたりなロードムービーだとか、男が命懸けで少女を救う話とか、見飽きたものではなく楽しめました。
典型的な話を避ける中に、技法としてもワンカットのロングショットだったり、ライティングを駆使して生み出す色調や自然の色など美しい画面もありますが、個人的にはそれらがこの作品にユニークさを与えるまで行ってないかなと思います。
むしろ、今作は主演の二人に支えられています。
ベン・フォスターとエル・ファニング。どちらも非常にリアルな造形となっているキャラクターを演じる中で、必ずしもヒーローでもヒロインでもない切なさを持っています。
ベン・フォスターは無口なんですけど、そこに彼自身が決めた使命を抱えているある種の頑固さみたいなものがあって良いですね。
エル・ファニングは演じる役柄をここにきてさらに広げようとしています。悲惨な目に合った過去を打ち明ける相手すらいなかったロッキーですが、ロイのまえで話す際の吐きそうな感じの映画がすごかった。
行き着く先が予想できない旅であり作品であり。やり直しのきかない人生を歩む二人。男は勘違いのまま突き進み、余計なことをしてしまったのか。ただ昔の彼女との会話のように、昔を変えることはできない。
できるのは、その過去をしっかり伝えることです。
多くの映画では語られる側となりがちなこの男性キャラクターを、短く過酷な生を強く生きた少女の生を語る側に配する作品。
作品自体にユニークさがあるかというと微妙ですが、プロットをひねったところは結構好きな作品でした。
劇場公開規模がちいさいのですが、チャンスのある方は観てみてください。感想は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた。
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