「THE BATMAN-ザ・バットマン-」”The Batman”(2022)

「THE BATMAN-ザ・バットマン-」(2022)

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作品概要

  • 監督:マット・リーヴス
  • 脚本:マット・リーヴス、ピーター・クレイグ
  • 原作:DCコミックス「バットマン」
  • 製作:マット・リーヴス
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 撮影:グリーグ・フレイザー
  • 編集:ウィリアム・ホイ
  • 出演:ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、ジェフリー・ライト、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ピーター・サースガード、アンディ・サーキス、ジョン・タトゥーロ 他

「猿の惑星:新世紀」などのマット・リーヴス監督が、DCコミックのヒーロー:バットマンをリブートし、再び新しいチャプターとしてスクリーンに登場させた作品。

これまでDCがベン・アフレックを起用してきたバットマンとはまた別の、若き日のブルース・ウェインを描き、コミックにての宿敵であり天才犯罪者リドラーとの戦いが繰り広げられます。

今回闇の騎士、ケープのクルセイダーを演じるのは、ノーラン監督の「TENET テネット」サフディ兄弟の「グッド・タイム」など大作からアートハウス映画まで幅広く高い評価を得ているロバート・パティンソン。

また「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などのゾーイ・クラヴィッツがキャットウーマン、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」のジェフリー・ライトがゴードン警部補を演じ、その他コリン・ファレルが犯罪王ペンギン、そしてリドラーをポール・ダノが演じています。

バットマンの実写映画としては、ティム・バートン版の1989年、そして2005年からのクリストファー・ノーランによるダーク・ナイトシリーズ、2016年にベン・アフレックがスーパーマンと共演を果たしたものとあります。

その中で今回の特徴はそのブルースの若さと、世界一の名探偵というあだ名に寄り添ったミステリー要素を押したつくりになるでしょう。

DCはユニバースから切り離し完全単独作として「ジョーカー」を成功させ、この作品もこれまでの展開から切り離されたものになります。

そのため前作という概念もなく、昨今は映画一つ見るのに何本も関連作品を観なくてはいけないヒーロー映画界ではかなりアクセスの簡単な作品になっています。

2021年に公開の予定であったものの、新型コロナの拡大流行から公開は先延ばしにされ、2022年3月の公開になりました。

今回はにて鑑賞。やはり昨今のコミック映画の人気もありかなり混みあっていました。

「THE BATMAN-ザ・バットマン-」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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ブルース・ウェインが蝙蝠のコスチュームに身を包み、バットマンとして犯罪者に制裁を加える生活を始めて2年。

彼の”復讐者”としての活動も、そしてゴッサム市の街の浄化や再建計画も、この腐りきった街には全く効果はなく、犯罪率は上昇し貧富の差は激しくなるばかりであった。

そんな中、市長選候補が惨殺される事件が発生。

現場には「バットマンへ」と記されたなぞなぞが残されており、この街の嘘を暴けというようなメッセージが残されていた。

バットマンを狂人だと非難する警察の中、ゴードン警部補だけは彼の知識や志を信頼し、二人でこの犯人”リドラー”捜しを行うことに。

そこにはゴッサムの犯罪王ファルコーネや麻薬を売りさばくペンギンなどが絡み合い、父トーマス・ウェインから始まるゴッサムの再生計画の裏の顔が隠されている。

ついにリドラーはバットマンを次の標的にし、SNSを通じてゴッサム市を巻き込む大事件に発展していく。

感想/レビュー

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名探偵としてのバットマン

バットマン映画再び。

実写映画のバットマンの歴史はかなり長いものになってきましたね。

66年の劇場版でのアダム・ウェストが入るならば、そのあとにマイケル・キートンにヴァル・キルマー、ジョージ・クルーニー、クリスチャン・ベールにベン・アフレック。

その流れの中で今回出てきたのが、ロバート・パティンソンによる若く粗削りなバットマンでした。

その不安定さ、不健康さ、復讐鬼としての危険さが際立ち、物々しい雰囲気をこれまでのバットマン以上に醸し出す。

さらに予告編からもわかるように、そして今作のメインヴィランがリドラーであることからも察することができますが、このパティンソンバッツは探偵です。

これまであまりフォーカスされてきませんでしたが、コミックのジャスティス・リーグではパワーというよりもその頭脳や観察力、推理力がバットマンの強みであり、さすが世界一の探偵と呼ばれるだけはあるのです。

その探偵要素を押し出して、マット・リーヴス監督は歴代と差別化されたミステリースリラーとして今作を構築。

特に序盤における構成は非常にこの若さ、ミステリーの2要素が光っていて素晴らしい出来栄えでした。

不健康すぎるブルース

今まではなんとなくでも表面の生活を保っていて、社交パーティに出たりダメ御曹司を演じたりとしていたブルース・ウェインパート。

しかし今作は夜行性生物として毎日徹夜で犯罪者を殴っている今作のブルースのまあ不健康そうなこと。

モノトーンにも見える色彩による撮影も相まって、パティンソンは顔面蒼白かつサングラスがないとロクに外を歩けない。

「トワイライト」で吸血鬼だったからの色白感が生きていますし、常にはらりと垂れ下がる前髪が妙にエロい。

バランスなど考えないなりふり構わない感じ、今までのバットマンにない不安定さ自体にハラハラします。

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さながら「セブン」のように思える序盤の捜査。

不可思議な暗号とゾディアックのように警察とバットマンを挑発するリドラー。

ゴードンとバットマンの関係性がここまでちゃんと描かれているのも、実写では初めてで新鮮かつやっとこれが見れたという嬉しさもあります。

正直この第1幕目のテイストはすごく好きでした。

敵を倒すというバトルではなくて、犯人に迫るために様々なガジェットを使っていたり。

これまでのバットマン映画とは少なくとも同じ道をたどりませんし、全体に置かれた聖書的テーマについても見せつけることはなく。

推理には冷静な割にアクションでは荒々しい若きバットマンとの冒険も楽しめます。

所作で語るパティンソン

役者についてもロバート・パティンソンはナイスキャストだったと思います。

先に書いたような吸血鬼的な夜行性に関しても根暗をマスターしていましたし、でもやはりどこかに少年っぽさを持っています。

全く同じ構図で市長候補の息子を見つめるシーンがあります。

それまでの犯罪者への目線と違う。

口元を変えず佇まいも変えず、ただ目だけで優しさをも感じさせてくれます。

やや難点も

しかし難点に思えてしまったのは中盤においてのカーアクションシークエンス。

バットモービルの何かの生き物のようなブースターの音などのデザインは良かったし、チェイスそのものの画は良いのですが、地理的な構成が全く理解できず、アクションのゴールが不明確でした。

また3時間の長尺についてはやや削れそうなシーンはあるため、変に長いなと退屈することはないにしても、もう少しタイトにはできたのではないかと思います。

アンディ・サーキスの使い方に関してもちょっと微妙です。

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といっても全体の難点は上記くらいに感じます。

撮影における絵画的な構図は美しいですし、テクノロジーが進化しながらも中世のような建物や内装のある舞台設計は見事。

また間違いでなければですが、レンズが特徴的でした。フォーカスの合う対象以外の画面端が、光の屈折や涙で滲んだ目でものを見るようにぼやけています。

独自の世界、ゴッサムシティを作り上げています。

常に降りしきる雨。

人々とブルースの頭の中のように淀んだ天気がありますね。

こんなにも雨が降っていて塞ぎ込んだ大都市ですとやはり「ブレードランナー」を思い起こします。

鏡像である3人の孤児たち

セリーナとの関係や自身の鏡のようなリドラーに迫っていくに連れて、バットマンとしてあるべき姿を知ると、雨はやみ次第に美しい陽の光も覗くんですよね。

今作は闇というものを非常に効果的に使っておりますが、それゆえに光も強調されています。

リドラーもセリーナも、ブルースにとってはなり得た可能性であり分身です。

リドラーは境遇から全てを破壊し尽くす道を選び、セリーナは全てから逃げようとした。

どちらもブルースのオルタナティブです。

内向して自身の考えに凝り固まり自分の計画を進めているという点で、リドラーとバットマンは同一と言っていい。

復讐を胸にするセリーナ含めて似た者同士であるなかで、市長候補の残された息子に自らを重ねたブルースは、自身のあり方を見つめ直すことになるのです。

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上から下へ、人々のために降り立つ

深い闇に潜む魔物であったバットマン。確かにこの犯罪者にとっての恐怖というのはこれまでにもあった要素です。

しかしマット・リーヴス監督が再びバットマンを描きなおしたのは、光をもたらす者としてバットマンを提示するためです。

今作は貧富の差、上下というものが強く訴えられている。その中でブルース・ウェインとして上にいながらも、バットマンは下へと降りるんですよね。

下界とも呼べる市民の側に、上流層から降りていき、成されない正義をなし人々を救う。雲の上にいる超人ではないのです。

ノアの世界の終わりのメタファーに見える水害の中で、希望の光を持つ英雄が現れる。

俯瞰ショットでの赤き光とそれに導かれる人々の美しい構図。

英雄とは何か。

この三幕目がとにかく今作を素晴らしいものにしている。

ただ超人が殴り合うのではない、ヒーローの根底的な役割を真正面から見せているのです。

人助けするのって素直に最高なんですよ。

「スーパーマン」が好きな私としては、こうして市民の中で光を、希望をくれるバットマンがスクリーンに現れたことが非常に嬉しい。

今作はバットマンになる話ではないですが、”復讐”が”英雄”へと姿を変える、正真正銘のヒーロー映画であります。

やっぱりうまいポール・ダノ。ずっと彼だと信じられないくらい溶け込むコリン・ファースなども見どころ。

不完全さも少し感じはしますけど、私が求める人を助けるバットマンの誕生が清々しくてとてもいい作品でした。

バリー・コーガンの件含めて今後も続くのでしょうかね。

だとすると、今作でちゃんとゴッサムのヒーローになって、市民に愛され警察に相談されるバットマンシリーズになってくれるとすごく楽しみです。

というところで今回の感想は以上。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

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