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「ブリタニー・ランズ・ア・マラソン」”Brittany Runs a Marathon”(2019)

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brittany-runs-a-marathon-2019-movie 映画レビュー
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「ブリタニー・ランズ・ア・マラソン」(2019)

  • 監督:ポール・ダウンズ・コレイゾ
  • 脚本:ポール・ダウンズ・コレイゾ
  • 製作:マシュー・プルーフ、トビー・マグワイア、マーゴット・ハンド
  • 製作総指揮:ジリアン・ベル、リチャード・ウェインバーグ、ポール・ダウンズ・コレイゾ
  • 音楽: ダンカン・サム
  • 撮影:シェイマス・ティアニー
  • 編集:ケイシー・ブルックス
  • 出演:ジリアン・ベル、ミカエラ・ワトキンス、リル・レル・ハウリー、ウトカルシュ・アンブドゥカル 他

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ポール・ダウンズ・コレイゾ監督デビュー作。監督のルームメイトの実話をもとにした、マンハッタンで暮らす女性がニューヨークシティマラソンを走ることを目指すコメディドラマ。

主人公を演じるのはコメディエンヌとして活躍し「インヒアレント・ヴァイス」などに出演のジリアン・ベル。

そのほかミカエラ・ワトキンス、リル・レル・ハウリーが出演、また「ブラインドスポッティング」での語りが面白かったことで印象的なウトカルシュ・アンブドゥカルが出ています。

作品は海外で公開しているのは知っていましたが、そのあと日本公開がなかったようです。アマゾンプライムビデオでの配信にてリリースされました。

少し置いてしまったのですがやっとのことで鑑賞です。

実は置いておいた理由としては、こうしたNYC舞台の自己改善ラブコメにおけるテンプレ的なイメージが勝手にあったことです。今回は本当にいい意味で、裏切られました。

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マンハッタンに暮らすブリタニーはジョークが好きで気さくな女性。彼女はルームメイトと一緒に毎晩クラブやバーで飲み明かしては朝帰りの繰り返しをしている。

ある時薬の処方をしてもらおうとン病院に行くと、診察した医師から彼女が太りすぎていて、健康状態が非常に悪いことを指摘される。

このまま生活習慣の改善をしないと、慢性疾患は避けられず、寿命を縮めることになると警告を受けてしまうのだった。

ブリタニーは仕方なく少し運動を始めようとするも、ジム通いはお金がかかる。そこで自分でランニングすることを決めるのだった。

同じアパートでランニングの会に参加しているキャサリンの勧めから、最終的な目標はニューヨークシティマラソンへの出場と決め、ブリタニーは一歩踏み出し始める。

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コレイゾ監督はこれまでに短編を撮っていたわけでもなく、TV映画一つの脚本と製作、そしてシリーズ「MACGYVER/マクガイバー」の脚本製作という本当に少ないキャリアから長編映画を監督。

そこで今作は彼自身のはっきりとした手腕を見せつける見事なデビューになっていると思います。ほぼゼロスタートでこれは素晴らしいですね。

先にも書いたのですが、あらすじからいうと舞台のメロドラマというか、中身がスカスカのちょっと危ないタイプのコメディに思えます。

肥満女性がランニングダイエットをはじめ、友人ができて恋人ができて、大会に出てハッピーエンド・・・

とまあ別にプロットがそうではないとは言えませんが、しかしここでコレイゾ監督はもっともっと嘘偽りのない生々しい形で、誰しもが抱える他人を下にして安心を得たいという身勝手さとか、そこのさらに根底に横たわり続ける、自分を愛することの難しさを描いています。

正直言って、かなりハード。

ブリタニーの造形は醜い部分も露わにしているので、人によっては結構嫌悪感を抱いてしまうかもしれませんが、自分にはしっかりとそうした部分も描き、綺麗ごとのままで過ごさないところが逆に好印象でした。

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主人公ブリタニーを演じたジリアン・ベルの力が大きいところは確実。彼女が作り出す笑いの、ちょっと行きすぎなところが最高です。

酔っぱらっているときの下品なものやブラックなジョークを、シラフのしかも場違いなところで炸裂させてくる感じ。でも徹底して最低な人ではないのです。

悪夢のような義理の弟(「ゲット・アウト」のTSA、リル・レル・ハウリーはここでも最高です)の誕生日パーティは極めつけシーンで、あそこでブリタニーは完全にやらかしてしまいます。

しかしそれも、自分を愛せていないからこその、自分を見ているような人への攻撃として理解してしまい非難はできません。

本当に運がないというか、攻め時引き時、流れをつかむのがうまくいかない。それが自分だけに起きているように思えます。

初めてランニングするシーンでの切り取りがとてもいいですよね。いざ走り出す瞬間のなの戸惑いと困惑。走りだす。それってタイミングつかむの難しい。走り出してしまえばある程度なじむのに。

そしてブリタニーは逆行していく。彼女はとにかく対向車線になってしまい、いろいろな人にぶつかりそうになりますね。彼女には世界そのものが自分にぶつかってきているように感じてしまうんです。

しかも、せっかく頑張ったのに、その頑張りのせいでマラソン出場ができない。

Brittany Runs a Marathon

マラソンというのは基本的にスポーツの中でも自分自身との戦いです。

相手が明確にいるテニスやサッカーなどとは異なり、順位こそ決まりますが、自分自身と向き合う競技。

周囲を見回し、自分より前にいる人に対し悔しく思うことも、また後ろにいて疲れている人を見てどこか安堵することもあるでしょう。

しかし、結局は自分自身と向き合うのです。

そして、ストリートとは違って真っ向から人とぶつかることはありません。みんなで同じ方向に走るのですから。

どうしても自分のステータスや現在位置を、他人との比較や距離で測ってしまうことはありますよね。誰より成績がいいとか、誰と付き合っているとか結婚しているとかしていないとか。

そして自分と同類である(と思い込む)人間が自分と違う位置、ステータスにある時それを妬ましく、時に間違っていると攻撃してしまう。同族嫌悪とはまた違います。

実話ベースですが、マラソンという構造をうまく人生にあてはめ、それにハードにぶつかっていく。コメディですごい笑えるのですが、すごく痛くて感情的な作品です。

上っ面だけの自己啓発、ルッキズムに振るようなロマンスでもない確かなドラマが見れてすごくおすすめの一本でした。

アマゾンオリジナルで最近はいろいろといい作品に出会えています。皆さんも時間ありましたら是非。

今回はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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